盗み聞きって大体いい事ない
「あ、せんぱーい」
あれからも相変わらず結衣ちゃんは先輩にべったりだったけど、私はいくらか気が楽だった。
先輩が結衣ちゃんに全く気がないことを知っていたからだった。
なんとも思っていない私を見て、結衣ちゃんはつまらないようだった。
何かと話しかけてくると思ったら先輩からお菓子をもらっただの、手を繋いだだの言ってくるがもう傷つく私ではなかった。
「あ」
ぱち、と先輩と目が合う。
ニコッと微笑まれたもんだから、軽く会釈をした。それだけで私の胸がいっぱいになってしまうのだった。
結衣ちゃんに睨まれたって大丈夫。
こうやって静かに先輩のことを思うだけで、それだけで幸せなんだからそれでいいんだ。
***
もう12月となると、街中はもちろんクラスでもクリスマスの話で持ちきりだった。
「新太くん楽しみだね!」
「ね、俺プレゼント交換が楽しみ」
「私も!何にしよう」
俺はいつものメンツでクリスマスパーティーをする計画にワクワクしている。
ハルカちゃんはチキンが楽しみらしい。かわいい。
俺とハルカちゃんは2人で職員室へと向かっていた。
日直でノートを集めて先生に提出するよう頼まれていた俺をハルカちゃんが手伝ってくれているのだ。
あー、かわいいし優しいなんて本当パーフェクト。
最近のハルカちゃんは本当に先輩のことを吹っ切ったのか元気になっていたから安心した。
ハルカちゃんには幸せになって欲しいけど、正直先輩に失恋したと泣いている姿を見てどこか喜んでしまう自分もいた。
チャンスがあるって思ってしまうんだ。
「あれ?ゆうじゃん」
「本当だ、誰かと話して・・・る」
言い切る前に俺はハルカちゃんを後ろに隠し、近くの壁に隠れた。
ゆうが話していたのは、結衣だったからだ。
「新太くん?」
「しー」
隠れる必要はないんだけど、結衣とは色々あったからまた何か問題でも起きてるんじゃないかと勘繰ってしまう。
「ねぇ、最近中川さんまた結衣に会いに来てる先輩のこと見つめたりしてるけど、どうなってんの?」
「はぁ?」
急に2人からハルカちゃんの名前が出たから驚いた。ゆうの声色は面倒くさそうだ。
2人でなんの話をしてる?
「失恋したって言ってたんじゃないの?」
「失恋した、っつーのは言ってたけど」
なんでハルカちゃんのそんな情報結衣に言うんだよ!とゆうに呆れつつも俺は何かを感じ恐る恐る後ろを振り向くと、真顔のハルカちゃんがいた。なんでしょうか、いつかの千堂的な何かを感じるんですけど・・・!
ハルカちゃん、怒ってるんだ、ね?
「結衣の方が可愛んだから選ばれて当然なの。ゆうはさぁ、中川さんが先輩のこと完全に諦められるようにしてよ。ジロジロ見てきて未練がましいったらないんだから」
おいおいやめてくれ、なんかここら辺寒いんですけどぉ・・・!
「俺はハルカちゃんの方が可愛いと思ってる!ハルカちゃんがいちばん!」
俺は急いでハルカちゃんにそう伝えた。
ハルカちゃんは真顔のまま、そう、ありがとうって心のこもってないお礼を言ってくれた。
そもそもなんでゆうがハルカちゃんの恋愛事情を結衣に言ってるんだ?
理解できない俺はこれ以上ハルカちゃんが傷つかないように(と言うより怒らないように)適当な理由をつけてこの場から移動したのだった。
午後の授業、ハルカちゃんは普通に振る舞っていたが瞳の奥に怒りの感情が燻っているのを俺は見逃さなかった。
放課後、絶対に恐ろしいことになると思った俺は千堂にメールを入れておくのであった。




