こんにちは、俺はラッキー高垣です
「ハルカちゃんっ」
玄関に急いで向かう私の腕を掴んだのは新太くんだった。
「あ、新太くん」
「そんなに急いでどうしたの?って、ご、ごめん!何にも言わずに腕掴んじゃった」
「別に急いでるわけじゃないんだけど・・・」
嘘だ。実は急いでた。梢ちゃんと仲良さそうに話すゆうの姿を見たくなかったのだ。
「桐原さんとゆうは?」
「梢ちゃんがゆうに相談したいことがあるって言ってて」
「先に帰れって?ハルカちゃん1人で?」
新太くんが少し誤解をしていそうで、慌てて修正した。一緒に帰ってくれる?と尋ねると新太くんはもちろん、とすぐに答えてくれた。
帰りにコンビニに寄って新太くんはアイスを奢ってくれた。新太くんは話すのに夢中でアイスで手がベトベトになっていた。
「わ、このアイスすぐ溶ける!あーズボンに垂れた、俺カッコ悪いね、恥ずかし」
慌てている新太くんがなんだかおかしくて、悪いと思いながらも私はちょっと笑ってしまった。
「あ、ハルカちゃん笑った。ラッキー」
そんな私を見て、新太くんはとびっきりの笑顔を返してくれるのだった。
***
そろそろゆうのA組に行くかと準備をしていたら、教室の前をハルカちゃんが小走りで通り過ぎて行った。
なんだかよくわかんないけど、ハルカちゃんが少し悲しそうに見えて慌てて追いかけて、そして勝手に腕を掴んでしまった。
ハルカちゃんの腕は細くって、でも暖かくて柔らかかった。俺、よく掴んだ。グッジョブ。
俺もてっきりハルカちゃんとゆうと桐原さんと一緒に帰るもんだと思っていたから、ハルカちゃんを1人で帰らそうとしているゆうに心の中で少し怒ってしまった。
人見知りだから緊張するけど頑張る、昼休みにそう言っていたハルカちゃん。後輩ができるかもとちょっとワクワクしていたの、俺分かってたよ。結局一緒に帰れなくて残念に思ったのかな?
桐原さん、可愛い1年生だ。あの事件で怖い思いもしてかわいそうだ。ゆうを頼りにするのも分かるし、ゆうも後輩をしっかり守ってほしいけど、ハルカちゃんだって散々怖い思いをしたんだからほったらかしはダメだろう。
って、俺なんでハルカちゃんのことをゆう頼みにしてるんだ。
好きな子くらい、自分で守れなくてどうする。
幸い、いつも邪魔をしてくる馨は今はいない。2人っきりで帰るなんて今までになかったチャンスじゃないか。
勝手に理想の帰り道デートを始めてみることにした。
「バニラ系も好きなんだけど、暑い日はシャーベット系が好きかな」
「俺も俺も」
コンビニでアイスを選ぶ、どれにしようと中々選べないハルカちゃんが可愛いかった。
2種類で悩んでいたから、ハルカちゃんが選ばなかったやつを俺が選んだ。ひょっとしたら『ひと口ちょうだい』アンド『あーん』のダブルコンボチャンスがあるかもしれないと思うとお会計をしている顔が緩みきってしまった。
アイスくらい俺が払うよ、と言った俺にハルカちゃんは最後まで小銭を握らせようとしてきた。
「だめ!同い年なんだし、奢ってもらうわけには!!」
「いーの!俺が一緒に食べたいの!」
ハルカちゃんは一生懸命グーにしている俺の手を開かせようと手に触っている。
もう一度言わせてくれ、ハルカちゃんが俺の手を触っているんだ。俺に触れている!!!
馨とゆうに、なんならもういないけど石井先輩に見せてやりたい。どうだ。
「今度は私が出すからね。ありがとう」
ハルカちゃんが折れてくれたことで、このふれあいタイムは終わってしまったけど次はハルカちゃんが奢ってくれるらしい。っていうことは次があるってことで、っていうことはまた2人きりになれるってことで。
ゆう、桐原さんと帰ってくれてありがとう。馨、どっか行っててくれてありがとう。
今いない2人の親友に俺は心から感謝したのだった。
ハルカちゃんと話すのに夢中になってアイスを食べていなかった俺はまんまと手がベタベタになってハルカちゃんに笑われてしまった。
『ひと口ちょうだい』も『あーん』もなかったけど、ハルカちゃんの笑顔を見ただけで、俺の胸はいっぱいになるのだった。
「新太くん、今日はありがとう。とっても帰り道が楽しかった」
「俺のほうこそ!また一緒に帰ろうね」
「うん!」
ハルカちゃんを部屋まで送って(ドアの隙間から見えた部屋は女子って感じでめっちゃ可愛かった。しかもちょっといい匂いした気がする。)また一緒に帰ろうって言えた。結構自然に言えたと思う。
ハルカちゃんと別れた後、ケータイを見てみると馨からめちゃくちゃに連絡が来ていた。
こっそりメールを開くと、ハルカちゃんと2人きりで帰っているのが普通にバレていて普通に怖かった。
馨は勘が良すぎる。
とりあえず見なかったことにしよう。俺は静かにケータイを閉じてポケットにしまった。




