表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/180

お姉さんに引き取られました

 ここは冒険者ギルド。いくつかのパーティーが受付で依頼を受けている中、ギルドの端の待合室席で、一組のパーティーに緊迫した空気が流れていた。


 壁際のソファには、茶髪で眉毛が太い男と、その男の両端に女が座り、机を挟んだ向かい側のソファには、ポツンと黒髪黒目の男が座っている。三対一の状況だ。


「俺を追放するって、どういうことですか?」


 一人でソファに座る男は、黒色の瞳を震わせながら、静かに尋ねた。彼の問いに、向かい側に座る男がフンッと鼻を鳴らして答える。


「お前、ステータスが平凡すぎるんだよ。攻撃力も、素早さも、防御力も普通。剣も魔法も武術も、並みにしか使えない。


 俺達がBランク冒険者だった頃までは、お前も役に立ってたよ。だけどな、俺達がAランク冒険者になってから、お前が足手まといになってきたんだ」


 男の言葉に、黒い瞳の青年は思い当たるふしがあって俯いた。


 『アレス』さんの言う通りだ。皆にはそれぞれ得意なことがあって、今までそれを伸ばしてきたから、Aランク冒険者が討伐依頼を受ける強い魔物を、お互いの苦手な部分を補いあって倒していた。だけど俺は、何をやっても普通程度にしかできなくて、伸ばせる特技がなかったせいか、強い魔物に太刀打ちできない。だから、依頼を受けても、皆に助けられてばかりだった。


 黒い瞳の青年は、悔しくなって唇を噛んだ。そんな彼に追い討ちをかけるように、アレスの右隣に座るローブを着た女が口を割る。


「貴方は今まで、私が使えない回復魔法を使えたから、このパーティーから外されずに済んでいたの。でも最近、貴方より優秀で、強力な回復魔法を使える人が、このパーティーに入りたいって頼んできたのよ」


 ローブの女の言葉を、アレスの左隣に座る、猫耳の生えた女が続けた。


「つまりあんたは、用済みってわけ」


 猫耳の女がそう言った途端、アレスとローブの女は笑いだした。黒い瞳の青年は、惨めな気持ちになって目を潤ませた。


 そんな時、待合席に座る四人の元へ、第三者が割り込んできた。


「あら、その子用済みなの? だったら、私がもらっていいかしら」


 驚いた四人は、第三者の方に視線を向けた。そこにいたのは、胸でピチピチの赤いドレスを着た、黒髪の女性だった。彼女の茶色の瞳は、黒い瞳の青年をガッチリととらえている。


 皆、呆気にとられて言葉を失っていたが、アレスが先に我に帰り、嫌にニヤニヤしながら女性の問いに答えた。


「どうぞどうぞ! こいつは要らないんで、自由に貰っちゃってください!」


「ホントにいいのね? じゃあ、ありがたくいただいていくわ」


 女性は黒い瞳の青年の手を引き、アレス達の元から足早に立ち去った。そして、彼らの死角に入ると、ヒソヒソ声で青年に話しかけた。


「嫌な奴らね、まったく。仲間の個性を活かして上げられない方が悪いっていうのに、貴方をゴミみたいに扱って」


「は、はぁ。あの、俺をもらうって……」


「あら、そのままの意味に決まってるじゃない」


「え?」


 背筋がゾクッとして、黒い瞳の青年は後ずさった。まさか、お持ち帰りされちゃうの!? 嬉しい事ではあるけど、さすがに初対面でそんなことを言われても、困ってしまう。


 戸惑う青年に、女性は腹を立てた。


「ちょっとあんた、何よその顔。まさか私が、怪しいことでもしようとしてるんじゃないかって、思ってる? 違うわよ。貴方は、私とパーティーを組むのよ」


「へっ? あっ、なーんだ、そっちか!」 


「まあでも、貴方がそのつもりなら……」


 女性は色っぽい目をした。黒い瞳の青年は、胸の鼓動が高鳴り、顔を赤くする。だが、彼女はすぐにいたずらっ子のような笑みを浮かべた。


「うそうそ、冗談よ。初対面の男に手をだしたりなんかしないわ。そんなことより、貴方、名前は?」


 からかわれた青年はムッと頬を膨らませる。だが、すぐに気を取り直して名を名乗った。


「ネメアです」


「私はクレタよ」


 クレタはネメアの手をガッシリと握った。


 何だかよく分からない事になってしまったけれど、今はこの人についていくしかない。


 ネメアはクレタの手を握り返した。

 

この話が「面白い」「続きが気になる」と思った方は、ブックマーク、ポイント、いいねをつけてくださると、とてもありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 追放のやり取り中に早くに読者に興味起こすのイベントを発生したの事。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