もうバレンタイン中止ってどうですか
だ、だめだ・・・。
もう何度目だろうか。
何度やってもチョコレートが分離してしまう。
そして残りのチョコレートはもうわずか、外は大雨。
チョコレートブラウニーを作る予定だったけど新太くん、ゆう、馨くん、都にあげるのにこの量のチョコレートでは足りなそうだ。
卵、小麦粉、バターはたくさんあるのになぁ。
卵、小麦粉、バター、卵、小麦粉、バター、卵、小麦粉、バター・・・。
「あっ!」
クッキーはどうだろう。残っているチョコレートを刻んで、チョコチップクッキーにする!
ココアパウダーもあるからココア味との2種類にする、いけそうだ!
「私、天才かもしれない・・・」
無事クッキーを焼き上げることができた。
丸く焼き上げたクッキー、1つだけなんとかハートに成型した。
「もし運よく、運良く会えたら!」
ひとりで急いで言い訳する。
ラッピングをしながら最後に残したハートのクッキーを手に取る。
「会えなかったら自分で食べよ」
石井先輩にあげる袋にハートのクッキーを入れた。
***
「おはよう」
「お、おはよう!ハルカちゃん」
「新太くん、これ」
「あ、ありがとう〜!!大切に!大切にいただきます!」
「やっほー」
「ミヤコ」
ミヤコが教室に入ってきた。
「ほら、これあげる」
「え!千堂もくれるの?やったー!」
「ホワイトデー2倍返しでよろしく」
「うっ」
「新太の喜びの声が廊下まで聞こえてたよ」
そう言いながら馨くんとゆうが教室に入ってきた。
「2人にも」
ミヤコはポッキーを2人に渡す。
「ありがとう」
「あ、私のも!」
遅れて私も2人にクッキーを渡す。
「美味しいといいんだけど・・・。ミヤコのもあるよ」
「えー!私にも!?ありがとうハルカ。ホワイトデー楽しみにしてて」
ミヤコは教室に戻っていった。
「クッキー美味しそう」
「チョコじゃないのか」
「何回やっても分離しちゃって、でもクッキーは上手にできた!と思う」
「クッキー焼けるのにチョコレート溶かすのはできないってなんか不思議だな」
ニヤニヤとしながらゆうが言う。
「いいじゃん、チョコチップクッキーなんだから、一応チョコでしょ!」
「俺は、ハルカちゃんの手作りクッキーが食べられるだけ幸せだ・・・!」
「新太くん大袈裟・・・」
先生が来たのでそれぞれの席に戻った。
とりあえず喜んでもらえてよかったな。
昼休みになっても先輩の姿はなかった。
自然とキョロキョロ先輩を探してしまう。ドキドキしているのは会ったらあのハート型のクッキーを渡さないといけないからか、ただ会いたいからなのか。
石井先輩の口に合わなかったらどうしよう、もしクッキーが生焼けだったらどうしよう。
昼食の後で新太くんはクッキーを一口食べてくれた。
「さっくさくで美味しい!」
「チョコの味、ちゃんとする?」
「するする!美味しいよ」
たくさん新太くんに褒められて嬉しかったのと同時に、クッキーに問題がなさそうでホッとした。
5限目は体育だった。
体育が終わって教室に戻る。
先輩とは会えないかもしれないな。そう思いながら着替えをする。
カバンを開けると持ってきていたクッキーが無くなっていた。先輩に渡すために準備した、ハートのクッキーが。
入れ忘れた?
いや、朝みんなに渡した時は確かにここに入っていたのに。
私は急いで着替えてカバンの中をひっくり返し探したが、やっぱりなかった。
「中川さん?何探してるの〜?」
「なんでもない」
結衣ちゃんが声をかけてきた。
私は諦めて探すをやめた。
「あぁ〜そういえば〜さっきゴミ箱にピンクの袋に入ったクッキーが捨ててあったなぁ〜」
「え・・・」
私は急いで教室の後ろにあるゴミ箱の中を見た。
私のクッキーだ。
「あ、それ中川さんのなんだぁ。ごみと間違われたんじゃない?よかったね見つかって。でも流石にゴミ箱に入ったやつなんて渡せないでしょう」
結衣ちゃんはニヤッと笑って私に言う。
きっと結衣ちゃんがやったんだと思う。さっきの体育はお腹が痛いって保健室に行っていたし、授業の間にできるのは結衣ちゃんしかいない、と思うけど、証拠があるわけじゃない。
私は何も言わずにクッキーをカバンにしまった。
一生懸命作ったクッキーがボロボロに砕けているのを見て、悲しくて。何も言えなかったのだ。
しょうがない、先輩とは会えなかったら渡せないものだったんだから。
ここで泣いたりでもしたら、結衣ちゃんの思う壺だ。
ホームルームも終わり、私は荷物を纏めて早々と帰ろうとした。




