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10年ぶりに再会した幼馴染について誰かに説明したい  作者: Cani
ハルカ、高校二年生
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線香花火は心を写す

 

「おはよう」

「おはよ」

 みんなで並んで歯ブラシをしたり洗顔する。なんだか不思議な感じだ。

「私、朝ごはんをとりに行ってくるから待ってて」

「ありがとう」

 朝は時間がずらせないからお弁当だ。

 私は先に洗面が終わったので、食堂に田中さんの分も合わせてお弁当を取りに行ってきた。


「ハルカ、おはよう」

「おはよう」

 食堂近くでゆうに出会った。ゆうは袋を3つも抱えていた。

「すごい大荷物だけど大丈夫?」

「馨が起きないから今新太に起こしてもらってる」

「なるほど」

 去年のキャンプの時、なかなか起きなかった馨くんを思い出した。

 今日は8時30分には講堂に集合だから間に合うといいけど。


 部屋で食事を取った後、講堂に移動した。新太くんは寝癖がついていたし、やっぱり馨くんは髪の毛が濡れていた。

 心なしか新太くんとゆうがげっそりしているのは気のせいではないと思う。


 ***


 午前中の学習の時間が終わり、昼休みとなった。

 田中さんと一緒に食堂に向かう。今日は唐揚げ定食だ。やった。


「ここ空いてる?」

「あ、田中さんいい?」

「もちろん」

 馨くんがやってきて私の隣に座った。

 別にこれといって何って訳じゃないんだけど、やっぱり馨くんと2人っきりになるにはまだ昨日の例のこと(自販機の前で、その、抱きしめられたっていう例のやつ)が消化しきれていないから、若干気恥ずかしさみたいなものがあった。

 田中さんがいてくれてよかったなぁ、なんて思いながら味噌汁のお椀に口をつけた。


「本当、中川さんのこと大好きなのね」

「まあね」

「えっ」

 驚いた声を出したのは私で、田中さんと馨くんは至って涼しい表情をしていた。

 味噌汁を飲む前でよかった。

 びっくりして吹き出すかもしれなかった。


「仲良くていいねってことだよ」

「あ、そうだね!馨くんとは委員会も一緒だし!」

「田中さん、どうせなら最後まで背中押してよ」

 田中さんはニヤニヤしながらコップの水を一口飲んだ。

「あ、そーだ。今日この後雨止むらしいよ」

「そうなの?やったー!」

 今日は楽しみなことがあるから、みんな朝から一生懸命課題に取り組んでいたのだ。


 ジューっという音と共に吹き出す火花。緑、青と色が代わっていく。

 課題が終わる頃には雨も止んでいた。

 今日のみんなの楽しみは花火だ。って言っても1人数本ずつだからすぐに終わるけど。

「ハルカちゃん、これやろう」

「線香花火だ!」

 数人ずつ適当に蝋燭の近くに分けられる。私は馨くんと一緒だった。

 手持ちの花火が終わってしまった、と思っていたら馨くんが線香花火を持って来てくれた。

 終わった人から戻っているため、人もまばらになってきた。

「最後のやつは片付け手伝えよー」

 先生のその一言でみんな急いで花火に火をつけていた。私は片付け係になってもいいやと思って蝋燭から少し離れたところに移動した。

 馨くんも同じ考えだったようで、みんなに蝋燭の火を譲っていた。


「最後になっちゃったね」

「僕も。でもハルカちゃんと一緒に花火ができるの嬉しいな」

「え、えへへ」

 馨くんのストレートな言葉になんだか恥ずかしくなってしまって、私は急いで線香花火に火をつけた。

 小さな音と共に、小さな火花が火の玉の周りを踊り出す。

 繊細なシルエットにうっとりとする。ふと視線を上にあげると、馨くんも線香花火を見つめていた。

 馨くんの瞳に線香花火の火花が映っており、それがとても綺麗でつい見入ってしまった。


「そんなに見られると流石に照れちゃうな。僕のこと、少しは意識してくれているって思っていいの?」

「え?あっ!」

 ジュ、と私の線香花火の火の玉が地面に落ちていった。馨くんの質問に動揺していますって言っているようなもんだった。

 意識していないわけない。でもなんて言ったらいいの?

「あはは、ハルカちゃんが僕のこと少なからず意識してくれてるって分かったよ」

 そんなことを言うもんだから、私は俯いてしまい顔を上げることができなかった。

 さっきまで不躾に馨くんの顔を見まくっていたくせに、私は恥ずかしくて馨くんの顔が見れないのだ。

「お、じゃあお前らはこのバケツを持って行ってくれ」

「はい!」

 丁度いいタイミングで先生が声をかけた。

 私はこの気恥ずかしい時間を打破するため、勢いよく立ち上がった。

 俯いていた人間が急に立ち上がるとどうなるか。

 私は急にくらっと来てしまい、大きくバランスを崩してしまった。

 膝から地面に崩れ落ちる…!覚悟した衝撃が私の体を襲うことはなく、代わりに暖かいものに体が包まれた。

「ハルカちゃん大丈夫?気分悪い?」

 一瞬のことだったのに馨くんが私の体をしっかりと支えて、というか抱えてくれていた。

「ご、ごめん!もう大丈夫だよ」

「急に立ったから貧血みたいになっちゃったんだね」

 馨くんはゆっくりと私の体を離し大丈夫なことを確認した。


「あ」

 また雨が降ってきた。あっという間に雨足は強くなり、どんどん体を冷やしていった。

「僕がバケツ持つからすぐ行こう」

 馨くんはバケツを2つ持ち玄関の方へ急いだ。私は馨くんの後ろをついていく形になったけど、馨くんは何度も後ろを振り向いて、私がちゃんとついてきているか見てくれた。


「結構濡れちゃったね」

 無事室内に戻ってくる。雨で髪の毛も洋服もビチャビチャだ。

 馨くんは私の顔にへばりついている髪の毛を掬って耳にかけてくれた。

 どうしてだろう。馨くんも同じ条件のはずなのに水も滴るいい男的な感じになっている。

「この後お風呂でよかった」

「う、うん」

「ゆっくりあったまってね。じゃあハルカちゃんおやすみ」

「おやすみ」

 廊下で別れて、私は急いでお風呂へ向かう。


「やっと来たのね、って顔真っ赤じゃん!髪の毛も濡れてるし風邪!?」

 田中さんはのんびり湯船に浸かっていた。

 鏡を見ると、私の顔は耳まで真っ赤で髪の毛もビチャビチャで。

 こんな姿で馨くんの前にいたのかと思うと恥ずかしくて、恥ずかしいとかってやっぱり馨くんのこと意識しまくってるじゃんとか思っちゃって。

 まだお湯になりきれないシャワーを頭から被って、私は一生懸命邪念を消そうとするのだった。





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