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待機します

 やがて時間が過ぎ、村全体が暗闇に包まれると、不穏な空気が漂う中、クレタとネメアは牧場に向かった。


 到着すると、二人は牧場を営むオーナー夫婦に事情を話し、牛舎で待機させてもらえないかと交渉した。夫婦はそれを快く承知してくれて、さらにネメアの囮作戦を話すと、昼間牛達が生活している放牧場までおびき寄せて、そこで戦えば良いとアドバイスをくれた。


 九時になり、クレタとネメアは夫婦に案内されて牛舎に向かった。移動の途中、旦那が二人に話しかけた。


「クレタさん、ネメアさん、どうかアンデッドを討伐してください! このままでは、うちの牧場は経営できなくなってしまいます。村の会議では、牛を殺処分しようという話まで出ているんです」


 目尻に涙を浮かべながら、旦那は深く頭を下げた。妻も、「よろしくお願いします」と、上ずった声で頼む。


「はい、お任せください!!」


 胸に手を当てて、ネメアは威勢よく返事をした。彼は、先ほどまでアンデッドに同情する気持ちが心を掠めていたが、困っている夫婦の様子に、それは風のように消え去った。


 いくら浮かばれない魂だからといって、人生を滅茶苦茶にするような魔物は、始末しなければならない。


 クレタも彼に続いて、「絶対に、一体も残さず退治します」と言い、頭を下げる。


 夫婦は二人がとても勇ましく見えて、これなら大丈夫そうだと安堵した。


 牛舎に入ると、牛達の様子を隅々まで見渡せる通路の真ん中で、クレタとネメアは待機することにした。100頭以上はいる牛達の寝息がこだましている。


 二十分間、二人はなにも会話をせず、息を潜めてじっと待っていた。だが、ある時突然、クレタが口を開いた。


「ネメアちゃん、この通路の一番前と奥に、餌の干し草が積んであるのが見えるでしょ。待機場所、あそこに変えてみない? 干し草に姿を紛れさせれば、アンデッドにこちらの存在を気づかれにくくなるわ」


「いいですね! じゃあ俺は、前側の干し草に身を潜めます」


「分かったわ」


 互いに背を向けて、足音を立てぬよう、クレタとネメアは移動した。干し草の山に体を埋めたネメアは、目から鼻の辺りにだけ隙間をつくり、牛達の様子を見渡した。


 一時間ほど経った頃、ついにアンデッドが姿を表した。二体の青白く透けた骸骨が、ひっそりと牛に近づいていく。一体は、前から四列目の寝床にいる牛へ、もう一体は十三列目の牛に手を伸ばした。


 ネメアは頭の中で呪文を唱え、両手を干し草の上に付き出した。離れた所にいる魔物、それも二体同時に魔法を当てるのは、なかなかコントロールが難しい。


 しかしネメアは、二体の足元へ的確に木の根を召喚し、体の節々に巻き付けて、拘束することに成功した。

 

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