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嫉妬しちゃいます

 ゴーレムは、足の裏に深々と突き刺さった長剣を無理やり抜き、後ずさった。すると、右足の足首までの土が、どしゃりと地面に崩れた。


 金髪の男は長剣を鞘に収めると、後ろを向いてネメアに話しかけた。


「青年、私に着いてこい。ここは一旦退却すべきだ」


「は、はい! あの、俺にはもう一人仲間が……」


 ネメアが言いかけている間に、クレタがこちらに走ってきた。


「ネメアちゃん大丈夫!? 怪我はない?」


「平気です。この人が助けてくれました」


 地面に手をついて立ち上がると、ネメアは金髪の青年に手の平を向けた。彼を見たクレタは目を見開いた。


「ケネイア!!」


「クレタ、久しいな。だが、話は後だ。今は私と一緒に避難所へ来てくれ」


「分かったわ」


 クレタはケネイアと顔をあわせて頷くと、何も言わずにネメアをおぶった。ネメアは、またあの激しい揺れに耐えなければならないのかとゲンナリしたが、早く逃げなければいけない状況なので、文句を呑み込んだ。


 ケネイアが走り出し、クレタはその後を追った。クレタはとても足が速く、疾風のように町を駆け抜けているが、彼は彼女と同じぐらいの速さで走っている。


 グラグラと揺れる視界の中でネメアは、「クレタさんに着いていけるということは、ケネイアさんはクレタさんの元仲間だな」と予想した。


 三分後。ケネイアとクレタは、赤いレンガ造りの大きな建物の前で足を止めた。その建物の中に、港町の住人が駆け込んでいる。ネメアは地面に下ろされ、三人は建物の中に入っていった。


 建物に入ると、真っ先に受け付けがあった。しかしそこに係員はおらず、代わりに避難してきた住人を、受け付けの横にある下り階段に案内していた。三人も係員に案内され、階段を下りていった。


 その先は、ふかふかの椅子が円形状に並べられ、中央に大きなステージがある、コンサート会場になっていた。椅子は満席になりそうな状態だ。皆、大きな鞄や荷物を足元に置き、震えている。


 三人はなんとか空いている席を探して、クレタを真ん中に挟んで座った。一息ついたところで、ケネイアがネメアに自己紹介を始めた。


「私はケネイア・オリオンだ。元冒険者で、剣士の役職に就いていた。隣にいるクレタ・トーラスとは、同じパーティーに所属していたよ。今は、この町に住んで海の絵を描いている、しがない絵描きさ。青年、君はどういった者なんだい?」


 穏やかな笑みを浮かべ、ケネイアはネメアに視線を向ける。ネメアは彼の顔を見て、思わずドキリとした。ここに来るまで急いでいたので気がつかなかったが、彼はとても整った顔をしていたのだ。


 つり目の眼光に光る緑の瞳はエメラルドのようで、鼻筋は高く、輪郭がシュッとしている。町で見かけたら、誰もが二度見するであろうイケメンだ。


 クレタさんの元仲間に、こんな奴がいるなんて思わなかった。世の中顔が物を言うから、恋仲だった可能性もある。そう思ったら、ケネイアさんに嫉妬しそうだ。


 ネメアはケネイアから少々目線を反らして、自己紹介した。自分の名前と、クレタさんに特訓してもらっていることを伝える。同じ男として舐められたくないので、追放されたことは言わなかった。

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