最終日
「ハルカちゃんおはよ」
「お、おはよっ」
「体調崩してない?」
「うん、大丈夫」
「2人してなになに〜!?」
今日で合宿最終日。田中さんと一緒に講堂に向かっていると馨くんとゆうに出くわした。
「昨日2人で雨に降られちゃって」
「へぇ、2人で」
「そう2人でね」
ゆうの目が鋭くなっている。そして田中さんはニヤニヤしている、な、何?なんか勘違いしてない?
「べ、別に花火しただけだよ」
「あんなにいっぱい人がいたのに?」
「たまたまだって!」
「え、僕はハルカちゃんとしたくて声かけたけど」
「えっ」
「あはは、中川さん真っ赤」
「か、からかわないで・・・!」
講堂に入り座席に座る。私は顔が熱くてパタパタと手で仰いだ。
「ねぇ、本当に何もなかったの?」
「何にもないって。2人で線香花火して」
立ち上がったらふらついて馨くんに抱き留めてもらいました。なんて言えなくて私は口をつぐんでしまった。
「なるほど、言えない何かはあったってことね」
「田中さんっ!」
田中さんの楽しんでいる表情が目に入る。
「いいじゃんいいじゃん。私たち女子高生なんだから青春しようよ、ときめこうよ、いっぱい恋しようよ」
「田中さんはいないの?好きな人」
「私?私彼氏いるよー」
「え!!!」
「ちょ、声大きい!」
田中さんから感じる大人っぽさというか、余裕な感じは彼氏がいるからか!
「誰なの?」
「お店でバイトしている大学生」
「大学生と付き合ってるの!?」
「えへへ」
田中さんの幸せそうな表情を見て色々聞きたいことはあったけど、先生の話が始まってしまって聞くことはできなかった。
田中さん付き合っている人がいるんだぁ。当たり前だけど両思いってことだよね。
急に石井先輩のことが頭に浮かんでしまった。振られてしまったけどもう胸はちくりとはしない。
先輩シンガポールでどうしてるかなぁ。
もし先輩と両思いだったら今頃どうなってたんだろう。超遠距離だし、って私何考えてるんだ。終わったこと終わったこと。って言うか振られたから始まってもなかったし。
でも好きな人と両思いってすごい幸せなことなんだろうなぁ。
ふと馨くんの方を見てしまっていた。ごく自然に、たまたま。
合宿中にあったことを思い返すと何度でも顔に熱が集まってしまう。
また私が見つめすぎてしまったのか、馨くんが急に私の方を見たので目が合ってしまった。
馨くんは私と目が合うと微笑んで小さく手を振ってくれたが、私は見ていたのがバレてしまったことに動揺してしまってすぐに目を逸らして下を向いてしまった。
な、なんで今私は馨くんを見ていたんだろう。
***
天気はすっかり回復し眩しい日差しが差していた。
午前中の学習を終えた私たちはバスに乗り込んだ。
「ハルカ」
「うわっ」
急に手を引かれ座ったのはゆうの上だった。
「重い」
「ごめんってゆうが引っ張るからでしょ」
私は立ち上がってどこに座ろうかとキョロキョロした。
「ほら」
ゆうは座席を一つ詰め、空けた座席をぽんぽんとたたいた。そこに座れということか。
私のせいで後続の流れが滞ってしまっていることに気がつき慌ててゆうの隣に腰を下ろした。
「あー!帰りこそって思ったのに!」
「早い者勝ちだろ」
後から乗ってきた新太くんと馨くんは席が離れてしまった。
「あー流石に勉強ばっかりで疲れたね」
「俺に寄りかかって寝ていいよ」
行きのバスで馨くんに寄りかかって眠ってしまったことを思い出した。え、私この合宿で馨くんにやらかしすぎてはいませんか?
「いいよ、いいよ!大丈夫」
「ちっ」
「舌打ちしないの」
バスが出発した。この3日は最近で一番頭を使ったと思う。中間テストに活かせるといいな。
海がどんどん離れていく。今日はあったかいし、足だけつけたら気持ちよかっただろうな。
ずしりと急に肩が重くなって、横を見るとゆうが私の肩に寄りかかって寝ていた。
「自分が寝てるじゃん」
ゆうは背が高いから私に寄りかかると首が辛そうだ。
私はなんとか高さを合わせようと、カバンからタオルを取り出して畳んでみる。ゆっくりとゆうの頭を持ち上げて枕のように畳んだタオルを差し込んだ。
ちょっと高さを稼げたようだった。よかった。
謎の達成感に包まれゆうの顔を覗き込むと、口元が笑っていた。
「ねぇ、起きてるの」
「バレたか」
「重いから離れてよ」
「せっかく頑張ってハルカが枕作ってくれたんだから、使わないと。それに合宿中馨ばっかりいい思いしてたんだから帰りくらい俺に優しくして」
「もー!」
***
「馨、俺もあそこに行きたい」
「僕が寄りかかってあげようか?」
「なんでだよ!」
「目瞑ったら一緒なんじゃない?」
「そ、それもそうか。じゃあ気分だけでも」
「気持ちわる」
「なんでだよ!!」




