イベントの前ってみんなは眠れる派?
「ハルカ、あんた元気でね」
「父さんたちはベトナムが楽しみすぎてしょうがないよ」
「ね、あなた。あっちではディナーの時はキャンドルの灯りだけにしない?」
「新婚さんみたいだな。ママ、向こうでは二人っきりだな」
「あーはいはいいってらっしゃいませ。たまにはメールちょうだいね」
無事中学校の卒業式も終わり、寮の引っ越しも終了、その足で両親はベトナムに旅立った。
もっとこう別れを惜しむとかしなくて良かったのでしょうか。一応一人娘なんですけど。ベトナムから戻ってきて妹か弟がいたらどうしよう。勘弁してくれ、こんなことを娘が考えてしまう振る舞いはやめていただきたい。
「はぁ~。やっと一息つける」
私はベッドで大の字になり目を閉じる。やけに時計の音が気になる。
これから本当に一人で暮らすんだ。寮だけど。
寮といっても学園が借り上げているアパートだ。部屋にミニキッチンはあるけど、希望者は学園の食堂でご飯も食べられる。
食堂のご飯はおいしいらしい。さっき寮の廊下で女の子たちが話してたのをこっそり聞いていた。ワクワク。
明日は入学式。久しぶりにゆうちゃんと会える。10年ぶりかぁ、何を話したらいいんだろう。元気にしてた?とかかな。
新しい生活が始めることへの不安はあるけど、一から友達を作らなくていいっていうのはなんて心が軽いんだろう。私にはゆうちゃんがついている。
ゆうちゃんはどんな性格なんだろう、バスケもやっているし元気系かな?っていうかスポーツ科だからクラスは絶対違うよね、悲しい。今気が付いてしまった。
さっき廊下で話していた女の子たちに話しかけてみるか、いや、今までの経験上もうグループ化しているところに馴染むのは相当な努力と気の利く人間しかうまくできない。
入学前に神経をすり減らすのは良くないと思う。やめよう。
小早川学園の制服、グレーのブレザーにグレーチェックのスカート、リボンは紺色で上品な感じなんだよね、さすが私立。
これを明日から私が着るんだなぁ。
母のつくったお弁当を食べ、シャワーをさっと浴びて、ベッドに横たわる。
引っ越しの疲れも相まって早々に眠ってしまった。イベント前でも眠れる派なのよね、私。フェイスパックくらいすればよかった。明日入学式だもん。友達出来るかな。
私は眠れるけど早起きしちゃう派