飛行機ってあんまり乗ったことないから毎回緊張する
「ミヤコの大会見に行きたかった・・・」
「いいのよ、それよりベトナム楽しんでね!」
両親がとってくれた飛行機のチケットが、ミヤコのバドミントンの試合の3日前のものと判明し、なぜ先にミヤコの大会の日程を聞いておかなかったのか後悔した。
終業式も終わり、いつものファミレスにみんなで寄り道する。
新太くんは馨くんに夏休みの宿題をいつ何をやるかっていうスケジュール表を作ってもらっていた。
「この通りにやらないと、遊んであげないからね」
「馨さま・・・!俺頑張ります!」
「それにしたって、3週間近くベトナムに滞在ってすごいね」
「向こうに家があるからホテル代かからないからね」
私は順番にみんなを顔を見つめる。
アイスコーヒーを飲んでいたゆうは、ストローから口を離して私を見返す。
「な、なんだよ」
「いや、3週間もみんなに会えないから顔をよく見ておこうと思って・・・」
「連絡は取れるんだろ」
「うん」
「体調だけは気をつけてね」
「馨くん、ありがとう」
家に帰ったら最終で荷物の確認をして。宿題をベトナムに忘れたら大変なことになるから、なるべくこっちでやっていく。
出発は5日後だ。
***
「ハルカちゃん、気をつけてね」
「変な人について行っちゃダメだよ」
「いくつなんだよ」
出国当日はゆうとゆうの両親が空港まで送ってくれた。
「ハルカ、気をつけて」
「うん、行ってきます」
ゆうたちに手を振って、1人で飛行機の待合フロアに進んでいく。
チケットを持つ手に力が入る。
1人で飛行機で海外って、大丈夫か私。ありがたいことに直通便で行けるから、乗れれば勝ち。ついたようなもんだ。
あっという間に飛行機への乗車が始まる。
窓際がいいかな、と思ったけど、トイレに行きたくなった時に行きやすいように通路側の席を取ってもらった。
ベトナムのハノイ空港まで約6時間のフライトだ。
ミヤコからのアドバイスで、着圧ソックスを履く。首用の枕に空気を入れ準備バッチリだ。もういつでも出発していい。
「準備いいのね。まだ若いのに、飛行機慣れているのね」
「え?あ、いやぁ。あはは」
隣の老夫婦に感心されてしまった。まさか1人で乗るのは初めてです、って言えない雰囲気になってしまったけど、優しそうな人たちで安心した。
キャビンアテンダントのみなさんのチェックが終わり、ベトナムへのフライトが無事始まった。
飛行機が離陸した時には思わず拍手をしそうになったけど、機内で拍手してるのが子供だけだったからやめた。
出発が10時、到着が16時くらいだけど、ベドナムは時差が2時間あるから14時か。
2時間だけどなんだか得した気分で嬉しい。
1本映画を見たあたりから眠気が出てきて少し眠ってしまった。
起きたらもう残り1時間を切っていた。
飛行機を降りればそこはもうベドナムなんだ、そう思うとワクワクとドキドキが止まらなくて残りの時間はあっという間だった。
***
無事入国手続きも済み、荷物を受け取る。
飛行機の中は日本人ばっかりだったけど、みんな荷物を受け取ると散り散りになってあたりはなんというか国際的な感じになってしまった。
誰が日本人かももうよくわからず、いろんな言語が飛び交っている。
そして暑い。湿気が強くてムアッとする暑さだ。日本とは違った種類の暑さであっという間にじんわりと額に汗が浮かぶ。
そして知らない匂いもたくさんする。
「ハルカーー!!」
少し離れたところから両親がこっちに向かってくるのが見えてホッとした。
「お疲れ様。疲れただろう」
「少し眠ったから大丈夫だよ」
「お腹空いてる?」
「うん」
「美味しいバインミーっていうサンドイッチのお店が近くにあるから食べようか」
久しぶりに会った両親。流石にもう1年も暮らしているから、安心してついていける。
タクシーに乗って出発する。
道中、バイクが多かったり、突然人が道を渡るからずっとドキドキしっぱなしだった。
バインミーは美味しかったけど、具がたくさん入っていて食べるのが難しい。こぼしてしまったソースをお母さんが拭いてくれて、なんだか赤ちゃんに戻ったみたいで恥ずかしくなった。
「今日はこの後どうするの?」
「移動で疲れただろうから家に帰ろうかな。3週間もあるし、急いで観光しなくていいでしょう」
「うん」
よかった。ベトナムに来たという興奮で疲れを忘れていたけど、移動が長くて疲れが出てきていた。
タクシーでそのまま家に帰る。
会社から援助されているとはいえ、コンパクトだけど結構立派な家で驚いた。
慣れない暑さをクーラーが和らげる。
「ベトナムってこんなに暑いんだね」
「今が一番暑い時期だよ。ベドナムは夏が長いんだ。去年は2人とも熱中症になりかけて大変だったよね、ママ」
「そうだよね。日本語のできるグエンくんに色々面倒見てもらったよね」
久しぶりの再会ということで、話が尽きない。お母さんが入れてくれた冷たい麦茶を飲んで、一瞬ここがベトナムだということを忘れてしまっていた。
寮で暮らすのも楽しいけど、やっぱり両親と一緒に過ごせる時間も大好きだ。
この3週間、思いっきり楽しもう。




