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ゴス姫ちゃんねる

【ゴス姫ちゃんねるの紹介】

青色城のお姫さま〝ゴス姫〟のチャンネル。

庶民相手にゲームの腕前を披露するのが趣味。

「ちょーっ、ガッデームなんですけどー」


私の名前は錆御納戸(さびおなんど)薄花(はっか)


21歳のゲーム大好き女子だ。


ここ最近は人気(ブイ)チューバー〝ゴス姫〟としてゲームプレイ動画の配信をしている。


実力が足りなくてプロゲーマーを(あきら)めた私にとってはちやほやされながらゲーム配信ができるVチューバーは天職だ、と思ってたんだけど。


「誰やねん、ラコロってさぁー!」


昨日の格闘ゲーム30人抜き企画の30戦目で当たった相手〝ラコロ〟。


最初は善戦できていたが、一機落としてからはマジになったらしくフルボッコにされてしまった。


そして、どうやらVチューバーだったようで、後から調べてみたらプレイ動画がいっぱい出てきた。


「こんな強いならVチューバーやらないでプロやれよ」


しかも、私との対戦も酒飲んで酔っ払いながらやってたらしい。


マジで自信喪失だ。


プロゲーマーといい勝負できたと思ってたら、実は手加減されていたことを後から知ったとき以来だよ。


「普通の実況者やればいいのに。…あ、実はあんまり容姿に自信がないとか?」


ちなみに私は可もなく不可もなく、といった感じだ。


自己評価も他者評価も。


「気晴らしにゲーセン行こ…」



「(ヤッべー、マジべーわ。面倒くせぇー)」


「ハメ技使いやがってさー。女だからって調子乗ってね?」

「ってかあのキャラここじゃ禁止だからな」

「ルール守れよ」


ゲーセンで客ボコってたら面倒なのに絡まれた。


ローカルルールなんざしらねーよ。


公式ルールに従えよ。


「金返せよ」

「ってかもう出禁(できん)じゃね」

「罰金払えよ」


言われなくてもこんなとこ二度と来ねーよ。


店員も見ないフリしてっし、どうすっかねー。


「おーい、あんちゃんたち。レディーにそんな風に迫るもんじゃねーぜ」


私と男たちの前に女性が割り込んできた。


「あん?」

「誰だお前?」

「こっちは取り込み中…え」


乱入してきた女に(すご)もうとした男が顔を赤くして口をつぐんだ。


何故かはわかる。


だって。


「(メッチャ美人…)」


黒髪のショートヘアに黒縁(くろぶち)メガネ。


そんな地味な記号が吹き飛ぶくらい目鼻立ちの整った美人な女性だ。


…服は何故か浴衣で靴は下駄だ。


「(どっかで見たような気が…?)」


「いや、こいつがね。ローカルルール無視して来たからさ」

「ちょっと注意してただけなんすよお姉さん」

「ってか一緒に遊びに行きません?」


私相手とえらい態度違うなオイ。


「んー、じゃあそのゲームのローカルルール教えてよ。あたしに誰か一人でも勝てたら、君らと一緒に遊んであげるから。で、あたしが3連勝したらその娘見逃してやってよ」


浴衣女がなんか勝手に提案し始めた。


「よっしゃ」

「負けねー」

「手加減しないっすからね」


浴衣女がこちらに向けて小さくウインクした。



「いやー、やっぱ格ゲーは楽しいねー」


「………」

「………」

「………」


浴衣女はノーダメージで三人抜きを達成した。


「お姉さんこのゲーム得意なんですね」


席を立って伸びをしている浴衣女に声をかけた。


「いや、今日初めてやったよ?」


マジかよ。


っていうかこのプレイの感じと声はやっぱり……。


「納得いかねーよ! ふざけんなよ!!」

「おい、やめろって!」


男のうちの一人がお姉さんに(つか)みかかろうとした……!


「え?」


気がつくと男は床に組み伏せられていた。


「ゲームで負けたからって女の子に手を挙げるのは関心しないにゃー。これだからオフラインは」


いや、今なにしたこの女!?


