報告会
カランとコップの氷が鳴る。
久々に部活が休みなミヤコと帰り道に喫茶店で寄り道している。
勉強合宿からここ最近の状況をミヤコに全部吐いた。と言うか吐かされた。
何も言わないミヤコを恐る恐る見ると、なんとも言えない表情をしていた。
「まずは、一つ確認ね」
「お、おす」
「今日中西は1人で帰ったの?」
「あ、ダッシュで帰ってました。1人で」
「よし。それでその後輩と帰ってたらぶん殴ってた」
「お、おす」
私といる時は私と帰って、いない時は梢ちゃんと帰るなんて器用なことをゆうがしていたら驚きだ。なんか漫画の浮気男みたいだ。別にゆうと付き合っているわけじゃないからどうだっていいと思えばどうだっていいんだけど。
「梢だっけ?その後輩もやるよねぇ。肝座ってるっていうか。普通先輩を利用してお近づきになろうとする?」
「利用って、そんなんじゃないよ」
「いーや、結構あざといことしてるよ。だってそんな度胸あるなら1人で帰れるでしょ?しかもハルカとまともに話したのなんてついこの間っぽいのに、自分に協力してほしいって言えるその根性よ。やばいね」
確かに私には無い積極性かも。
「中西もさぁ、もっとガツンと言わないとダメでしょ。里中との時も思ったけど中西は意外に女に甘いと思う」
「確かに・・・!」
「で、ハルカ」
「はい」
「川上と中西と、どっちがドキドキしたの?抱きしめられて」
「え、えーっと」
ミヤコは本当にストレートに聞いてくるからドギマギしてしまう。
「か、馨くん、かな・・・?」
口に出してしまうと恥ずかしくなってしまって、私は目の前のおしぼりで意味もなく手を何度も拭いた。
「ちょっとハルカ照れないでよ。私まで恥ずかしくなってきた」
「ごめん」
「馨くんにドキドキしているのに、ゆうと梢ちゃんのことが気になるのってなんかズルくない?」
「どうしてそう思うの?」
「なんか、どっちかにしろって思わない?」
「思わない!」
勢いよくミヤコが言うもんだから、ビクッと驚いて肩が動いてしまった。
「ハルカ、それはそれ、これはこれって感じだよ。別に何思っても自由だから!」
「ミヤコ・・・」
「気になる同級生、自分を振り回す幼馴染、いいじゃんいいじゃん。漫画じゃん。高垣が一切入ってこないのが笑える」
「ミヤコ、ちょっと楽しんでる?」
「あったりまえでしょ!こんな楽しいことないよ、恋バナ最高だよ」
テンションの上がっているミヤコは特盛パンケーキを追加で頼んでいた。その細い体のどこに入るんだ・・・。
***
『今日は一緒に帰りたいんですけど』
『ごめんね、今日は帰りに用事があるから無理なんだ』
ダメだ、返信できない。
私は打ち込んだ内容を削除しようと手をかけた。
「ほら」
「あっ!!」
横からにゅっと手が伸びて、送信ボタンを代わりに押してしまった。
横を見るとゆうだった。
「あーー!!なんてことするのよ!」
「ハルカが送りにくそうにしてたから」
「当たり前でしょ!って言うかゆうがちゃんとしないから私の方に連絡がくるんだよ」
「連絡先を交換したのが運の尽きってやつだと思う」
た、確かに軽率だったかもしれない。でも先輩・後輩として少しは仲良くなれるかなって思うじゃん。
『一緒に帰れる日教えてください。もちろんゆう先輩もいる日で』
すぐに梢ちゃんから返事がきた。
「はぁ」
私は机に突っ伏した。
「ハルカちゃん、今日は僕と帰ろうよ」
「馨くん」
「だめ。ハルカは俺と帰るの」
「ゆうはその後輩の子どうにかしてからにしなよ。ハルカちゃんがこうなってるのってゆうのせいでもあるんだから」
「俺は言ったよ」
「足りないんだよ」
馨くんは萎れている私の頭をよしよしと撫でる。ああ、馨くんって本当に優しい。
「触るな」
「いたっ」
ゆうは馨くんの腕をはたこうと思ったのだろう。馨くんに華麗に避けられて私の頭に腕が当たる。
「ゆうのばか」
「・・・ごめん」
結局梢ちゃんに返信ができないまま、昼食の時間になってしまった。




