もう会えないと思ってた
久しぶりに学校に来ることができた新太くんは、全然連絡をくれなかったと泣きついていた。馨くんとゆうの2人に。
「もー!2人とも冷たすぎるよー!」
「最初にお見舞い行ったでしょ。どこが冷たいって言うの」
「ほら、ノートのコピー」
「俺が間違ってた!だいすき!」
ゆうからノートを受け取った新太くんは2人に抱きついていた。
男の友情もいいね。
「今すぐ離さないとノート破るよ」
「ヒッ!ごめんなさいっ!!」
***
「おっ中川、丁度よかった」
先生から声をかけられる。
「次の授業で使う資料が職員室にあるんだが、量が多くてな。手伝ってくれないか?」
「はい」
「助かるよ。今日の日直が見つからなくてな」
たしかにプリントやら参考書やら運ぶものがたくさんあった。
先生は1人で大きな段ボールを抱え、私はプリントの束をもった。
職員室を出ようとした時に、自分の両手が塞がってドアが開けられないことに気がつく。
しょうがない、プリントを片手持ちかえて何とか開けるか、と思ったその時だった。
「無理しないの」
後ろから誰かの手が伸びガラガラ、とドアが開く。
「ありがとうございました!」
お礼をしようと振り向くと、そこにいたのは石井先輩だった。
「中川ちゃん、久しぶり」
「先輩、もう卒業式まで来ないんじゃないんですか?」
「先生にお願いしている書類とかがあって取りに来たんだ」
無事受け取ったところ、と手に持っている封筒をひらひらと見せる。
何だか本当に先輩を久しぶりに見た気がする。
ニコッと笑ったその優しい表情は全然変わらない。
「あと何回かは学校来る予定だよ。荷物とかも片付けないとだからね」
「た、頼む・・・そろそろ行かせてくれ」
「あ、先生!ごめんなさい」
重たい段ボールを持った先生が私の後ろから絞り出すようにして声を出す。
「先生、俺が持ちますよ」
ひょい、と石井先輩が先生の段ボールを持った。
「た、助かった」
石井先輩はそのまま私のクラスに荷物を運んでくれた。
「ありがとうございました」
「中川ちゃん、またね。次は14日に来る予定。タイミング合えばまた会おう」
「はい」
先輩はそういうと帰っていった。
「ハルカ、なんであいつが一緒なんだよ」
「あいつって、石井先輩と職員室で会って、荷物運ぶの手伝ってくれただけだよ」
「ふーん」
「な、何」
「14日会うの?」
「わかんないよ」
「ふーん」
「な、何」
「別に」
ゆうはぷいっと前を向くとそれ以上は何も言ってこなかった。
***
「ハルカ!お待たせ」
「部活お疲れさま」
放課後ミヤコと新しいカフェに寄る約束をしていた。
ワッフルが届くのを待つ間、久しぶりに石井先輩にあったことを話した。
「久しぶりに会ってどうだった?」
「やっぱりカッコよかったし、運ぶの手伝ってくれて優しかった・・・ってなんか恥ずかしいな」
「きゃー!!いい!いいよ!恋する乙女だよハルカー!」
「次は14日に会えるかも」
「14日かぁってバレンタインデーだよ!チョコ渡して告っちゃいなよ」
「バレンタインデーか」
「丁度いいじゃん!受験も終わってるみたいだし告白しちゃいなよ、いけるって!」
「流石に告白は無理だよ!」
「えー!脈ありっぽいけどなぁ。まぁ告白はしなくてもチョコは渡したら?私はあいつら3人にポッキーでもあげよっかな」
届いたワッフルはサクサクふわふわで美味しかった。
ワッフルを味わいながらも、私の頭の中は約1ヶ月後に迫るバレンタインデーのことでいっぱいになっていたのだった。
***
「ハルカちゃん」
「どうしたの新太くん?」
「もう2月だね」
「あっという間だね」
「そ、そういえば、もうすぐバレンタインだな〜、なんて」
「そうだね!」
新太くんは少しもじもじとしながらチラチラと私のことを見る。
なんだろう?
「ねぇ新太の周りくどさに驚いてる」
「ハルカも鈍感だから絶対新太の考えている事に気がつけないと思う」
横からゆうと馨くんが言う。
えーっと、バレンタインデーのことをわざわざ言ってくるってことはそれのことだよね?
「あっ!チョコ欲しいってこと?」
「お、当たった」
「ハルカすごい」
「2人ともやめろ!ねだるみたいで俺超かっこ悪いじゃん」
「大丈夫だよ!元々あげようと思ってたよ!」
「へ」
「あ、そうなの?」
意外そうな顔でゆうが私を見る。
「みんなにあげようってミヤコと言ってたの」
「なんだ、みんなか・・・はは」
「食べられるものを頼む」
「もーゆうは失礼なんだから」
「ゆうのだけ唐辛子とか入れちゃいな」
「馨くん!そのアイデアもらうね」
「おい」
今日の帰りに材料だけ見に行こうかな。




