資料室にて
やってしまった。
俺はハルカの腕をふり払ってしまったことを後悔していた。
後夜祭のあと、高垣や川上から何があったのかは聞いた。
資料室に閉じ込められただなんてなんて酷いことをされたんだとも思うし、俺からの連絡を無視したわけではなくてできなかっただけ、とも分かってる。
分かっているけど、あの先輩は誰なのか、なぜ手を繋いでいたのか、そんなことを考えていたらもやもやしてハルカと面と向かって話せなくなった。
後夜祭の後からあの先輩と何度も2人で話しているハルカの姿を見た。嬉しそうだった。
もしあの先輩と後夜祭をきっかけに付き合ってる、なんて言われたらきっと俺は耐えられない。ハルカの笑顔を独り占めにできるのが俺じゃないなんて、そんなの嫌なんだ。
ハルカからメールが来た。
いつもは『話をしたい』『無視しないで』とか送ってきていたけど、今回は長文だった。
きっと昨日呼び止めて話したかったことだろう。
俺は勇気を出してメールを開いた。
内容を見て、俺昨日ハルカの腕を振り払ってしまったことを更に後悔した。
『資料室に閉じ込められて後夜祭に出ることができなかったことより、ゆうと話せなくなったことの方が辛いし悲しい』
***
「おはよ」
「お、おはよ!」
ゆうから挨拶をされて驚いて言葉に詰まってしまった。
昨日メール読んでくれたのかな。
昼休みになったら、やっぱり直接謝ろう。そしてまた前みたいに仲良くできるといいな。
昼休み、私はゆうに声をかけように立ち上がった。
「え、あれ?」
ぐんぐんとゆうが近づいてくる。
「ちょっときて」
ゆうに腕を掴まれそのまま教室を後にした。
ゆうの方が身長が高く足が長いからか私の歩幅では追いつかず小走りになった。
辿り着いたのは資料室だった。
ガラガラとドアを開けたと思うとゆうは急に立ち止まった。
「ぶっ!」
急にゆうが立ち止まったため私はゆうの背中に思い切り顔をぶつけた。鼻の先がヒリヒリする。
顔を摩りながらゆうを見ると、ゆうは私を思い切り抱きしめたのだ。
なんだかゆうが泣いてる子供みたいに感じて、背中をぽんぽんとしてみた。
「ゆ、ゆう?」
「・・・ごめん。嫌な態度とった」
沈黙の後、ゆうが口を開いた。
「よかった・・・もう話せないのかと思った」
「うん、ごめん」
「私がいけなかなったの。後夜祭、ゆうと約束してたのにごめんね」
「それはもういい。高垣とかからここに閉じ込められてたって聞いたから。あのさ・・・」
ゆうは言葉に詰まった後、抱きしめていた体を離して、私の目をじっと見た。
「あ、あのさ・・・」
「うん?」
「あの人誰?」
「あの人って?」
「あの先輩。最近、やけに仲のいい」
先輩?石井先輩のことかな?
「私がここに閉じ込められてたの見つけてくれて、そこからいろいろ気にかけてくれてるんだ」
私がそういうと、ゆうは一瞬ほっとしたような表情をしたがすぐになんだか不満そうな顔になった。
「ゆう?どうしたの?」
「こんなところで、その先輩と2人きりって、何もなかった?」
何も・・・?
「何もって何??」
「男と2人きりだったわけでしょ」
「そうだけど、先輩と話したのも初めてだったし別に何もないよ」
まぁお化け屋敷で会ってたみたいだけどね。
「じゃあなんで、後夜祭の時あいつと手を繋いでたんだよ」
「あっ、見てたの?」
「見えたの」
「結衣ちゃんと会ったら気まずいなぁって思って後夜祭出たくなかったんだけど、先輩が絶対行こうって背中押してくれて、それでまぁ勢いみたいな感じで」
「はぁ?」
なんだか浮気を問い詰められてるみたいな気持ちだ。
「で、でも!別になんの意味もないっていうか、私もびっくりして」
なんでこんな話に?どうして先輩のことを気にするんだろう。
ひょっとして・・・
「ヤキモチ?」
「ばっ!・・・そうだよ。悪いか」
ちょっと冗談のつもりで言ったのに、ゆうの耳が真っ赤になったのに気がついてしまった。
え、本当に?
「飯食べ行こう」
ゆうはまた私の腕を掴み、資料室をでた。
一応仲直りできたってこと?
「私は先輩と手を繋いだことより、こうやってゆうとまた話せるのが嬉しいよ」
「ばか」
「なんでよ!」
「もう今度から絶対ケータイポッケに入れとけよ」
「・・・うん」
「ホイホイ他の男と手を繋ぐなよ」
「私からじゃないもん」
「ハルカに隙があり過ぎんの!」
「そんなことない」
「ある」
「ゆうはもう嫌な態度取らないで」
「ハルカ次第」
「もう!!」
帰りは歩けた。きっとゆうが歩幅を私に合わせてくれたからだと思う。
***
「ハルカちゃんと中西、2人でどこ行ったんだろう」
「今日は中西くんに譲ってあげなよ。やっと仲直りできるんじゃない?」
「そうだけどさぁ。っていうかなんで川上ってそんなに心広いわけ?」
「大人だから」
「同い年だろ!」
「精神的な話なんですけど」
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