玉入れのルール知ってます?
『続いては玉入れです』
「中川ちゃーん!がんばれー!」
1年生の玉入れがはじまる。
待機している時に大きな声で石井先輩の応援が聞こえた。
先輩の方を見ると、大きく手を振っている。
笑顔の先輩に釣られて私も笑顔で手を振った。
『ヨーイ、ドン!』
「うおお!」
競技が始まった。新太くんはすごい勢いで上のネットに玉を入れていく。
「私も負けないぞ!」
気合を入れて私も上に向かって玉を投げる。
ネットを取り囲むようにして始めるため四方八方から玉が飛んでくる。お手玉みたいな玉だからそこまで痛くないけど、さっきからやけに玉がぶつかって来る気がする。それも横から。
密かに横を見てみると、ゆうは完全に私の方に体を向けて玉を投げていた。私に!
「ちょ!!ゆう何してんの!?上のネットに入れるんだよ!」
「ムカついてんの!」
「何に?」
「うるさい!」
「もう!ちゃんとやってよ!」
『ピー!!終了です。全員座ってください!』
玉入れの終了の合図と共にゆうからの攻撃も止んだ。
「何にムカついてるの?」
隣に座っているゆうに話しかける。
「あの3年とイチャつきすぎなんだよ、ばか」
「イチャ!?イチャついてないよ、何言ってんの」
「いーや、イチャついてた。ハルカの顔ニヤついてたもん。ムカつく」
ゆうは私のほっぺを持って左右に引っ張った。
「イタタタ!」
「はは、変な顔だ」
「ねぇ、あの2人何やってんの?イチャついてんの?」
「公共の場というのを忘れてるんじゃない?中西くんずっとハルカちゃんに玉投げてたね」
「好きな子ほどいじめたくなる的な感じ?やっぱり子供だね。っていうかなんで川上はうちのクラスの応援席にいるの」
「だって僕のこと探しにくる人がいるんだもん。面倒くさいから匿って」
「いやよ、あんたと2人でいて里中みたいな奴らに変に勘違いされたらそれこそ面倒くさいわよ。イケメンの宿命なんだから正々堂々としてなさいよ」
「はぁ、本当女子って面倒くさい・・・」
***
「中川ちゃーん!ずっと玉投げられてたね!」
「見てたんですね」
玉入れ後手を洗っていると石井先輩に声をかけられた。
「あはは、あの男子と仲良いの?」
「仲良いというか、幼馴染なんです。10年ぶりくらいに会いましたけど」
ついでにずっと女の子とだと思ってましたけど。
「へぇ。幼馴染ねぇ。なんかいいよねそういうの。青春じゃん」
「良くないですよ、ちょっと意地悪だし」
「男っていうのはそういうもんよ」
「先輩は優しいじゃないですか」
「えー?俺も意地悪なところあるよ?ほら!」
「わ!」
石井先輩は水道を急に私の方へ向け、私は顔や首が濡れてしまった。
「もう!先輩!」
「あはは、ごめんごめん」
先輩は体育着の袖で私の顔や首を拭く。
体育着は半袖で、その袖で私のことを拭くとなると当然距離は近いわけで。
先輩はいい匂いする。どうしよう、私汗くさくないかな?
