同情しちゃいます
部屋で十分ほど休憩すると、アンデッドに関する情報をさらに聞き込みするため、ネメアとクレタは一度宿屋から出た。
畑仕事をしている村人に話を聞いたり、アンデッドが牛に取り憑かれる被害にあっている牧場を訪ねたりした。話を聞いて回る内に、裕福な者が所持する大きな畑ばかりが、アンデッドによって荒らされていることが分かった。
さらに、村人達の間では、先月隣の村がヒュドラの襲撃に遭い、多くの人が亡くなってしまったため、アンデッドはその者達ではないか、という推測がされていた。それを聞いて、ネメアとクレタは隣の村の住人を気の毒に思った。
日が傾き始めると、二人は宿屋の借りた部屋に戻り、ベッドに座って、聞き込みによって得た情報を整理した。
「それじゃあ話を整理して、どこで待機するか決めましょ。アンデッドは、九時から十時になると、牧場の牛に取り憑いて暴れ始める。それから、朝の四時になるまで、暴走し続けるらしいわ」
「九時前に、牧場の牛舎で待機した方がいいですね」
「そうね。牛に取り憑く寸前に、攻撃しちゃいましょう。くれぐれも、牛自体には危害を加えないよう、気を付けなさい」
「はい!」
良い声でネメアが返事をすると、クレタはにっこりと笑った。
「今回はやる気満々ね。でも、牛を守りながら戦うのは、凄く大変な事よ。牛舎を破壊してもいけないし。そもそも、牧場の方に許可をもらえなきゃ、違う戦法を考えないといけないわ」
「……そうですよね」
Bランクパーティーが討伐する強さの魔物は、さすがに厄介そうだ。加えてネメアには、気がかりな事があった。
「クレタさんは、アンデッドに同情してはいけないと言っていましたが、俺は無視できる気がしません。村に魔物が襲撃してきて、突然不幸が降り注いで、何もかも奪われてしまうなんて、あんまりじゃないですか」
「そうね。でも、私達が倒さなくちゃ、アンデッドは永遠に成仏できないのよ」
静かに眉を潜めながら、クレタは指摘した。ネメアはぐっと唇を噛み、アンデッドの哀れさを傷む。
「俺、このままだと憑依されるかもしれません」
「大丈夫よ。アンデッドに取り憑かれても、叩けば追い出せるわ。思いっきりビンタしてあげる」
誰もいないところで、クレタは右手を大きく振り、ジェスチャーしてみせた。ネメアは少し和んだ。
「あはは、お手柔らかにお願いします。あっ、そうだ!」
頭が柔らかくなり、ネメアはアンデッドとの良い戦い方を思い付いた。
「俺が囮になって、アンデッドをおびきよせます。そのまま牛舎を出て、周りに何もない広い場所まで誘導すれば、安全に戦えるんじゃないですか」
「あら、随分と思いきったことを言うじゃない。さっきまで、取り憑かれちゃうかもって不安がってたのに。
いいわ、できるものならやってみなさい。これも修行になるでしょうし」
腕を組んで、クレタはネメアにウィンクした。




