覚悟を決めて
「何見てんのよ!結衣が振られて、ざまぁみろって思ってるんでしょ!?あんたの方が性格悪いじゃない!」
「おい結衣!やめろ!」
気がつくと新太くんが結衣ちゃんを止めてて、私は頬にジンジンとした痛みを感じていて、あぁぶたれたんだなと気が付いた。
振られた?結衣ちゃんが?
それって石井先輩に告白したってことだよね。
あれは振られた瞬間に出くわしてしまっていたのか。
ワーワーと騒ぐ結衣ちゃんを前にどこか冷静でいる自分がいた。
「ハルカ!大丈夫か?あいつ、もう許せねぇ」
「僕なんか冷やすもの持ってくる」
「里中!ハルカになんてことすんのよ!!」
ゆうが結衣ちゃんの方に行く。
「それ以上きたら大声出して先生を呼んでやるんだから!」
「そしたらハルカのこと殴ったのも先生に言わなきゃな」
「何よ、何よ!みんなあんたのことばっかり庇って!」
「今のは完全に結衣が悪いだろ!」
「先輩に告白する勇気もないくせに!」
「ないよ」
「はぁ!?」
「ハルカ?」
私が口を開くと、みんなが一斉に私を見た。
「私は告白する勇気、ないよ。だから、勇気を出して先輩に言った結衣ちゃんのことざまぁみろだなんて思ってない。悲しくて当然だから」
結衣ちゃんと付き合ってるって思った時は、私も悲しかった。とっても。
「いい子ぶらないでよ」
「いい子ぶってない」
「あんたの全部が気に入らないのよ!結衣の欲しいものばっかり持ってる!」
結衣ちゃんはもう泣いてはいなかった。
「歪みすぎ・・・」
「ハルカ、もう行こう」
ミヤコが私の手をとる。
「そうやってまた逃げるんだ?話はまだ終わってないけど!?」
「ハルカ、ほっといていい。行こう」
ゆうは動かない私の肩を押して後ろ向きに方向転換させた。
結衣ちゃんは失恋しても、慰めてくれる友達がいないんだ。
それってとっても寂しいことだな。
結衣ちゃんにされたことを許すつもりはないし、友達になる気もないけど可哀想だなって思う。
まぁこれを言ったらさらに逆上されるって分かっているから言わないけど。
「私は結衣ちゃんと話すことなんてないの」
後ろから何か結衣ちゃんは言っていたけど、私はそれを無視して教室に戻った。
***
「ぐすっ・・・」
「流石に手ェ出すのはダメだろ。結衣」
またハルカちゃんを追いかけて手でも出したら困る、そう思って俺は結衣と一緒にいた。
「完全に八つ当たり」
「新太、泣いてるんだから結衣のこと慰めてよ」
「慰めねーよ。自業自得だろ」
そう、これは自業自得。
「ひどい、なんでみんなあいつばっかり・・・」
「あのさ、なんでハルカちゃんの話になるの?結局、結衣はハルカちゃんのことが羨ましいんだろ」
「羨ましくなんてない!」
嘘だ。結衣はハルカちゃんが羨ましいんだろ。
「ハルカちゃんばっかりって言うけどさ、結衣が変わらないと一生同じだと思う。絶対」
「新太」
この先クラス替えとか大学進学とかで取り巻く環境が変わっても、結衣はハルカちゃんみたいな人を探してまたターゲットにするんじゃないか。
それって結衣にとってもその人にとっても何もいいことないし。
「今日は送ってやるから、もう帰るぞ」
「新太、優しいね」
「放っておいたらまたハルカちゃんに絡むだろ。だからだよ」
「ムカつくからあいつも先輩に振られればいい」
「そういう所だよ。他人の不幸ばっかり考えるの、時間の無駄」
「新太のくせに結衣に説教しないで」
「はぁ・・・」
***
「ハルカー!大丈夫?ほっぺた赤くなってる」
「冷たいの行くよ?」
「ひえっ」
教室で馨くんが頬を冷やしてくれた。保健室で保冷剤をもらってきてくれたみたい。
「ハルカ、他に痛いところとかない?」
「うん、大丈夫だよ」
「このまま帰ろうかって、ハルカの荷物持って向かったらあんなことになってて本当びっくりした」
「あはは、私もびっくり」
「里中許せねぇ。俺のハルカの顔に・・・!」
「ゆうのじゃないでしょ」
急にぶたれた驚きと、八つ当たりに対する怒りと、振られて可哀想っていう気持ちとで心の中がぐちゃぐちゃしていたけど、みんなのおかげて気が紛れていった。
『告白する勇気もないくせに』
結衣ちゃんのこの言葉だけが胸をチリチリと焦がすけど。
静かに思うって決めたのに。
それじゃダメなの?




