高垣くんis良いやつ
入学してから数日経ち、未だに友達と自信を持って言えるのは高垣くんとゆうくらい。
さすがに挨拶くらいは他のクラスメイトとするけど、たわいもない(例えば次の授業が面倒くさいとか、体育だるいとかそういった類の)会話をするほどでもない。
ただ変化もあった。
「ゆう、おはよう」
「はよ、ハルカ」
ゆうがちゃんと朝の挨拶をしてくれるようになったのだ。進歩進歩。
高垣くんとは席が遠いためあまり交流はないが、授業中たまに目が合ったりする。
私はどうしたらよいのかよくわからないけど、高垣くんはいつも目が合うとにっこりしてくれるから、つられて私もにへら、と笑ってしまうのだ。
「ハルカ、食堂」
「あ、うん」
あとは決まって昼食はゆうと2人で食べるようになった。
いつもデザートはゆうに取られているけど。
「あ、お財布忘れた」
「バカだな。何食べるんだよ」
「取ってくるからいいよ」
「今日はおごるから明日おごれよ。取りにいくと時間なくなる」
あきれたようにゆうは言うけど、まだ昼休みはたっぷりあるんですけど・・・。
「時間あるから取りに行ってくる!先食べてて!」
「あ!おい!・・・ったく。2人でいる時間がなくなるだろうが」
***
カバンから速やかに財布を出して、食堂に戻ろうとする。
「中川さん!食堂??」
高垣くんに呼び止められる。
「うん!これから行くところ!」
「俺も食堂!一緒にいこうよ」
高垣くんと一緒に食堂に向かう。早く出来そうなうどんにしてみた。何より安い。280円でわかめ入り。デザートはついてない。
「先にゆうが食べてるんだ」
高垣くんとゆうが待っているテーブルへ急ぐ。
「なんで高垣が??」
「食堂だっていうから一緒に来たんだ」
「ふーん」
ゆうがなんだか不機嫌そう。
私の席はゆうの財布が置いてあった。場所取りしてくれていたみたい。財布っていうところが若干平和ボケしているけど、いい所もあるじゃん。
運よく私の隣の席が空いていて、高垣くんも一緒に座ることができた。
***
いつもゆうと2人では特に会話もないんだけど、高垣くんはきちんと話をしてくれる。
「選択授業決めた?」
選択授業が1コマだけあるのだ。クラスが完全にミックスになるからまた少し緊張している。
「まだ美術か歴史か迷ってるところ」
「おお~いいね。俺もまだ迷い中。決まったら教えてよ」
「うん!高垣くんも教えてね」
「おう!中川さんうどんだけ?お昼」
「うん。おいしいよ」
「甘いのすき?」
「うん。すきだよ」
「じゃあこれやるよ。俺甘いの苦手だから」
そういって高垣くんは定食についてきたデザートのフルーツポンチをなんと私にくれたのだ。
優しい。宇宙一優しい男だよ!高垣くん。
「高垣くん、ありがとう!!大切に食べるね!!」
ゆうは高垣くんが来てから一言もしゃべらなかった。
フルーツポンチがおいしすぎて気にならなかったけどね。