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10年ぶりに再会した幼馴染について誰かに説明したい  作者: Cani
ハルカ、高校一年生
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ハートのクッキーは誰のために

 

「ハールカ!」

「ミヤコ・・・」

 教室にミヤコがやってきた。


「先輩に渡せたの!?」

「ううん・・・」

「さっき先輩見かけたよ!さてはこれから渡すのね!」

 楽しそうにミヤコが言う。

 実は渡せなくなっちゃったんだ、と言おうとした時だった。


「あ、噂をすれば先輩じゃん!ハルカ、ラッキーだね!」

 廊下の向こうを見てミヤコが言う。

 私はクッキーの入ったカバンを抱きしめた。

「ハルカ・・・?」


「せんぱ〜い!結衣、一生懸命作りましたっ!受け取ってください!」

「はぁ・・・」

「お〜石井!やったじゃん〜!」

「えー俺は俺はー?」

「石井先輩にだけ特別なんです〜」

「えーずるーい!ほら石井!何してんだよ、受け取ってやれよこのモテ男〜!」

 石井先輩は一緒にいた友達の楽しそうな声が聞こえる。


「ハルカ、何かあったの?」

「あはは、実はクッキー割れちゃって。渡すの恥ずかしいからいいんだ!それにみんなに渡したかったからそれはできたし」

「割れちゃっててもハルカのクッキー最高に美味しかったよ!せっかく準備したのに、いいの?」


 結衣ちゃんが教室に戻ってきた。

「わーい、先輩が結衣のチョコ受け取ってくれた〜」

「いいなぁあの先輩」

 みんなに堂々をいう結衣ちゃんを見ていられそうになかった。


「え、なんかこっち来ますけど?」

 結衣ちゃんが私の方へ向かってくる。

「中川さんも可愛いクッキー持ってきてたよね?最後の一袋は誰にあげようと思ってたの?」

「はぁ?なんであんたに言わなきゃなんないのよ」

 ミヤコがすぐに反応する。

「あ、まぁあんなゴミまみれのやつ、誰にも渡せないか。じゃあね〜」

「はぁ!?」

 結衣ちゃんはそう私に言い捨てると帰っていった。


「ハルカ、今のどう言うこと?」

 ミヤコが怖い顔をして私をみる。私はもう誤魔化せないと思ってクッキーを見せた。

「ボロッボロじゃん!あいつにやられたの?」

「多分だけど、でも証拠もないから。まぁ会えなかったら渡さない予定のものだしいいんだ」

「ハルカ・・・。せっかく先輩に会えたのに・・・」

「いいのいいの。さ、帰ろ!」

 私はクッキーをまたカバンにしまおうとしたけど、その手を止められた。


「ハルカちゃん」

「馨くん・・・」

「これ、僕がもらいたい」

 馨くんがボロボロのクッキーを指さす。

「ハルカちゃんはこれ、先輩に渡しておいで」

 馨くんは朝渡したクッキーを私に持たせた。

「でも、これ、馨くんのなんだよ?」

「先輩に渡したかったんでしょう。新太もゆうも美味しい美味しいって食べてたし、きっと受け取ってもらえるよ」

「うん!本当に美味しかったよ!ゆうもバクバク食べてたし」

「俺基準なの?」

 馨くんは袋を開けてボロボロになったクッキーをつまんだ。

「だ、だめだよ!ゴミ箱に入ってたんだよ!?」

「ちゃんと可愛いラッピングされてたんだから、中身は大丈夫だよ」

 そういうとクッキーをひと口食べた。

「うん、とっても美味しい。頑張って作ったんだね」

「馨くん・・・」


「中川ちゃん!会えたね」

 石井先輩がドアから顔を出し私に声をかけた。


「ほら、行っておいで」

「馨くん、ありがとう」

 馨くんは優しく微笑んでいた。

 ミヤコはなぜか涙目になっていた。

 私はクッキーを持って先輩のところへ向かった。


「ね、ねぇ・・・私今超感動してるんだけど・・・。川上、あんたすごいよ。男だね」

「何千堂さん泣いてるの」

「川上、見直したよ・・・!」

「俺は何も言えません・・・。クッキー全部食べちゃったから・・・」

「大事に食べるとか言ってたくせに」

「だって美味しくて、つい」

「いいんだよ、だってこのクッキーよく見て、元々ハート型だったんじゃない?」

「あっ!本当だ!やだ、ハルカってば可愛いことしてたのね」

「僕このハート食べれるのラッキー」

「馨、かっこいいじゃん」

「ゆうに褒められるなんて、明日は雪かもね」



 ***



「丁度通りかかったからさ!帰る前に会えてよかった〜。元気にやってるの?」

「はい、私も会えてよかったです。そ、その・・・」

「おい石井〜!後輩に手出すんじゃねーぞ!」

「そんなんじゃないよ!ほら、お前らは先行っててこれでも食べとけ」

 先輩は結衣ちゃんからのチョコレートを友達に渡してしまった。

 ひょっとして、私のクッキーもそうなるんじゃないかと思ったら渡すのが怖くなってしまった。


「それで?手に持ってるのは俺にくれるもの?」

「あっ」

 先輩は私の手元のクッキーを見てそういった。

「そ、そうです。あの、いつも優しくしてもらっているので、そのお礼って感じです」

「ください」

 先輩は掌を上にして私に向けた。その掌にそっとクッキーの袋を置く。

「食べていい?」

「えっ」

 私の返事を聞く前に先輩は袋を開けクッキーを食べた。

「うん、うまい。ありがとね、中川ちゃん」

 先輩はそう言うとまたクッキーを食べた。


「じゃあ俺行くね。次は卒業式かな?泣く準備しておいてね」

 先輩は私の頭をひと撫でし、友達の元へ帰っていった。

 クッキーを食べた先輩が美味しいと言ってくれた。私の作ったクッキーを。

 その事実に胸がいっぱいになってしまった。

 純粋に嬉しかった。


 だけど心のどこかで結衣ちゃんの食べられなかったチョコレートの存在がひっかかった。

 自分だったら、悲しすぎる。

 結衣ちゃんはそれを知らないけど。



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