暖かくなると不審者って増えるっていうよね?
ホームルームももう終わる。
先生が大事な話だと言って切り出した。
「直接的な被害は出ていないが、最近寮の近くに不審者と思われる人物がでると報告が上がっている。フードをかぶって寮の周りをウロウロとしているらしい。警察もパトロールを強化してくれると言うことだったが、下校が遅くなる場合は特に気をつけるように。できれば1人で帰るなよ。以上だ」
先生の話を聞いてクラスメイトたちがざわめく。
ホームルームが終わると、早速一緒に帰らない?なんて会話が聞こえてきた。
不審者だなんて、怖いなぁ。寮の周りをウロウロって泥棒とかかな?
「ハルカちゃん、委員会の時は僕と絶対一緒に帰ろうね」
馨くんはすぐにそう言ってくれた。元々委員会の日は馨くんが寮の前まで一緒に帰ってくれていたけど、改めてそう言ってくれると頼もしかった。
「俺とは毎日一緒に帰ろうね」
うわ、と声が出た。なぜなら急にゆうが私の後ろから寄りかかりながらそう言ってくるもんだから驚いた。
「ハルカは弱っちいから心配」
「もーゆう重たいよ、離れて」
ゆうは相変わらず変な距離感で。こうぐいぐいくる感じだ。
スキンシップも多くて時々ドキッとする。
「ちょっと、ハルカちゃんにベタベタしないでよ」
「悔しかったら馨もやれば?」
ほらほらとゆうは私の頭を撫でてくる。やめてよと言ってもゆうはやめずにいる。ちょ、ほらもう髪の毛ぐちゃぐちゃになってきた。
「もーやめてってば!」
私はゆうから思いっきり距離をとった。前髪に乱れた後ろ髪が混ざり視界が悪い。
「ゆうって大人っぽいところがあるように思われるかもしれないけど、本当こういうところ子供っぽいよね」
馨くんはそう言うと私の乱れた髪の毛を直してくれた。
「わっ」
急に腕を引かれた。またあなたですか、ゆうさんよ。
なんだか人形みたいな気分だ。
「ハルカに触んな」
「自分がやればって言ったんじゃん」
その通り、と思った。そう、あなた悔しかったらお前もやれば的なこと言ってたよね。
「もう帰ろうよ」
私はゆうの腕を振り払って先に歩き出した。
「腕、振り払われた・・・」
「強引な男は嫌われるよ。僕は紳士的なの」
「うるせ」
ああだこうだ言いながら3人で仲良く並んで帰る。
「帰って家のドアを開ける前に左右を見て不審な人間がいないか確認するんだよ。そしてドアを開けたらすぐに部屋に入って鍵をする!」
「はい!」
「俺が部屋の前まで一緒に行くから平気」
「毎回じゃないかもしれないでしょ」
結局この日は部屋の前まで馨くんとゆうがついてきた。2人とも大袈裟な気がするし、一応男子禁止のフロアだからそんなに堂々とされているとこちらが困る。
2人にお礼を言ってさっさと部屋に入った。
部屋が少し埃っぽくて、換気しようと窓を開ける。
「え」
少し離れた位置にある寮、ミヤコの住んでいる寮の近くを行ったり来たりしている、怪しすぎる人が目に入ってしまった。
青いウィンドブレーカーを着ている、体格的に男の人だろうか。でも寮の中には入ろうとしない。
いなくなったと思ったら、少しするとまた戻ってくる。
何をやってるんだろうとじっと見ていると、男が急に振り向き、私の方を見た。距離がある分男の表情はわからない。私はなんとか平静を装いながら窓を静かに閉めた。
え、こう言う時って学校に連絡したらいいの?それともケーサツ?
でも不審者じゃなかったら?いや、今のところ不審者っぽい気がするけどどうなの?
もうお日様は沈んでいたけれど、タオルを干すふりをしながらもう一度窓を開けた。でも、男はもういなくなっていた。
ミヤコに急いでメールする。だいぶ前に寮に着いているらしくホッとした。
明日先生に伝えてみよう。
夜ベッドに入り目を瞑るが、青いウィンドブレーカーが頭をよぎって中々眠ることができなかった。




