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集団だってへっちゃらです

 足の皮がふやけそうになるぐらい歩いていると、水の流れが速くなり始めた。二人は腰を落として踏ん張りを効かせながら、一歩一歩着実に足を動かす。


 どうやら、川から水が流れ込んできている地点に到着したようだ。成熟の手前まで成長した木が、すっぽり入るような縦長の穴が開いていて、遠く延びる川が見える。光が差し、水面は藍色にきらめいていた。


 ネメアはこの光景に目を奪われ、思わず立ち止まり、辺りを見渡した。


「わぁぁ、綺麗ですね。心が穏やかになります」


「ほんとねぇ。でも、みとれている暇はないわ。あそこでウォータースパイダーが、私達を見張ってるわよ」


 体を右に向け、クレタは指をさした。その先には、外へと繋がる穴より横幅の広い穴が開いていて、十二体のウォータースパイダーが、こちらをじっと見つめていた。


 クレタは助走をつけて飛び上がり、一体のウォータースパイダーを踏み潰した。それを見て、残りの十一体が彼女の方に口を向け、糸を吐き出す。


 彼女は側転して、体に触れた糸をなぎ払い、もう一体踏み潰した。さらに体を九十度回してバク転をきめ、合計三体のウォータースパイダーを仕留める。


 クレタに近づくのはまずいと判断し、九体のウォータースパイダーは、八本の脚で器用に水をかき分け、獲物をネメアに切り替えた。


 応戦しようと彼は駆け出したが、水の流れに逆らったせいで、足がもつれて転んでしまう。その隙を狙われ、九本の糸が発射された。


 顔を上げ、自分に大量の糸が迫ってきているのが分かると、彼は体を横に転がした。背中に糸が当たってしまったが、すぐに水で洗い流され、拘束されずにすんだ。この出来事で、彼は良い作戦を思い付いた。


 大きく息を吸い、水の中に顔をつけて、うつ伏せの状態のまま、ウォータースパイダーが近づいてくるのを待ってみる。バシャバシャと泳ぐ音が、徐々に大きくなってきた。


 九体のウォータースパイダーが、目と鼻の先まで迫ってきた時。彼は上半身だけ起き上がらせ、目の前にいた一体の顔面を思い切り殴った。


 殴られたウォータースパイダーは、顔面が凍りついて、石のように固くなる。ネメアは、そいつの胸から生えた脚を掴んで振り回した。


 残りの八体に、鈍器と化した一体の顔面が打ち付けられる。そいつらは、頭や胸が大きく歪んで絶命した。また、彼に捕まれていた一体も、顔が粉々に砕けて息絶えた。


 ネメアは立ち上がり、クレタが待っている、横幅の広い穴の入り口へと歩いていった。彼女が、彼に向かって笑みを送る。


「やるじゃない! 同時に九体相手にするなんて。


 私の予想が当たっていれば、この穴の先に、行方不明者がいるはずよ。そして、巨大なメスのウォータースパイダーもいるわ。準備はいい?」


「はい!!」


 ネメアは威勢よく返事をした。


 


 穴の中に入っていくと、地面がだんだん高くなり、水が引いていった。完全な陸地になると、二人は足を拭いて靴を履いた。ネメアは、爪先に刃の仕込まれた靴を履いた。


 そしてクレタはドレスの裾を下ろした。ネメアは心の中で、ホッと溜め息を吐く。ずっとあんな格好でいられたら、頭がどうにかなるところだった。


 二人が先へ進むにつれ、穴の幅は広くなる。同時に、甘さと青臭さが混ざりあった、不快な臭いも漂ってきた。


 五分後には、二人は衝撃的な光景を目にしていた。三十体ほどのウォータースパイダーのオスと、後ろにどっしり構える、オスより十倍以上大きなメス。そいつの近くには、青白い顔の男性が無数の糸に絡められ、天井からぶら下がっている。


 クレタは右足を大きく前に出し、腕を振る構えをとって、走り出す準備をする。ネメアは首筋に汗をかきながら、ファイティングポーズをとった。

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