絶対楽しい夏にしてみせる
「ゆうは明日のミヤコの応援行く?」
「ミヤコって千堂の?俺大して仲良くないけど」
「そうなんだ、高垣くんも一緒に行くからゆうも行くのかと思った」
「行く」
「え」
「行くから」
高垣くんの名前を出すと行くと即答したゆう。
日頃高垣くんにツンケンしているけどやっぱり結構仲良しなんだな。
『決勝戦見に来て欲しい!!』
なんとミヤコは県大会準決勝までストレートで勝ち上がり、決勝戦まで駒を進めているのだ。
この試合に勝ったら全国大会という大切な試合の見学に声をかけてくれた。
差し入れはぜひ蜂蜜レモンを、というミヤコのリクエストに答えて今日は蜂蜜レモンを仕込もう。
「何作るの?」
「蜂蜜レモンだよ。ミヤコが欲しいって」
私はエプロンをしてレモンを洗い、薄く切り始めた。
ゆうはおもむろに手を洗い、私の横にきた。
「一緒にやってくれるの?」
「危なっかしくて見てられないから」
「大丈夫だよ」
「いいから。ハルカはレモン洗って。俺が切るから」
「はーい」
ゆうはレモンを切り出した。中々上手にやるじゃん。
仕込んだ蜂蜜レモンは冷蔵庫で寝かせて、明日持っていく。美味しくできているといいな。
***
「おーい!中川さん!こっちこっち!」
「高垣くん、お待たせ!なんか焼けたね」
「バイトでプールの監視員したら焼けたよ。今日は中西も来たんだな」
高垣くんは日焼けしていた。ニコッと笑った時の笑顔が眩しい。
「なんか久しぶりに会うとドキドキしちゃうな」
「え?」
「へへ、夏休み前半は全然会えなかったから」
「俺も会いたかったぜ、高垣」
ゆうは私との間に割り込んで、高垣くんと肩を組んでいる。
「せっかく中川さんと2人っきりだと思ったのに」
「そうはさせるか」
やっぱりこの2人、仲良いんだな。
試合まではもう少し時間があるようで、コートでは選手たちがウォーミングアップをしていた。
「あ!ミヤコいた!!」
ミヤコを発見。ミヤコは真剣な表情でこちらには気がついていない様子だった。
「ハルカ、千堂集中してるから静かにな」
「そうだよね、ありがとう」
なんだかこっちまで緊張しちゃうな。
試合中のミヤコはとても冷静で、だけど燃えている、静かに燃えている感じだ。
「お、中川さん始まるよ」
「う〜ドキドキする」
「ハルカがドキドキしてどうすんだ」
ついに試合がはじまる。
***
「あー千堂惜しかったなぁ、最後までいけると思ったけど」
「ミヤコ・・・」
ミヤコは後一歩のところで敗れ、高校1年生女子の部準優勝となった。
表彰式を終え、選手退場の中ミヤコと急に目があった。
私はミヤコに笑いかけようと思ったが、ミヤコの顔を見て何もできなくなってしまった。
見たことないくらい、悔しそうな顔をしていたから。
「あ〜悔しすぎる!っていうかこのレモンおいしい!!」
私たちと合流したミヤコは差し入れの蜂蜜レモンをすごいスピードで食べていた。
「中川さんの手作り、お、俺も食べたい」
「だめ!全部私が食べるの!」
「ミヤコ・・・」
「ちなみに俺も一緒に作った」
「え?中川さんと一緒に作ったの!?呼んでよ中西ー!」
どうしよう、友達なのにこんな時に気の利いた言葉が見つからない。
私は黙ったまま蜂蜜レモンをやけ食いしているミヤコを見つめていた。
「ハルカ!」
「は、はいっ!!」
ミヤコはぎゅっと私に抱きついた。
「これで夏休みの鬼練習ひと段落するからいっぱい遊んでね」
「うん。ミヤコお疲れさま」
「ハルカぁ!悔しすぎるよー!!次は絶対勝つから、また見に来てくれる?」
「もちろん!」
「とりあえず、夏祭り一緒に行こうね!」
「俺も行く!」
「高垣はくんな。俺が行く」
「なんで!!」
「ミヤコさーん!!」
「げ、横田。じゃあハルカ!また連絡するね!今日はありがとう」
遠くに横田くんが見えた。
ミヤコは試合終わりと思えないくらいのスピードで逃げていき、それでも笑顔でミヤコのあとを追う横田くんに笑ってしまった。




