お姉さんに引き取られました
ここは冒険者ギルド。いくつかのパーティーが受付で依頼を受けている中、ギルドの端の待合室席で、一組のパーティーに緊迫した空気が流れていた。
壁際のソファには、茶髪で眉毛が太い男と、その男の両端に女が座り、机を挟んだ向かい側のソファには、ポツンと黒髪黒目の男が座っている。三対一の状況だ。
「俺を追放するって、どういうことですか?」
一人でソファに座る男は、黒色の瞳を震わせながら、静かに尋ねた。彼の問いに、向かい側に座る男がフンッと鼻を鳴らして答える。
「お前、ステータスが平凡すぎるんだよ。攻撃力も、素早さも、防御力も普通。剣も魔法も武術も、並みにしか使えない。
俺達がBランク冒険者だった頃までは、お前も役に立ってたよ。だけどな、俺達がAランク冒険者になってから、お前が足手まといになってきたんだ」
男の言葉に、黒い瞳の青年は思い当たるふしがあって俯いた。
『アレス』さんの言う通りだ。皆にはそれぞれ得意なことがあって、今までそれを伸ばしてきたから、Aランク冒険者が討伐依頼を受ける強い魔物を、お互いの苦手な部分を補いあって倒していた。だけど俺は、何をやっても普通程度にしかできなくて、伸ばせる特技がなかったせいか、強い魔物に太刀打ちできない。だから、依頼を受けても、皆に助けられてばかりだった。
黒い瞳の青年は、悔しくなって唇を噛んだ。そんな彼に追い討ちをかけるように、アレスの右隣に座るローブを着た女が口を割る。
「貴方は今まで、私が使えない回復魔法を使えたから、このパーティーから外されずに済んでいたの。でも最近、貴方より優秀で、強力な回復魔法を使える人が、このパーティーに入りたいって頼んできたのよ」
ローブの女の言葉を、アレスの左隣に座る、猫耳の生えた女が続けた。
「つまりあんたは、用済みってわけ」
猫耳の女がそう言った途端、アレスとローブの女は笑いだした。黒い瞳の青年は、惨めな気持ちになって目を潤ませた。
そんな時、待合席に座る四人の元へ、第三者が割り込んできた。
「あら、その子用済みなの? だったら、私がもらっていいかしら」
驚いた四人は、第三者の方に視線を向けた。そこにいたのは、胸でピチピチの赤いドレスを着た、黒髪の女性だった。彼女の茶色の瞳は、黒い瞳の青年をガッチリととらえている。
皆、呆気にとられて言葉を失っていたが、アレスが先に我に帰り、嫌にニヤニヤしながら女性の問いに答えた。
「どうぞどうぞ! こいつは要らないんで、自由に貰っちゃってください!」
「ホントにいいのね? じゃあ、ありがたくいただいていくわ」
女性は黒い瞳の青年の手を引き、アレス達の元から足早に立ち去った。そして、彼らの死角に入ると、ヒソヒソ声で青年に話しかけた。
「嫌な奴らね、まったく。仲間の個性を活かして上げられない方が悪いっていうのに、貴方をゴミみたいに扱って」
「は、はぁ。あの、俺をもらうって……」
「あら、そのままの意味に決まってるじゃない」
「え?」
背筋がゾクッとして、黒い瞳の青年は後ずさった。まさか、お持ち帰りされちゃうの!? 嬉しい事ではあるけど、さすがに初対面でそんなことを言われても、困ってしまう。
戸惑う青年に、女性は腹を立てた。
「ちょっとあんた、何よその顔。まさか私が、怪しいことでもしようとしてるんじゃないかって、思ってる? 違うわよ。貴方は、私とパーティーを組むのよ」
「へっ? あっ、なーんだ、そっちか!」
「まあでも、貴方がそのつもりなら……」
女性は色っぽい目をした。黒い瞳の青年は、胸の鼓動が高鳴り、顔を赤くする。だが、彼女はすぐにいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「うそうそ、冗談よ。初対面の男に手をだしたりなんかしないわ。そんなことより、貴方、名前は?」
からかわれた青年はムッと頬を膨らませる。だが、すぐに気を取り直して名を名乗った。
「ネメアです」
「私はクレタよ」
クレタはネメアの手をガッシリと握った。
何だかよく分からない事になってしまったけれど、今はこの人についていくしかない。
ネメアはクレタの手を握り返した。
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