お姉さんと買い物します 2
エリュマはネメアから少し下がると、エプロンの前ポケットからメモ帳と鉛筆を取り出し、質問を始めた。
「じゃあまず、普段はどんな風に魔物と戦っているのか、教えてちょうだい」
「はい。俺は魔物によって戦い方を変えてます。逃げ足の速い魔物には武術を、防御の固い魔物には短剣を、遠距離から攻撃してくる魔物には、魔法を使って戦います」
「へー、手数が多くていいわね。装備はどんなの使ってる?」
「えっと、肩当てと、膝当てぐらいですね。しかも、脆くてすぐに壊れてしまう奴です。俺、前のパーティだとさりげなくサポートするぐらいしかできなかったんで、そんなに装備を着けなくても平気だったんです」
「前のパーティ?」
エリュマはメモをとる手を止めた。ネメアは顔を曇らせる。
「俺はステータスが平凡すぎて、パーティから追放されたんです。特に秀でたところがないせいで、強い魔物に太刀打ちできませんでした。それから、俺より優秀な人を仲間に入れられそうだから、俺はもう用済みだと言われました」
薄く上唇を噛み、ネメアは悔しそうに顔を歪めた。事情を聞いたエリュマは、メモ帳と鉛筆をポケットにしまい、手の平を拳でうつ。彼にピッタリの装備を思いついたのだ。
「なるほど、思い付いたわ! 良いのを持ってくるから、ちょっと待ってて」
「え?」
エリュマは、男性向けの装備が並べられたコーナーへ、小走りで向かっていった。ネメアは、今の会話だけで、どんな装備が合うのか本当に分かったのだろうかと困惑する。
戻ってきたエリュマが手にしていたのは、鉄でできた肘当てと、固い皮膚を持つ魔物の革でできた、腹当だった。なぜこれらを持ってきたのか、彼女は解説を始めた。
「使ってる武器は短剣なのよね。短剣はリーチが短いから、横からの攻撃は防ぎにくいでしょ。だから、肘とお腹はしっかり守っておくべきだと思うの。
それに、前のパーティで戦いの補助をしてたなら、ネメアさんは強力な一撃を与えるタイプじゃなくて、機転になるような、トリッキーな事をするタイプだったんじゃないかしら。色んな種類の攻撃ができることだし。
貴方のステータスを見た時は、とりあえず全身を鉄の装備で固めるべきだと思ったの。だけど話を聞いて、意見が変わったわ。
必要最低限の装備だけにして、なるべく速い動きができるようにする。そうすれば、元々やっていた機転づくりのように、魔物を蹂躙する戦い方ができるはずよ」
話を聞いたネメアは、エリュマの言っている事が全て的を得ていたので、とても感心した。
「わぁぁ、凄いですね。俺達初対面なのに、そこまで見抜けるなんて」
「ウフフ、伊達に司令塔してないもの。私、洞察力は誰にも負けない自信があるわ。それで、ネメアさんの装備、これでいいかしら?」
「もちろんです」
エリュマが装備を差し出し、受け取ったネメアはさっそく身につけてみた。重すぎず、この程度なら動きに支障が出ない。そのうえ、かなり丈夫そうなので安心感がある。
「しっくりきました! 俺、買ったらそのまま着けていきます」
「気に入ってくれて何よりよ。じゃあ次は、武器を選んであげるわ。ネメアさんは今、どんな武器を持ってるの?」
話を切り替え、エリュマは再びメモ帳とペンを取り出した。