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盲目な者達

ネメアを追放した、アレス視点のお話です。クズ発言が多いので、苦手な方はご注意ください。

 ネメアとクレタが、行方不明者探しをしている時、彼を追放したアレス達は、新たなメンバーと共に、ヒュドラ退治に向かっていた。


 ヒュドラの生息する地域までは、冒険者ギルドのある町から、馬車を乗り継いで四日はかかる。今日は二日目だ。


 馬車の中、アレスは新たなパーティーメンバーに話しかける。


「キャンサ、お前は魔術が得意だって、言ったよな。魔力のステータス、どれぐらいあるんだよ」


『キャンサ』と呼ばれ、ピンク色の髪を二つ結びにした、一見幼く見える女性は、アレスに視線を向けた。


「100」


彼女は素っ気なく答える。アレスは真顔になり、魔術師のアテネは、眉を吊り上げた。


「貴方は何を言ってるの!? 魔力のステータスを100になんて、できるわけないでしょ! 私の75ですら、ほとんどの人間が到達できないんだから!


 私達は皆、自分の得意な事のステータスを伸ばして、100に到達するのを目指してるの。貴方みたいなどこの馬の骨とも分からない奴が、私達より先に、100になっているステータスがあるなんて、認めないわ!」

 

「落ち着けよ。単なる冗談に決まってるだろ」


 憤慨するアテネをアレスがなだめた。キャンサの顔を、確認を取るようにチラリと見る。


「うん。100ではないかな」


 キャンサはあっけなく、嘘を吐いたと認めた。彼女に対して、バーサーカーのセレーネが不満を溢す。


「はあ、あんたつまんない奴ね。どうせ嘘を吐くなら、もっと面白い事言ってくんない? その冗談すっごく不愉快!」


「ごめん。じゃあ別の話をするね。ヒュドラって、九つの首を持つ、口から毒を吐く蛇でしょ。あの首ってね、切っても切っても再生するんだよ。それどころか、どんどん首が増えちゃうんだよ」


 今度のキャンサの話には、セレーネは腹を抱えて笑いだした。アレスとアテネも高笑いした。


「キャハハハハハッ!!! そんなの絶対嘘じゃん!!!」


「そうよ。無数に首が増え続けるなんて、気持ち悪すぎるわ。ありえない! フフフフフ!」


「お前、なかなかに怖いこと言うんだな!! ハハハハハ!!」


 その場は爆笑の渦に包まれた。だがキャンサだけは、ピクリとも表情を変えず、彼らの声が止むのを待った。


 三人が笑い疲れて静かになると、彼女は質問をした。


「ねえ、このパーティーはAランクなのに、普通はSランクパーティーが依頼を受けるヒュドラ討伐を、どうして受けたの?」


「そりゃあ俺達、伝説の冒険者パーティーって言われてる、オリーブパーティーみたいになるのを目指してるからだよ。


 キャンサも知ってるだろ? この国の各地にいた、町に甚大な被害を及ぼす魔物を、片っ端から討伐してった人達。


 俺達も、早くオリーブパーティーみたいになって、国中の人々から英雄扱いされたいんだ。そうなりゃ、金も女も、なんだって手に入るようになるだろ? それに、名誉がありゃ気分がいいぜ」


 野望をむき出しにし、口からよだれを垂らしながらアレスが答えた。キャンサは膝の上で拳をギュッと握り、さらに問う。


「でもオリーブパーティーの人達って、みんな失踪しちゃったよね。案外、英雄扱いって、苦しいことだったかもよ」


「まっさかぁ~ 失踪した原因なんて、どうせ魔物かなんかに殺られて、全員死んじまっただけだよ」


 そう言うと、アレスはゲラゲラ笑いだした。


 キャンサは、頭に血が登っていくのを感じた。つい攻撃系の魔法の呪文を唱えたくなったが、舌を噛んで我慢する。


 この人達は、名誉に目が眩みすぎて盲目になっている。会話からも察知できるが、ヒュドラを倒しにいくというのに、特別な準備を何もしていない所に、それが顕著にでている。


「ネメアくん、こんな人達からは離れて正解だったよ」


 心の中で、キャンサは呟いた。

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