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10年ぶりに再会した幼馴染について誰かに説明したい  作者: Cani
ハルカ、高校二年生
95/113

右膝

 

「ゆう!」

 ハルカから後ろから俺を呼び、すぐに俺の右側を支えた。


「足痛むの?怪我したの?大丈夫??」

 心配そうなハルカの顔。そんな顔をさせたくなかったのに。

「古傷だから大丈夫だよ」

 そう、古傷だから。

 もう大丈夫だと思い込んでいた。体育祭もできたし。


 試合が続いて、少しずつあの痛みが顔を出していることには気がついていたけど、目をキラキラさせて俺を見るハルカの顔を見てずっとコートに立っていたかった。

 関にバレてしまった。これ以上はダメだ、なんて言われて離脱になってしまった。


 保健室になんとかついて、先生にベッドを借りる。

 ハルカに頼んで教室のカバンから鎮痛剤とテーピングを持ってきてもらった。


「自分でできるから大丈夫だよ」

「じゃ、じゃあ私水持ってくる!」

 ハルカは水を買ってきてくれた。膝にテーピングを巻き、鎮痛剤を内服する。

 これくらいの痛みなら、病院に行くほどじゃないかな・・・。


「ゆう、古傷ってなに?種目決めるとき、バスケ嫌がってたのと関係ある?私知らなくて、無理やり・・・ごめんね」

 ハルカが泣きそうな顔で俺に謝ってくる。

「ハルカのせいじゃない。俺がやりたかったから」

 そう、俺がやりたかったんだ。

 ずっとバスケから離れていたけど、今になってバスケをやっている俺をハルカに見せたくなったんだ。



 ***



「中西!1年でベンチ入りなんてスッゲー!」

「スタメン入りたかったよ」

「スタメンはしょうがないっしょ。先輩の目もあるし・・・」


 小学生の時からバスケを始めて、もちろん中学ではバスケ部に入部して。

 毎日毎日暇さえあれば練習して。

 きつかったけど、楽しかった。


「ゆう、スタメン入りおめでとう!!」

「お父さんたちはそんなに運動神経良くないのに、ゆうはすごいなぁ」


 先輩たちを差し置いて、スタメン入りをした時は気まずさよりも嬉しさの方が上だった。

 喜ぶ両親。自分が誇らしく感じて、これからの試合が楽しみで。

 もちろん俺をやっかんだ先輩もいたけど、試合での俺の活躍を見て、徐々に関係性は良くなっていった。

『ゆうちゃん、バスケすごいね!かっこいいね!怪我に気をつけて頑張ってね』

 ハルカの家からの年賀状もこっそり読んでた。俺の母親が勝手に俺のことを書いたみたいで、バスケをしていることもハルカに伝わっていた。

 少しの気恥ずかしさはあったが、ハルカに応援されていると思ったら頑張れた。

 成長期とも相まって、身長もどんどん伸びて、プレーにも余裕が出てきたように感じた。


「県大会優勝!次は地域大会だ!」

「今年のメンバーなら全国行けるんじゃね?」

 俺はスリーポイントシュートが得意で、試合で何本も決めてきた。MVPに選ばれて最高の気分だった。


「中西は今後どうするの?高校でもバスケするの?」

「スポーツ科のある学校に行ってバスケ続ける」

「さすが!」

 そしてその時の俺の夢はバスケの選手になって活躍することだった!きっとなれるって思ってた。このままバスケを続けて、努力すればきっと・・・。


 頭が真っ白になった。

「膝の前十字靭帯断裂ですね。手術しましょう。バスケの選手に戻るには、過酷な怪我です。1年はリハビリが必要だよ」


 中学3年生の県大会で怪我をした俺。リハビリで1年って。

 全国大会に行くはずだった。このメンバーならきっと行けた。でも俺が抜けたら?

 スポーツ科のある学校に進学するのは?怪我のある人間は合格できないんじゃないか?


