君の一途さに乾杯
中西くんと高垣くんは相変わらず里中さんに付き纏われていて、最近昼になるとすごいスピードで消えるのだ。
そして授業ギリギリで戻ってくるから、本当に中川さんと2人きりで過ごす時間が増えた。
たまに2人から『屋上にいるから2人できて』って連絡が来ていたけど、里中さんや横田の視線もあり僕は無視を決め込んだ。
口いっぱいにパスタを頬張っている中川さんは、いつか高垣くんが言っていたように小動物みたいで可愛くて、僕は笑ってしまった。
「川上くん、何笑ってるの?」
「ごめんごめん、口いっぱいに頬張ってるのが小動物みたいで可愛くて」
「小動物・・・。前高垣くんにも言われたよ。私そんなにねずみに似てる?」
「ねずみって・・・」
小動物って言われて真っ先にねずみを思い浮かべる中川さんにまた笑ってしまうのだった。
そして最近の僕の日課は中川さんに見つからないように彼女の靴箱の手紙を処理することだった。
念の為中身を見るんだけど、(本当のラブレターだったら困るからね)陰湿なものばかりだった。
最近中川さんは、少し元気が出てきたみたいで、横田とすれ違ったり、同じ空間にいても悲しい顔をしなくなった。
それがおもしろくないのか、手紙の内容はどんどん攻撃的で過激なものになっていった。
結衣ちゃんに謝らなければ殴るーー
無視をしていればその内飽きて終わるかなって思ったけど、本当毎日毎日しつこいな。
ついに脅してきたのだ。彼女はこの手紙を知らないし、こんなにしつこい人間だから本当に手を出すかもしれない。
なるべく穏便に済ませたかったし、僕は暴力が嫌いだ。
「なんだそれ?」
気がつくと後ろに中西くんがいた。
「里中さんは?」
「巻いて逃げてきた。多分高垣が捕まってるけど」
「なんであんな女の好きにさせているの?」
「好きになんてさせてねぇよ。本当にしつこいだけ。で、それはなんだって聞いてるんだよ。ハルカの靴箱だろ。見せろ」
中西くんは僕の手から手紙を奪い去り、驚いていた。
「なんだこれ、お前が書いたのか?」
「何言ってんの。そんなわけないでしょ。犯人はわかってるけど、中川さんにこんな内容見せたくないから僕が処分してたの」
「誰だ。これやったの。なんでハルカに」
中西くんは僕を睨みつける。ってなんで僕を睨みつけるんだよ。
「君たちがイチャイチャしている里中さんには過激な親衛隊がいるってことだよ」
「そいつらがなんでハルカに嫌がらせするんだよ」
「さあね。里中さんのナイト気取りでもしてるんじゃない?今までは無視できるしょうもない内容だったんだけど、これは無視できないね」
いつもは中川さんと一緒に帰って寮まで送っているんだけれど、今日は図書室当番だ。棚の多く並ぶ図書室は死角も多い。
本当は僕1人で彼女を守りたかったけど、今日はリスクが高い。
僕は中西くんにも協力してもらうことにしたのだった。
***
私と川上くんと横田くんはE組にいた。
みんな練習に行っているのだろう、クラスに人はいなかった。
横田くんはイライラしているようでずっと貧乏ゆすりをしていた。
「お前は本当に関係ないだろ」
横田くんは私の隣に座っている川上くんに言った。
「は?お前何言ってんの。君のヘッタクソなラブレター、見ていられなくて僕が捨ててあげていたんだよ。毎日毎日よくやるよ」
「えっ!」
悪口手紙がぱったりとこなくなったのは、川上くんが処分してくれていたからだったのか。
「女の子に男が凄んで恥ずかしくないわけ?しかもやり方が陰湿すぎ」
「なんだよ、お前は黙ってろよ!」
横田くんは勢いで立ち上がる。ガタっと椅子が鳴った。
流石にちょっと怖い。
「黙るわけないでしょ。何あの内容」
いつも私と一緒の時は川上くんは優しくて癒し系なところが多いんだけど、今隣にいる人は一体どなたでしょうか・・・。
綺麗な川上くんの目は細められ、まるでゴミを見るような目で横田くんを冷たく見つめている。
「私は結衣ちゃんをいじめたりしてないよ。むしろ関わってないよ」
私はいまだに立ち上がっている横田くんにそう告げた。
「いじめられた方がいじめられたって感じたら、それはもういじめだろ」
川上くんは言い返そうとしてくれていたけど、私が手を握って止めた。
「じゃあ横田くんは私のこといじめたね。私、すごく嫌だった」
「は?話をすり替えるなよ。俺はいじめてない!結衣ちゃんのためにやったんだ!!お前が結衣ちゃんを悲しませるから!結衣ちゃんはクラスメイト思いのいい子なんだぞ!」
横田くんのような変に強い正義心のある人には何を言っても通じない、そう思った。
自分が正しいと思っているから、こちらの話は入っていかないんだ。
「結衣ちゃん結衣ちゃんうるさいねえ」
ガラッと扉が開いて、結衣ちゃんとゆう、そして高垣くんが入ってきた。