「大人しくなっちゃって。中川ちゃん本当かわいい」
「い、石井先輩・・・」
「ん?」
「ちょっと、近いかなーなんて・・・」
「ちょっとじゃねーだろ」
ぐっと体が後ろに引かれる。バランスを後ろに崩したが、そこにいた人に体が支えられ転ばずに済んだ。
「ゆう!」
「あら、噂をすれば」
「先輩、こいつにちょっかい出さないでくださいよ」
ゆうは私の肩を掴んだまま、石井先輩と話す。
「ちょっかいじゃないよ」
「ゆう、先輩に失礼だよ」
「あはは、大丈夫だよ、ハルカちゃん。ね、嫉妬してるんだよね?」
先輩とゆうの間に火花が散っている気がする。
『次はリレーです。選手は集まってください』
「俺出番だから行かなきゃ。じゃあね中川ちゃん」
「あ、はい!頑張ってください!」
「ありがとー」
ひらひらと手を振って行った。
「ハルカ、あの3年生に油断しすぎ。距離近すぎ」
「それは濡れたところを拭いてくれていたからで・・・」
「ったく、ハルカの顔をあんな汚い布で拭きやがって」
「別に汚くなかったよ、袖だし」
「袖だし、じゃねーの」
「もーなんかゆう口うるさいよ」
「はぁ!?そもそもハルカが」
「あ!見つけた!おい行くぞ!」
「新太くん」
「ハルカちゃん!俺アンカーなんだ!応援してね」
「うん!頑張って!新太くん!」
「いってくるね!」
「あ、おい!話まだ終わってねーぞ!」
ゆうは新太くんに強制連行されていった。
『それでは1年生の選抜リレーを始めます。位置について、ヨーイ、ドン!』
最後の種目は選抜リレーだ。
「3位かぁ、スポーツ科も一緒なのに中々いいスタートだね」
「あ、馨くんおかえり」
「ただいま、あ、次中西くんだよ」
「本当だ!ゆうー!がんばれー!!」
3位のままゆうにバトンが渡された。
「4位の人陸上部だよ。抜かされるかも」
「ゆうー!がんばれー!」
4位の男子は3位のゆうと並ぼうとしている。ゆうも最後まで走りきり、なんとか3位のままでバトンを繋いだが、次の人でやはり抜かされてしまった。
「まぁリレーはしょうがないでしょ。スポーツ科の方が有利なんだから」
「でもゆう抜かされなかったのすごいよね!」
「すごいすごい。っていうか中西くんも中々運動神経良いけどなんかスポーツやってたの?」
「バスケやってたみたいだよ」
「そうなんだ。スポーツもできて勉強もできるなんて、ちょっと羨ましいな」
「ゆうに言ってあげたら喜ぶよ」
「やだ。言ってやんない」
3位になっては抜かされて、また抜き返してとしているうちにアンカーである新太くんにバトンが回ってくる番になった。
「あっ!!!」
3位と4位は接戦のまま、私たちのクラスは4位のままバトンが回ってきたが、なんとバトンミスで新太くんはバトンを地面に落としてしまった。
急いで拾って走り出す新太くん。
3位に近づくが、バトンミスで広がった差はそう簡単には埋められず、結果は4位でゴールとなった。
「高垣くんが珍しく落ち込んでる」
「気合い十分だったもんね」
とぼとぼと新太くんが戻ってきた。ゆうはいつの間にかどこかに行ってしまって姿が見えない。
「みんな、あとちょっとの所でごめんな」
「高垣ー!気にすんなよ」
「そうだよ!普通科の中では1番なわけだし十分すごいよ」
落ち込んでいる新太くんをクラスのみんなが慰めている。
新太くんは明るくて、誰とでも仲良くなれるからみんなからの信頼もあつい。誰も新太くんを責める人なんていなかった。
「ハルカちゃん、かっこいいところ見せたかったんだけど」
新太くんが馨くんと私の所へ戻ってきた。
「もうちょっとで抜かせそうだった。高垣くんって足速いんだね」
「馨・・・」
「下の名前で呼ばないでよ、慣れない」
「新太くん、かっこよかったよ!足すごい速かった!」
「ハルカちゃん・・・!」
「ほら、これでも飲めよ」
気がつけばゆうが戻って来ており、新太くんにスポーツドリンクを渡した。
「これ、今買ってきてくれたの?中西が?」
「だってお前すごい落ち込んでるんだもん。リレーに負けたくらいで死ぬわけじゃねぇんだし騒ぐなよ」
「ゆ、ゆう〜!!」
「下の名前で呼ぶなよ気色悪りぃ」
「やだ!呼ぶ!馨!ゆう!やっぱり持つべきものは親友だーー!」
新太くんはちょっと泣いていた、と思う。
文化祭・体育祭をもって無事小早川祭は終了。
結果は1年の部4位に終わった。ミヤコのクラスは3位で商品は映画のチケットだったって。