 怪我を乗り越えて活躍している選手がいることも知っていた。

 でも、この怪我が原因で消えていった選手もたくさんいると知ってしまった。

 なんで俺が・・・なんで俺なんだよ・・・。

 これからだっていうのに。


 手術後の痛みやリハビリの辛さは相当なものだった。

 これが続くのに、頑張っても元のようなプレーはもうできないことが何より辛い。何を支えに頑張ればいいんだ。


 それから俺はバスケをやめた。中学最後の試合は見にも行けなかった。


 リハビリのおかげで走ることもできるようになった。きっとバスケもできるだろうなとは思ったけど、俺はしなかった。

 前の俺に戻ったわけじゃない。前のようなプレーができないことが分かっているから、それが辛かった。

 バスケはもうしない。

 そう思っていたけど、結局スポーツ科のある小早川学園に進学した。

 ハルカが日本に残るためにって、そんな理由はこじつけで。結局のところ諦めきれてなかったんじゃないかと思う。



 ***



「ハルカ、最近将来の夢聞いてきたよね」

「え?うん」

「俺、理学療法士になりたいんだ。リハビリは辛かったけど、頑張れたのは理学療法士の先生のおかげだから」

「そうなんだね」

 あーあ、ハルカに怪我がバレちゃったなぁ、なんて言いながらゆうはゴロンとベッドに横たわった。

 理学療法士か・・・。辛い経験をしたからこそ、きっといい先生になれるんじゃないかなと思ったけど、なんだか薄っぺらい言葉な気がして飲み込んだ。


 私はテーピングをしてあるゆうの右膝に手を置いた。

「痛む?」

「大分薬も効いてきて楽になってきた。なんかハルカにかっこ悪いところ見せちゃったな」

「ゆう」

「ん?」

「バスケ楽しめた?」

「うん。楽しかった。正直、すごい楽しかった」

「かっこよかったよ」

 ゆうは急に起き上がった。

「か、顔が近い・・・!」

「かっこよかった?」

「う、うん」

 ゆうはそのまま私に顔を近づける。え、え、何!?


「ストーーップ!!」

 カーテンの向こうから新太くんが飛び出してきた。新太くんの後ろには呆れた顔の馨くんとニヤニヤしているミヤコがいた。

「びっくりした!!」

「覗き見してるのバレバレ」

「えっ!ゆう気がついてたの!?」

 キスしちゃうような距離だったからドキドキしたのに、からかわれたのか!


「ゆうにそんな元気があるなら心配して損した!!」

 新太くんは私の腕をぐいっと引き、ぬいぐるみみたいに抱きしめた。

「あ、新太くん・・・!」

「新太は何やってんの」

「あんた汗臭いんだからやめなよ」

「わっ!!ハルカちゃんごめん!!勢いでつい・・・!」


「A組バスケ勝ったよ。関くんとか心配してた。戻る?」

「薬も効いてきたし、戻るか」

 ゆうはベッドから立ち上がった。少しよろけたところをしっかりと新太くんと馨くんで支えている。

「大丈夫だよ。ありがとな」

「無理すんなよ」

「ゆっくり行こう」


 歩き出した3人の後ろ姿を見て、いい友達に恵まれたなとしみじみと思った。


「あいつら、なんだかんだいい友情だよね」

「ね」


 3人を追いかけるように、私とミヤコも並んで体育館へ戻っていった。


 A組バスケは決勝戦で敗れたけど、スポーツ科相手に大健闘し大いに盛り上がった。

 試合には出なかったけど今までの活躍を見られていたゆうはスポーツ科の男子や女子からたくさん話しかけられてて、嬉しそうだった。


 私はというと、次の日背中の筋肉痛に悩まされ、ミヤコに湿布を貼ってもらいながら日頃の運動不足を痛感したのだった。



ブックマーク嬉しいです!!ブドウ食べます!!Cani.

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