ご遠慮します!
何か引っ掛かる部分はあったが、ネメアはステータスカードをズボンのポケットにしまい、地面に落ちているケネイアから貸してもらった剣の柄を持ち上げた。切っ先が二メートルもあるので、ずっしりと重い。
柄を叩いて元の大きさに戻すと、ネメアはケネイアにそれを返した。
「ケネイアさん、これを。凄く役にたちました。ありがとうございます」
「どういたしまして」
剣を受け取り、ケネイアはアイテムボックスに収納した。それからネメアとクレタに話しかけた。
「君たちは、冒険者ギルドで依頼を受けて、ゴーレム討伐に来たんだよね。ゴーレムの心臓を回収しないと、依頼を達成したと認めてもらえないんじゃないのかい?」
「えぇ、そうしようと思っていたところよ。ネメアちゃん、探しましょう」
クレタはネメアの方を向いた。自分の知らない単語が出てきたので、彼は彼女に問いかけた。
「ゴーレムの心臓って?」
「ゴーレムの動力になっている、魔力の込められた宝石のことよ。土の中に埋もれているはずだわ」
「へー」
説明を受け、ネメアはさっそく、土の山を両手で掻き分け始めた。クレタとケネイアも探し始めた。
十分後、ネメアが六角形の紫色の宝石を見つけた。ゴーレムの心臓だ。拾い上げると温かみが感じられて、まるで血が通っているように思えた。
「見つかりました!」
ゴーレムの心臓を右手に掲げて、ネメアは叫んだ。彼のもとに二人が駆け寄ってくる。
「良かったわ。ネメアちゃんお手柄ね」
「いえいえ」
照れ臭そうに首を横に振ると、ネメアはケネイアに目線を向けた。
「ケネイアさんも、俺達と冒険者ギルドに来てください。報酬を山分けしましょう」
「いや、私は別に構わないよ。君たち二人で受けとればいいさ」
提案を断られ、ネメアは目を丸くした。
「えっ、いいんですか!?」
「あぁ。私はもう冒険者でないから、魔物を倒しても報酬は貰えないんだよ。代わりに、今夜の宿賃を払ってくれないかい? 隣町の宿屋に泊まろうと思っていてね。私の家は、ゴーレムに破壊されてしまったんだ」
「それは大変でしたね。宿賃ぐらいならお安いご用です」
話はまとまり、ネメアがゴーレムの心臓をアイテムボックスに入れると、三人は隣町まで歩いて移動した。到着する頃には、空は薄暗くなっていた。
宿屋に着くと、扉の前でケネイアは言った。
「ここの宿屋は、一部屋につき泊まれる人数が二人までだから、私とクレタが一緒かな」
それを聞いたネメアは、咄嗟に食って掛かった。
「はぁ!? 何それズル……じゃなかった。いくら恋人同士だからって、普通の宿屋で同室になるのは、いかがなものかと思いますよ!!」
怒りだした彼に、ケネイアはポカンと口を開けた。クレタまで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。そこで彼は、自分が何かおかしなことを言ったのに気がついた。
「あれ? 違うんですか…………?」
サァァッと青ざめて首を傾げたネメアに、ケネイアはプッと吹き出した。それからお腹を抱えて笑い出した。
「アハッ、ハハハッ! ネメア君はもしかして、私を男だと思っていたのかい? プフフッ! こんな見た目じゃ、男に見えても無理ないか。アハハハハ!」
続けてクレタも笑い出した。
「ウフフ! ネメアちゃんったら面白い間違えをするのね。しかも、私とケネイアが恋人同士って! フフフッ!」
ケネイアが女性だったと判明して、青ざめていたネメアは、今度は真っ赤になった。彼女に対して深く頭を下げる。
「お、俺、とんでもない勘違いをしてました! ごめんなさい!!」
「ハハッ、気にしなくていいよ。一人が寂しいなら、私達と同じ部屋に来るかい?」
「ご遠慮します!」
女性二人と一緒に泊まったら、興奮のあまりに眠れなくなりそうのなので、ネメアは誘いを断った。それから、女性だと分かった途端に、綺麗に整ったケネイアの顔を直視できなくなって、彼は顔を反らしたのだった。
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