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10年ぶりに再会した幼馴染について誰かに説明したい  作者: Cani
ハルカ、高校二年生
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長湯厳禁

 

「あ〜っ!極楽極楽〜」

 温泉に浸かりながら田中さんが伸びをした。

 あの後ゆうからカップラーメンを受け取り、部屋で待っていてくれた田中さんと一緒にお風呂へ向かった。

 大浴場という名に恥じぬ広い湯船に浸かる。

 温度はややぬるめでゆっくりと楽しめそうだ。


「みんなはスタイル良くていいな」

 湯船に浸かりながら、扉を開けて入ってきた女子を見て私が言った。

 ジロジロ見ちゃってごめんなさい。でもみんな本当にスタイルがいいのだ。本当に同い年だろうか。

 田中さんなんて出るとこ出てて締まっているところは締まっている。そして背も高いから足も長い。

 とろりとした泉質のお湯が肌に絡みつく。

 私は肩まで温泉に浸かって、温泉成分が浸透するようにお湯の中で腕を撫でた。

「温泉だからかお肌がすべすべになった気がする」

「なーに言ってんの。中川さん元々お肌すべすべでしょ。ほら!触らせなさいよ〜」

「あはは!ちょ、くすぐったいよ!やめてー!」

 田中さんは私の腕を撫でてきて、くすぐったすぎて私は大きな声で笑ってしまった。

「何々〜!?何やってんの?」

 同じ時間帯にお風呂の時間を迎えた女子たちが私の笑い声につられて集まってきてしまった。


「中川さんのお肌がすべすべっていう話よ」

「おっどれどれ触らして!」

「ダメダメってあはは!!」

 私は負けじと近くにいた女子にお風呂のお湯をかけた。

「わっ!やったわねー!!」

 そこからはご想像の通りです。みんなでジャバジャバお湯をかけっこして。

 いくら温めのお湯といってもお湯の中で暴れ回ったら流石にクラクラとのぼせ上がってしまった。

「中川さん顔真っ赤!」

「だってみんなでいじめるから・・・!」

「あはは」

 なんだかみんなで仲良くなった気がする。


「じょ、女子風呂で一体何が・・・!」

「楽しそうだね」

 隣の男子風呂の皆さんは、静かに私たちの会話に耳を傾けていたのだった。

 会話が筒抜けだったことを知るのはもう少しだけ後。


「中川さんドライヤー使う?」

「ありがとう、でも後で部屋でするから大丈夫!」

 ドライヤーをしたかったけど、上せてしまったからか一刻も早く外の空気を吸いたかった。

 私は濡れた髪の毛をまとめ、田中さんに声をかけて脱衣所をでた。


 ***


「あー気持ちいい」

 脱衣所から出るとムワッとした湿気もなくて過ごしやすかった。

 喉が渇いた。もう少しで自販機だからとなんとか移動したが、お財布を持ってきていなかったことにやっと気がついた。

 悲しい。私は力なく自販機の前の椅子に座る。なんだかどっと疲れてしまった。


 ぼんやり自販機を見る。

 ここで今日馨くんに抱きしめられたんだ。思い出すとまた顔に熱が集まり、馨くんに触れられた肩まで熱を持っているようだった。

 そういえば、本当にたまたまだったけど1年生の委員会活動中に手が触れただけで、馨くんのことを避けてしまうくらい意識しまくってしまったことがあった。あの時は男子と触れ合ったことなんてなかったから勝手にときめいただけだと思ってた。

 まだ馨くんのこともよく分からなかったし、人見知り的なドキドキだったのかなって。

 じゃあ今ドキドキしているのは一体・・・?

 私だって流石に思春期の女子高生だ。同級生の男子に抱きしめられるなんて、ゆるキャラに興奮して抱き着く的な意味じゃないなんてことは想像がつく。

 馨くんってひょっとして私のこと?いやいや、自惚れるなハルカよ。あーミヤコに相談したい、なんで合宿来てないの。

 いや、待てよ。馨くんはあの時ゆうが来ることが分かっていたみたいな反応だった。

 だからわざとああいうことをしたのかな?

 まぁ、私を抱きしめることでどうしてゆうとの仲直りに繋がるのかはよく分からないけど。

「あーあーあー」

 私は椅子にごろんと寝転がってタオルを顔に載せて目を閉じた。喉はカラカラだ。10秒だけこうして部屋に早く戻ろう。

 イーチ、ニー。


 急に視界が眩しくなる。慌てて目を開けると心配そうな顔の新太くんがいた。

「びっくりした!」

「俺がびっくりしたよ!倒れてるのかと思った」

「半分くらい倒れてる」

「ええ!言われてみれば顔赤いね。上せた?」

「多分ね」

 新太くんはくるっと振り返って自販機に向かった。

 ガコンガコンと音がする。


「はい」

「えっ」

 新太くんがリンゴジュースを手に持って戻ってきた。2本の内1本を私に渡す。

「かんぱーい!」

 受け取ったままの私の缶に新太くんのリンゴジュースの缶を当てる。コン!といい音。

「喉乾いたでしょ?一緒に飲もう」

 ほら早く飲んじゃいな、そう言って新太くんは私が持っているリンゴジュースを開けてくれた。

「飲んでいいの?」

「うん!奢ってあげる」

「新太くん・・・!」

 なんだか眩しい。後光ってやつか。

 自分の喉がゴクリと鳴った。ありがたくいただこう。

 リンゴジュースを飲む私を新太くんは優しい表情で見守ってくれたのだった。


「本当にありがとう!生き返った!」

「よかったー!もう湯船でお湯のかけっことかしちゃダメだよ!でも俺ハルカちゃんもスタイルいいと思うなぁ」

「え、なんでその話したこと知ってるの?」

「あ、やべ」

 こうして私は女子風呂の会話が男子風呂に筒抜けだったことを知るのであった。


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