ステータス、上げられました
巨木の精霊にお礼と別れを告げ、二人は森の出口へと向かう。クレタがネメアを背負い、森の中を駆け抜けた。時々大きくジャンプをして、道を飛び越す事もある。
クレタに背負われたネメアは、森の景色が風のように過ぎ去っていき、頭がグワングワン揺れて気持ち悪くなった。途中何度か吐きそうになったものの、気合いで持ちこたえる。
森の出口に到着した時、疾走していたクレタは疲れている様子をいっさい見せず、「あー、楽しかった」と呟いた。逆に、背負われていただけのネメアは、ヘトヘトになっていた。
「クレタさん、飛ばしすぎです…………」
「私の中ではゆっくり走っていたほうよ。そんな事より、ステータスカードを見てみましょう」
クレタの提案に頷き、ネメアはドキドキしながらカードを取り出した。これだけ頑張ったので、成果が出ていてほしい。
カードに書かれている事を見た二人は、途端に「あっ」と声を出した。
『ネメア・レオ』
攻撃力 52/100
防御力 50/100
素早さ 69/100
武器を扱う技術 65/100
魔力 50/100
身体能力 54/100
心の底から沸き上がってくるような、大きな喜びや感動は訪れなかった。しかし、二人は静かに微笑んだ。
「良かった、全体的にステータスが上がってます。しかも、素早さと武器を扱う技術は、60以上になりました」
「平凡から脱却する、第一歩を踏み出したわね。これからも着実に、ステータスを上げていきましょ」
「はい」
返事をし、ネメアは続けて疑問を口にした。
「でも、こんなに早く成長できるなんて思いませんでした。普通、Bランクパーティーが倒しにいくぐらいの強さの魔物を5体ほど倒さないと、ステータスは上がりませんよね」
「気づいたわね。それが、私の修行のポイントよ。ネメアちゃんは今回、体がヘトヘトになるまで頑張ったわ。人間は限界を迎える度に、その上限が上がっていくのよ。そして、目の前の困難を乗り越えるために、いつも以上の力を発揮できるの。
つまり、体に危機感を覚えさせることによって、早く成長しなきゃって気にさせてるのよ。だから、一気にステータスを上げることができたってわけ」
「なるほど!」
クレタのアイデアに感銘を受けながら、ネメアはステータスカードをズボンのポケットにしまった。
それから二人は別の森に行き、適当に薬草を三十本採取して、冒険者ギルドへと向かった。もう、空は橙色になっている。
受け付けにいる係員に薬草を渡し、依頼リストに「達成」の判子を押してもらうと、薬草を買い取ってもらった。それほど高い値はつかなかったが、夕食代ぐらいにはなりそうである。
銅貨十枚と銀貨一枚の入った袋を持って、二人は受け付けから離れた。その時ネメアは、二人の男がコソコソ行っている会話が耳に飛び込んできた。
「なあ知ってるか? アレスパーティーの奴ら、つい先日仲間を解雇したと思ったら、もう新しい仲間を雇ってたぜ」
「知ってる、知ってる。しかも今朝、あいつらまだAランクパーティーなのに、Sランクパーティーじゃないと倒すのが難しいって言われてる、ヒュドラの討伐依頼を受けてたぜ」
「げっ、マジかよ。あいつら出世したいからって、生き急いでるよな」
ネメアは、無意識に肩が上がっていくのを感じた。
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