「因みにこのまま関節を決めると腕がボキっとね」


笑顔のまま物騒(ぶっそう)なことを言い出す浴衣の女性。


「すいませんでしたっ…!!」


「はいはい気をつけてね」


浴衣女が技を()くと男は仲間を連れて走って逃げていった。


ダセー。


「いやぁ、災難だったねお(じょう)ちゃん」


お嬢ちゃん、…って私のこと?


「いえ、助けていただいてありがとうございます」


「いいってことよー」


適当に手を振って店を出て行こうとする浴衣女。


…どうする?


間違ってたら?


ええい、ままよ!


「待ってください〝ラコロ〟さんっ!!」



「んー、何故気づいた。とか言えばいいのかな?」


やっぱりラコロだ!


「いや、格好も声もまんまじゃないですか」


「21歳ではないんだけどね」


Vチューバーとしての設定の話か?


それを言うなら私もお姫様なんかじゃない。


「あたしのファンかな? サインあげるから内緒に…」


「サインはいりません」


その代わり。


「昨日のリベンジをさせてください」


「………ひょっとしてゴス姫ちゃん?」



「やっぱ、ゲームは楽しいねぃ」

「悔しいいいいいいいい…っ!!!!」


その場で地団駄(じだんだ)を踏む。


あの後店を変えていろんなゲームをやったが30連敗だ。


格ゲーもパズルゲーもレーシングゲーもガンアクションもリズムゲーも勝てない。


「いやー、ゴスちゃんは強いと思うよー。あたしがやった中でも十指に入るねー」


「…一番は?」


「ジャス」


プロゲーマーじゃん。


「勝ったの?」


「シラフで苦戦したのは初めてだったね」


勝ったのかよ。


「チートじゃなくてそんだけの腕があるのになんでVチューバーやってるんですか?」


私ならプロゲーマーになってる。


「仕事がねー」


「私だったら仕事辞めてプロになってる」


正直その腕は羨ましい。


「うーん? ゴスちゃんはプロのVチューバーじゃないの?」


「まあ、企業所属して収益化してはいますけど…。本当はプロゲーマーになりたかった」


この人の半分の腕でもあれば。


「強くしてあげよっかー?」


「え?」


「暇なときでよければいろいろ教えてあげるよー?」



臣民諸君(しんみんしょくん)私は帰ってきた!』


-姫様お帰りー

-発狂は治まった?

-お布施です ¥510

-待ってた


あの日以来のゲーム実況配信。


初めてボロ負けして(わめ)き散らしてしまったが、ちゃんとファンは待っていてくれた。


っていうか、地味に登録者増えてる。


『私、ゴス姫はここに宣言する!』


-お

-なんだなんだ


『私はゲーム界の神になる!!』


-おおー

-ついに壊れたか

-姫様直ってなくて草

-パチパチ

-いったいどうしたw


『そのために今日は先生を呼びました! 師匠、どうぞこちらへ!』


-誰?

-だれ

-?


『今日も元気だ酒が(うま)い。退魔師ラコロでーっす』


-誰?

-ラコロw

-だれ

-酒飲むなw

-この前姫様ボコった人


『今日からゴスちゃんの師匠になりましたー。お代はお酒でいいよー』


『という訳で今日は私と師匠の二人で乱闘ゲーム200人斬りやってきます!』


-二百w

-地獄タッグ

-相手の人可哀相

-ラコロコラボ初じゃね


二人で格ゲーのチーム戦に挑む。


やっぱゲームは楽しいなあ!

【ゴス姫ちゃんねる】

☆呉須姫-ゴスヒメ-

本名:錆御納戸 薄花-サビオナンド ハッカ-

性別:女性

年齢:21歳

身長:155cm

好き:ゲーム配信、ちやほやされること

嫌い:負けること、手加減されること

苦手:人付き合い

家族:父、母、兄、猫

趣味:ゲーム、猫と遊ぶ

所属:プロジェクト・ディープシー

配信歴:1年

登録者:22万4300人

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