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ハルカがあの先輩のことが好きなことが判明してはや1ヶ月。
特に何も変わらなかった。
ハルカはあの先輩と付き合いたいとか告白したいとかそういうつもりじゃないらしい。
そんなのどうなるか分からないけどな。
休み時間が移動教室の時、ハルカに気がついたあいつがハルカに声をかけたり、ちょっかいをかける。
嬉しそうな表情をしているハルカを俺は見ていられなくて、いつもそっぽを向いてしまう。
「いやっ!先輩の余裕ずるいっ!」
と新太は毎回騒いできてうるさい。馨は何を考えているのか分からない。
「ゆう〜。ちょっと話そうよ」
「俺はお前と話す用事ないけど」
「中川さん、やっぱりあの先輩とくっつきそうなんでしょ?」
昼休み、今日もハルカはあいつに連れられて食堂に行ってしまった。
俺の前の席に誰か来たと思えば、里中だった。
「ほっとけ。お前には関係ない」
「関係あるよ〜。結衣あの先輩のこと好きなんだ。協力してよ」
「はぁ?」
「ゆう、中川さんこのままだと取られちゃうよ?いいの?結衣があの先輩とくっついたら、万事解決じゃん」
ぱんっと手を叩いて、あたかも良い案だといいたげだ。
こいつ俺のこと好きなんじゃなかったのか?
「中川さんにはもう何にもしないよ〜。中川さんって優しいから今までのことも許してくれたし〜。それに結衣、もうゆうのことも、新太のことも諦めたんだから。ね、結衣のこと応援して」
「ハルカには手を出すんじゃねぇぞ」
「うん〜出さない出さない。ゆうは結衣のこと応援して?それだけでいいから」
ね?と里中はわざとらしく首を傾けた。
里中に協力する気はないが、ハルカの恋愛を応援するつもりも甚だない。
応援なんてできるもんか。
***
傷ついた人間の心はなんと簡単に操作できるんだろう。
口ではああ言っていたけど、ゆうは必ず私に協力する。
大好きなんだもんね、あの女のことが。
でも簡単に裏切られちゃって。大切にしてたのにね。結衣にはわかるよ、ゆう。
食堂に向かうと、石井先輩と顔を合わせて仲良くお昼ご飯を食べている中川さんがいた。
結衣、本当ああいう鈍い女大っ嫌い。
ゆうや新太の気持ちに気がつかないふりして、自分はとっととお気に入りを見つけちゃって。
あーあ。先輩もあんな顔しちゃって。本当つまらない。
結衣はどんなに周りの人と仲良くしたくても、やっかまれたり嫉妬されたり上手くできなかったのに、中川さんって周りの人間がいつだって助けてなんでもできるんじゃない。
地味で自信もなくてオロオロしているからゆうも新太も気にして助けてあげてるだけ。
中川さんの力じゃない。
それなのに、いつも楽しそうに・・・。
先輩と結衣がくっ付いたら、中川さんとっても傷つくよね?
「あっ」
「うわっ!」
結衣は持っていた水を石井先輩にかけた。少しだけね。
「あ〜!どうしよう〜先輩ごめんなさい〜!」
「大丈夫だよ、そんなにかかってないから」
「でも〜、先輩受験生なのに風邪でも引いたら、結衣自分のことずっと責めちゃうと思います!先輩、結衣のためにも制服拭かせてください!ね?中川さん、そのほうがいいよね?」
急に話を振られた中川さん、オドオドしてた。笑える。
「先輩、風邪ひいたら大変ですから・・・」
「じゃあ先輩、結衣のタオル向こうにあるので一緒に行きましょう〜!中川さん、ごめんね!また教室でね〜」
結衣一応ごめんねって言ったから。
許してくれるよね?中川さん。
「いや、本当に大丈夫なんだけど・・・」
結衣は先輩のジャケットの右肩をタオルでトントンと拭いた。
近くで見ると、先輩って本当イケメンだなぁ。優しいし。
「先輩、結衣水をかけちゃったのは本当にごめんなさい。わざとじゃないんです」
「うん?それは分かってるよ」
「わざとじゃないし、ごめんなさいって思ってるんですけどぉ、正直こうやって2人っきりになれたのが嬉しいです」
「え?どういうこと?」
先輩は結衣の顔を覗き込むようにして聞いてきた。
先輩も本当は気がついてるんでしょう?
「結衣、先輩のこと気になってるんです。中川さんとばっかり仲良しだから、結衣焦っちゃった」
結衣は顔をこてんと傾け、わざと視線を外してそういった。
この先輩だって、ただの男だ。
結衣みたいなかわいい子にこんなこと言われたら嫌な気持ちはしないだろう。
先輩は結衣の言葉を聞いてしばらく考えていたけど、ニコッと笑って結衣の顎を掴んだ。
顔がどんどん近づいてくる。
ふふ、本当に男って簡単。このままキスかしら?やっぱり先輩って同級生と違って積極的なのね。
結衣は目を閉じて、先輩のキスを待ったけど、いつまでも唇は触れなかった。
目を開けると、先輩の真剣な瞳が・・・。何・・・?
「君、中川ちゃんのこと資料室に閉じ込めた子だよねー。今度は何企んでんの?ん?」
「えっ?」
キスを待とうと瞳を閉じたことを後悔した。
この人は全部知ってるんだ!
中川さん、おとなしいふりして先輩に泣きついたのね。何それ。
あーあ、どうしよ。先輩イケメンだったから結衣もいいなと思ったのに。中川さんのせいで作戦台無しじゃん。
この際適当に誤魔化して教室に戻ろうかと思ったその時、先輩の向こう側に中川さんが見えた。
「石井先輩、嬉しい!」
「はぁっ!?」
結衣は勢いに任せて石井先輩にキスをした。




