ゆうちゃん違いじゃないんですか？
いい目覚めだ。
トーストをかじり制服を着て、髪の毛をアイロンでストレートにする。
今日から私は女子高生です。ウフフ。
新しいローファーはちょっと固いけど踵に絆創膏を貼っているから大丈夫。ウフフ。
『小早川学園 新入生クラス分け』
体育館の前に張り出されているクラス分けを確認する。
私は1年A組だった。
1クラス30人。A・B・C組は普通科、D・E・F組はスポーツ科だ。
「え、うそ」
中川ハルカ、中西ゆう！！！！ゆうちゃんと同じクラス！！！！！
バスケやってるって言ってたからてっきりスポーツ科での入学かと思ってた。
なんてラッキー！神さま！ありがとう！！これで私はもう友達が1人いる！！超ハッピーだ！！
もう来てるかな？
ルンルンで体育館に入る。私の席の隣は誰もいない。
おとなしくパイプ椅子に座る。すでに何人かはグループ化してニコニコと話始めている。
私も混ざりたい。どこ中？とか言いたい。ゆうちゃん早く来て。
＊＊＊
前の子は男子だった。座っていても背が高いのが分かる。
急にくるっと後ろを向いた。
「よろしく。俺、高垣新太」ニコッと笑顔で挨拶してくれる。
「あ、よ、よろしく。私中川ハルカ」どもってしまった。
高垣くんはどもった私をみてプッと吹き出し笑っている。急に話しかけられるから体がついていかなかっただけだもん。
「緊張してる？」
「さすがにね」
「へぇ、かわいいね」
「え」
かわいいね、かわいいね、かわいいね。誰が？私？そう、私です。
ひょっとしてもうラブストーリー始まった感じですか？
高垣くんってさわやかだし、イケメンの部類に入ると思う。髪の毛サラサラ。
そんな高垣くんから私かわいいって言われたんですけど！！！！
「なんかさっきからきょろきょろしてて中川さんって小動物みたいでかわいい」
「そういうことか」
「ん？なにが？」
「いいえ、なんでもないです」
小動物って、ねずみってこと？ねずみ的なかわいさってどういうこと？これは喜んでいいのか？
もう少し前歯出してねずみに寄せたほうがウケるかな？
入学式という雰囲気にのまれて舞い上がってしまった自分が恥ずかしい。
「そろそろ静かにしておけ」
急に隣から声がして横を向く。
「え」
そこ、ゆうちゃんの席なんですけど。
男子がゆうちゃんの席に座りこちらをにらんでいる。背も高いし目つき鋭いしちょっと怖い。
「席、間違ってませんか？」勇気をだして伝える。ゆうちゃんの席は私が守る。
「は？合ってるから」
「え？だってそこゆうちゃんの席なんですけど」
「ゆうちゃんって、それ、俺」
「えええええええ！！！！」
『これより新入生入学式を開式します』
そこから記憶がない。
初対面の人にかわいいなんて言われたら舞い上がりません？
