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ラッキーではないです

 魔力を二倍にする薬草の副作用により、ネメアは体を痛めて動けなくなってしまったため、クレタに看病してもらいながら、村で三日間過ごすことになった。


 その間、牧場の牛が暴走して作物が荒らされる被害はパタリと止み、二人は村長から感謝状を貰った。


 普通の魔物の場合、倒した後に体の一部を持っていくことで、依頼を達成したとギルドに証明できる。だが、アンデッドは実体がないため、被害にあった村や町の長から感謝状を貰い、それを受付で見せて、討伐したことを証明するのだ。


 四日目の朝、宿屋を出たネメアは、ようやく自由に動かせるようになった腕を伸ばし、息をいっぱいに吸った。


「ぷはー! やっとまともに歩ける! 回復魔法を使えばすぐに痛みが無くなると思ったのに、体が弱りすぎてて魔法が使えないなんて、思いもしませんでしたよ」


 やれやれと首を横に振るネメアに、クレタは苦笑した。


「いいじゃない、ゆっくり休めたんだから。それに、村長から感謝状を貰うまでは、どっちみち村に滞在する事になったわ」


「それもそうですね。ギルドに着いたら、次は何の依頼を受けるつもりですか?」


「今度は、魔法よりも物理攻撃が有効な魔物の討伐依頼にしようと思っているわ。ゴーレムの討伐依頼があればいいんだけど」


「ゴーレム?」


 ポカンと口を開け、ネメアは首を傾げた。ゴーレムとは、人口の多い町を魔物から守るため、優れた魔術師によって産み出される衛兵のようなものだ。土や石を混ぜて体を造り、そこに魔法をかけることによって動き出す。


 町を守る衛兵を討伐するとはどういうことだろうか? と、彼は頭をひねった。


 ゴーレムは作成者である魔術師の指示に従って動くため、その魔術師が人を襲うよう命令しない限り、魔物と呼ばれる存在にはならない。


 仮にそんな事が起これば、国中大騒ぎになっている。ゴーレムを作成する魔術師は、国を治める王に指名されて行っているので、謀反を起こしたことになるのだ。


 まさか、自分が休んでいる三日の間に、どこかの町で魔術師が謀反を起こしていたのだろうか? そうと思うと、彼は背筋がゾッとした。


 一方クレタは、急に黙ってしまい、顔を青くしている彼の様子が可笑しくて、クスリと笑った。


「あら、どうしたのネメアちゃん? もしかして、ゴーレム討伐って聞いて、どっかの魔術師が謀反を起こしたんじゃないかって、思っちゃった? 心配しなくていいわよ。ここ最近で、そんな話は聞かないから」


 陽気な口調で彼女が和ませると、彼はホッと溜め息を吐いた。


「良かったです。それならどうして、ゴーレム討伐の依頼を受けようとしているんですか?」


「ほんのたまーに、魔術師の意思に関係なく、ゴーレムが暴れだす事があるのよ。ゴーレムは雷に撃たれると、魔法での制御が効かなくなって、人を襲うようになるわ。


 そうなれば、作成者の魔術師がどれだけ指示を出そうとも、ゴーレムを止められなくなる。物理的に体を破壊するまで、暴れ続けるわ」


「ひぇぇ、恐ろしい話ですね。ゴーレムって大体、二階建ての家と同じぐらいの大きさじゃないですか。そんなのが襲いかかってきたら、たまったもんじゃないですね」


「そうね。まあでも、雷に撃たれてゴーレムが暴れるなんて、謀反と同じぐらいレアケースよ。討伐依頼を受けられたら、ラッキーってぐらいかしら。報酬は良いのよね」


「それ、ほんとにラッキーな事ですか?」


 少々引きながらネメアが尋ねると、クレタは口に手を当てて、失言を恥じた。


「確かに、ラッキーではないわね」


 二人の間に微妙な空気が流れた。そのまま、次に討伐する魔物についての会話が行われる事はなく、馬車に乗って冒険者ギルドのある町に戻った。


 移動している最中、土砂降りの雨に見舞われて足止めをくらい、ギルドのある町に着くまでに二日かかってしまった。馬車から降りた後、ネメアは、滝のように打ち付ける雨音に混じって聞こえた、雷鳴の轟く音を思い出し、薄ら寒さを覚えた。


 




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