久々の時間
「こっちこっちー!」
「ハルカ!久しぶりね〜!元気だった?」
「こんなに大きくなって・・・!」
「身長も体重も変わってないけど・・・」
年越しは日本ですると行ってベトナムに行っていた両親が帰国した。と言っても家はないので旅館を予約して年越し旅行ってやつだ。
「ハルカがベトナムに来ればいいのに」
「私日本が好きだもん」
「ベトナムもいいところよ〜」
旅館に向けてタクシーで移動する。
「高校はどうだ?友達できたか?」
「ほらパパ、ゆうちゃんと同じクラスだったでしょ〜?」
「そうだったな。よかったなーゆうちゃんも一緒で」
「ゆう以外の友達もちゃんといるよ!っていうか、私ゆうが男の子って高校生になって知ったんだよ!」
「ええ!そんなことってあるの?ハルカってば鈍いというか天然というか・・・」
「君に似て可愛いじゃないか」
「んもう、パパったら〜!」
ベトナムでは2人暮らしだからか、嫌なラブラブ度に磨きがかかっている気がする。
旅館まであと1時間くらいか、なかなかしんどいな、なんて思いながら私はぼんやり外の景色を眺めたのだった。
「ついた・・・!」
「流石に移動しっぱなしだったから疲れたわね〜」
旅館に無事到着した私たちは荷物を置いてすぐに先に敷いてもらっていた布団に横になる。
「布団のフカフカさ、畳の匂い!最高!!」
「日本が恋しいんじゃない」
「あはは、まぁな」
「私先温泉行っちゃおうかな」
「パパとママはちょっと休憩して後で入ろうかな。鍵2個あるよね?」
長旅で疲れたのだろう。2人とも眠たそうだ。
私は2人を置いて大浴場へ向かった。
「あー幸せ・・・」
岩風呂は広く私はお湯の中でのびのびと足を伸ばした。極楽極楽。
寮生活に慣れてきたが、両親もいるのに実家がないだなんて何だか切ない。
旅館で年越しだなんてとっても贅沢だけど、テレビの前でゴロゴロ寝っ転がって過ごす年越しも楽しいんだよなぁ。
毎年こうやって過ごすようになるのかな。
もし高校を卒業したらどうしよう。大学生だから部屋を借りることはできるかもしれないけど、日本で1人っきりになっちゃうのか。
ゆうやゆうのパパとママにも流石に頼るわけにはいかないし、きっと大学はミヤコやみんなともバラバラになるんだろう。
こんなに素敵な温泉に浸かっているのにブルーな気持ちになってしまった。
「やっぱり温泉は最高ね〜!ってごめんなさい、人違いでした!!」
急に後ろからお母さんの声がして振り向くと、全然違う人に後ろから話しかけており私はこっそり温泉を上がるのだった。
***
「ただいまー」
「おかえり」
「私ったら温泉でハルカかと思ったら違う人に声かけちゃったのよ!びっくり!」
「知ってる」
「ええ!見てたの!?もーそれならそうと早く言ってよね!ママ恥ずかしかったわよ」
「ママったら本当ドジだな。でもそんなところも可愛い!」
「パパ〜」
多分私は今後も声をかけないと思う。
「あー!美味しい!伊勢海老最高!!」
「カニも最高だな」
久々の日本食に両親は少し感動しているようだった。
あんなに食べたのに父は白米をおかわりしていた。
「日本に戻って来ればよかったのに」
「お仕事なんだからしょうがないでしょ」
「パパはベトナムのごはんも好きだと思ったよ。どんどん辛いものが好きになってきた」
「結構辛いのあるのよ!」
美味しい食事に舌鼓を打ちつつ両親との久々の家族の時間を楽しんだのだった。
食事の後もう一回温泉に入り、年越しまでの間部屋のテレビを見ながら過ごした。
テレビから日本語が聞こえる!と母は少し興奮していた。
もう23時か、と時計を横目にあっという間にお正月が来てしまったことに時の流れの速さを感じつつ年越しそばで苦しくなったお腹を抱えてフカフカの布団の上で横になっていた。
ゴロゴロとしている内に私は年越しの瞬間を夢の中で過ごすことになってしまった。
***
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとう。もう、起こして欲しかった!」
私が起きるとすでに両親は起きていた。もう朝ごはんが届くと言われ、私は慌てて顔を洗って歯ブラシをするのだった。
「ずっとこの楽園にいたかった・・・」
あっといまにチェックアウトとなり私たちは旅館を後にした。
「日本には5日までいるんだっけ?」
「そうよ〜あとは駅の近くのホテルに連泊、すぐ近くにデパートがあるから初売りが楽しみよ」
「いっぱい買えるようにバックは空できたもんな」
「え!このスーツケースからなの!?」
「もちろん」
「わぁ」
だったら重たそうに運ぶのやめてほしい。
あっという間に今日泊まるホテルに到着。
荷物を置いて母の楽しみにしていた初売りに向かうのだった。
ホテルでゆっくりしてようかななんて思ったけど、お年玉をもらってしまったので母に付き合うことにしたのだった。




