逆恨みという言葉をあなたに捧げます
クラスの片付けも無事終わり残すは後夜祭となった。
キャンプファイヤーの準備で数名男子が手伝うようにと先生からのお達しがあり新太くんとゆうと馨くんは一足先に校庭に手伝いに行っていた。
始まる前にトイレに行っておこう。
トイレから出ると結衣ちゃんがいた。
「あ、中川さんやっと見つけたぁ」
「な、何かな?」
「なんかね、ゆうが探してたよ」
後夜祭が始まるからわざわざ呼びに来てくれたのかな?
「ありがとう、ケータイ教室だから取りにってから合流するね」
「だめ!」
教室に戻ろうとする私の腕を結衣ちゃんが掴んだ。
「え?」
「なんかかなり急いでたから、緊急事態っぽいよ。結衣が案内するからすぐ行こう」
結衣ちゃんはそのまま私の腕を引っ張った。
「あ、ここだよ!この奥で待ってるって。早く行ってあげて」
結衣ちゃんに連れてこられたのは何故か資料室だった。
なんでゆうは資料室に?と思っている間に結衣ちゃんに背中を押された。
「え」
声を出した時にはもう遅い。扉を閉められてしまった。
「結衣ちゃん?」
「本当中川さんってグズなのに結衣の邪魔ばっかり」
扉を開けようとしたけど、何かが引っかかって開かない。
閉じ込めようってわけね。でもなんで?
「開けてくれない?」
「開けるわけないじゃん。バカなの?」
「なんでこんなことするの?」
「ミスコンに千堂さん出させて、結衣の優勝妨害したり、後夜祭もゆうと一緒ですって?新太もあんたと行きたいからってこの結衣の誘いも断るし。ムカつくのよ。どれだけ男キープしたら気が済むの?」
結衣ちゃんは捲し立てるように話すけど、言動には全く納得できない。
「私がミヤコをミスコンに出させたわけじゃないし、優勝したのはミヤコの実力じゃん」
なぜそんな理由で私が閉じ込められるのか。
「うるさいうるさい。あんたは後夜祭に出ずにここにいればいい。あんたの代わりに私がゆうと新太と過ごすから。誰かにこのこと言ったら、本当にタダじゃ置かないからね」
「結衣ちゃん、ふざけてないで出して!」
大きな声を出すが、返事はない。
本当に結衣ちゃんは私を閉じ込めて行ってしまった。
「えー、本当に?」
資料室は校舎の奥まったところにある。なおかつ今は後夜祭で生徒も先生も大体は校庭に出ているからこんなところに人は来ないだろう。
ケータイは教室だし。
ゆうはいないことに気がついて私を探しに来てくれるのかな?
後夜祭に出れない悲しさと結衣ちゃんへの怒りの気持ちもあるけど、トイレだけは行っておいてよかったな、なんて呑気に考えていた。
***
おかしい。
後夜祭の時間になってもハルカの姿が見えない。
教室は誰もいなかったと田中が言っていた。
「ミヤコさん!俺と踊ってください」
「もーついてこないでよー!」
千堂なら知っているかと思ったが、横田のせいでそれどころじゃないらしい。
メールや電話もするが一向に返事がない。
「ハルカちゃんは?」
「俺も探してる」
「中西と踊りたくなくなっちゃったんじゃね?」
「はぁ?そんなわけないだろ」
高垣が茶化す。
「あ、なぁなぁ中西」
「あ?」
クラスの男子に呼び止められた。
「中川さん、お腹痛いから帰るって」
「はぁ?」
「急ぎだから伝えてって言われた」
「ハルカちゃん体調悪いなんて、心配だな。佐々木、伝言ありがとな!」
「高垣くんって本当単純だね」
「え?なんで?」
「中西くん」
「あぁ。なぁ、それってハルカ本人から聞いたの?」
「え?あぁ−−」
佐々木とかいうクラスメイトの答えを聞いて、俺たちはゾッとした。
『結衣ちゃんが言ってたよ。きっと待ってるだろうから伝えてあげてだってさ。優しいよな本当』
あの女はなんでそこまでハルカにこだわるんだ。
絶対何か起こってる。ハルカ、無事でいてくれ。
***
「お尻痛い・・・」
資料室は埃くさくて、やることもないから椅子に座っていた。
ただの木の椅子だからまだ短い時間しか経ってないのにお尻が痛む。
窓からはギリギリ校庭は見えず、楽しそうな音楽やみんなの声だけ聞こえる。
流石に寂しい・・・。
「あ!ここか!誰かいる?」
急に人の声がして急いで扉の方へ戻る。
「あの!扉って開けられますか?」
「お、いたいた!開けるね」
扉が開きそこにいたのは知らない男の人だった。




