変な交渉しないでください!
ネメアとクレタは冒険者ギルドに向かった。夕方の時間帯とあってか、他の冒険者はほとんどいない。依頼は朝の内に受ける者が多いのだ。
二人は受け付けに行くと、まずはアンデッドを倒した際に貰った、感謝状を提出した。それを受け取った受け付け係の青年は、換わりに金貨一枚の入った袋を二つ用意して、それぞれ彼らに渡した。
Bランクパーティーが倒しにいく魔物とあってか、報酬はそれなりに良い。普通の宿屋なら十泊できるほどの賃金だ。二人はアイテムボックスに金貨の入った袋をしまった。
それからクレタが、ゴーレムの討伐依頼を受けられるかどうか尋ねた。
「ゴーレムの討伐依頼があったら受けたいんですが、ありますか?」
受け付け係の青年は真顔で頷き、険しい表情を見せた。
「はい。今朝、貿易船がバンバンくる港町で、ゴーレムが暴れだしたって話が舞い込んできましたよ。
そのゴーレム、かなり強い魔術師がつくったもので、しかもその魔術師が行方不明になっているんですよ。だから、Aランクパーティーの方達にしか、依頼を受け付けていません。
お姉さん達、見たところ二人しかいませんよね。パーティーメンバーが二人だけだとランクが測れませんし、この依頼は諦めてください」
パーティーのランクは、パーティーメンバーが四から五人いないと測ることができず、全員のステータスの合計によって決められる。四人パーティーなら合計値が1560、五人パーティーなら1950でAランクとみなされる。
話を聞いたネメアは、内心とてもホッとした。修行によって着実に強くなってきたとはいえ、Aランクパーティーが倒しにいくような魔物と戦うには早すぎる。無謀なことをして、命を危険にさらすのはよくない。
「別の魔物の討伐依頼にしましょう」と言おうと思い、彼は口を開いた。だが、言葉を発する前に、クレタが受け付け係の青年と交渉を始めた。
「ねえ、私達がゴーレムを倒せたら、報酬の半分を貴方の懐に入れていいわよ。だから、その依頼を受けさせてくれない?」
「はい?」
青年は顔を前に突きだし、聞き間違えたのかと耳に手を当てた。ネメアも彼女に対して、信じられないものでも見たかのような視線を送った。
「悪い話ではないわよね。むしろ、そちら側に得しかないわ。どう? 乗ってみない?」
「えっ、え、え!? いや、駄目ですよ。それで貴方達が死んだら、俺が責任に問われます。
冒険者ギルドで、絶対に達成できない依頼を受けさせて、死人をだした職員は辞職させられるんですよ。隣のお兄さんも、何とか言ってください!」
心底困った顔で係員はネメアに助けを求めたが、彼もどうしたらいいのか分からなかったため、助け舟は出なかった。戸惑う彼らを無視して、彼女はさらに交渉を進める。
「Aランクパーティー向けの魔物を倒した時の報酬は、だいたい金貨十枚と銀貨三十枚。その半分の金なら、貴族御用達の高級娼館で遊べるわね。きっと、可愛い女の子がいっぱいいるわ」
「うぐっ」
顔を赤らめ、青年はあからさまに目の色が変わった。それから着実に話が進み、契約書まで持ち出して、クレタの取引は成功した。あまりにも下世話な会話が行われたため、ネメアは気分を悪くした。




