ちゃんと手懐けてよ
「ハルカ、帰ろう」
「あ、うん」
合宿が終わって、本当にゆうは私と一緒に帰るようになった。
でもホームルームが終わってすぐに、言うならば逃げるように帰っていくことに私はなんとも言えない感情を抱いていた。
なんか、梢ちゃんのこと避けているみたい・・・。
「あ、先輩!」
「あ」
玄関で靴を履いていると聞き覚えのある声がした。振り向くと梢ちゃんがいた。
「もー!探したんですよ!先に帰ろうとするなんてひっどーい!」
「別に梢と一緒に帰る約束なんてしてないでしょ」
私はじろりとゆうをみた。なんて言い方するんだ!
「今まで一緒に帰っていたのに、最近全然一緒に帰ってくれないのどうしてですか?」
梢ちゃんは悲しそうな表情でゆうを見る。だよね、急にそんなこと言われても困るよね。
「俺もう梢のこと送れない。俺のタイミングで帰るから。怖いなら他の奴に頼んで。友達とか」
「だってまだ5月でそこまで仲良い友達いないんですもん・・・」
わかるー!まだ絶妙な距離感なんだろうな。
「それは俺が頑張ることじゃないから。ハルカ、いくぞ」
「あ・・・」
ゆうは靴を履いて先に行ってしまった。
おい、私はどうしたらいいんだ。
梢ちゃんは今にも泣きそうな顔をしている。
「せ、先輩。なんで梢は一緒に帰っちゃダメなんですか・・・?」
「い、いや、だめっていうか。今までがたまたまっていうか」
いや、無理でしょ!私が梢ちゃんに説明するのっておかしいでしょ!!
ゆうは遥か先にいいる。今すぐ戻ってこい。ゆう!!
「さっきから聞いてりゃ呆れるわ。あんた自分が邪魔者だってなんで分かんないわけ?素直に引きなさいよ」
「この声は・・・」
気がつけば横に結衣ちゃんがいた。久しぶりに姿を見たけどお変わりないようで。
今とんでもない爆弾を梢ちゃんにぶん投げた結衣ちゃん。あなた素直に引いたことありましたっけ?あれ?記憶にないような・・・。
そして泣きそうな梢ちゃんに私は挟まれ、しどろもどろしていた。
「梢は邪魔者なんですか!?ひ、ひどい!」
「い、いや!邪魔者じゃない、大丈夫!今日は一緒に帰ろう」
「あんたって本当バカでお人好し」
後輩に振り回されてるようじゃだめね、と結衣ちゃんは靴を履き替えて帰っていった。
「あの先輩怖すぎです・・・」
「だね」
靴を履き替えた私たちは2人で歩き出した。
梢ちゃんとは話したことがほとんどなかっただけで、普通にいい子だった。連絡先まで交換してしまった。
ゆうは校門の所で待っていたようだったけど、2人で来た私たちを見て、ひどく驚いていた。
あんたが私を置いていった結果だからね、これ!
梢ちゃんを寮の前まで送り、ゆうと2人きりになった。
「俺と2人が良かったんじゃないの?」
ゆうの言葉を聞いて、私はゆうのお尻をペチンと叩いた。
「いって!!」
痛がっていたけど知らない。これくらいは今日の私許されると思う。
***
まぁ薄々感じてはいたけど・・・。
『ゆう先輩の好きな食べ物ってなんですか?』
『ゆう先輩の好きな色ってなんですか?』
『ゆう先輩の』
『ゆう先輩の』
私は梢ちゃんからひっきりなしに届くゆうについてのアンケートメール(そう呼ぶことにした)に辟易しそっとケータイを裏返した。
あー、これは大変だ。お願いだから本人に聞いてほしい。
梢ちゃんはゆうのことが好き、これはもう確定。
あるよね、危険から救ってくれた人のこと好きになっちゃうの。わかるわかる。私も石井先輩好きだったから。
『後輩に振り回されてるようじゃだめね』
結衣ちゃんの顔が思い浮かぶ。どうせならどうしたら振り回されないのかまで言って行って欲しかった。
でも私は仮にも先輩に当たる人物だ、別に普通に伝えればいいだけだ。
「ご、め、ん、だ、け、ど、じ、ぶ、ん、で、き、い、て、ね、と。送信!」
すぐに返信がきた。最近の子って本当返信が早い。
「え」
『ハルカ先輩はゆう先輩のこと好きなんですか?っていうか付き合っていたりしますか?』
ゆうのことが好きか?付き合っているかって?
付き合ってないよ、好きじゃないよ。そう返信するのは簡単だったけど。
私はケータイを持ったまま止まってしまった。なんでそんなことをこのタイミング聞いてくるのか分からなかったからだ。
続けて梢ちゃんからメールが来た。
恐る恐る開く。
『なんとも思っていないなら、梢はゆう先輩のことが好きなので色々協力してくれませんか?』
私は震える手で文字を打ち込み、梢ちゃんに返信してすぐにケータイの電源を切った。
はぁ、とため息が漏れた。
『そういうのは自分で頑張ってね』
ちゃんとそう送った。結衣ちゃん、私だってやればできる!
後輩に振り回されたりしていません!




