ランチってこんなにスリルあるものでしたっけ?
ゆうがついにハルカちゃんに告白した。僕は焦る気持ちもあったけど、正直この後の展開は少し予想ができていた。
「ハルカ・・・」
「あ、あー!昼はミヤコと約束があったんだった!」
ゆうとハルカちゃん、2人の間がかなりギクシャクしているのは喧嘩をしたからではない。
ハルカちゃんはどうしていいか分からなかったり、照れているとこういった行動をとるといったことは今まででわかっている。
「か、馨・・・」
「そんな顔しないでよ。一緒にご飯行こう」
ゆうはハルカちゃんに避けられまくっている。本人からしてみればたまったもんじゃないかもしれないけど、俯瞰してみてみると案外面白いものだね。
ただ、忘れちゃいけないのは、ハルカちゃんがゆうのことを意識しまくっているからこうなっているということだけど。
「ハルカちゃん、僕には普通なんだよねー」
そう、良くも悪くも普通なのだ。あの日ハルカちゃんを抱きしめたことは誰にも言ってない。
ハルカちゃんのゆうへの態度をみていると、動揺しまくって僕とのことなんて忘れちゃってる感じかな。
「僕のことも意識してもらわないとなぁ」
「ハルカはいっぱいいっぱいだと思うからだめ」
「君のせいでしょ。っていうか僕応援する気なんてないし」
「なんだよ、あの日優しく慰めてくれただろ。ハルカちゃんにはゆっくり考える時間が必要なんだよーとか言ってたじゃん」
「そりゃね、ハルカちゃんにはゆっくり考える時間が必要だよ。でもそれはゆうのことだけじゃないもーん」
「かわいこぶるな」
ゆうは食堂でトレーを取るとキョロキョロと辺りを見回している。
ハルカちゃんでも探しているんだろう。お生憎様、あそこで千堂さんと新太と一緒に食事中だ。
ハルカちゃんは僕とゆうの存在に気がついたようで固まっている。
ゆうに気がつかれないように、ジェスチャーでそっちに行っても良いか合図すると、ハルカちゃんは顔を真っ赤にして首をふるふると横に降った。
様子のおかしいハルカちゃんに気がついた千堂さんがハルカちゃんの視線を追って僕たちに気がつく。ニヤリと意味深に表情を変える千堂さんをみると、どうやらハルカちゃんは全て千堂さんに話しているようだ。
新太はそんな2人に気がつかないままラーメンのスープを味わっている。
本当、新太って脳天気だよね。もちろん、いい意味で。
「結構混んでるみたいだし、あそこのカウンターで食べよう」
ハルカと一緒に食べたかった、なんて言っているゆうを引っ張って、僕はカウンター席へ向かった。
僕たちが遠ざかっていくことを確認したハルカちゃんは力が抜けたのか耳まで真っ赤にして俯いていた。
なんだか面白くないよね。それが全部ゆうのせいだなんて。
「あ、俺の唐揚げ」
僕はゆうの定食の唐揚げを一つお箸で摘んだ。
「抜け駆けした罰」
「なんだよ抜け駆けって」
ゆうにはたくわんを1枚お裾分けした。
「何これ」
「僕の分」
「何が」
「んー?僕の抜け駆けの分」
「は?」
後夜祭のあの日、かわいすぎるハルカちゃんを抱きしめたことはゆうには教えてやらないんだ。
***
どうしよう、明らかに不審だよね。うん、自分でもわかってる。
あの日から私はゆうを直視できないのだ。おかしい、ゆうをみると背景に花畑が見えるなんて。
「ってそれもう好きじゃん。付き合っちゃいなよ」
「いや、きっと動揺しているから見える幻想だよ・・・!」
「いや、幻想は幻想だと思うよ。でもそれラブな幻想じゃん!!」
ミヤコは定食の唐揚げを口に頬張る。呆れたような表情しないで・・・!
「もし付き合ったら?ゆうとキスとかするのかな?恥ずかしくて無理だよ!!」
想像しただけでも恥ずかしすぎる。付き合うとかどうとか考えたことなかった。
「まぁキスは置いておいて、一緒に帰ったり、カフェ行ったりとかさ、今までとそんなに変わらなくない?」
「た、確かに・・・」
「なんの話してんのー?」
「天気の話。ね、ハルカ」
「え、えと、うん!」
新太くんがラーメンを持って合流した。ちょっと待って、これだとゆうもこっちに来ちゃうんじゃ?
やばい、やばいぞ。心臓がドキドキしすぎて痛い。
私はゆっくりと辺りを見渡すと、なんということでしょう。トレーを持った馨くんと目が合いました。ええ、そうです。隣にいるゆうも見えています。
私は必死に馨くんに首を横に振って見せた。お願い、今日は、今日だけでいい!今日はだめ・・・!
何かを察した馨くんはゆうを連れて離れたカウンター席へ消えて行きました。馨くんは命の恩人だ。
「後夜祭のあの日、抱きしめられた気になる同級生と、ハルカに告白した幼馴染・・・。青春ね、ハルカ」
こそっと耳打ちするミヤコの表情はなんとも楽しそうだ。
そうだよね、ちょっと動揺しすぎて忘れかけてたけど後夜祭の日は色々ありましたよね。私、馨くんに抱きしめられました。あれ、でも何度か抱きしめられたことあるよね?そうか、割と誰にでもそういうことするのかも。クォーターの血が騒いでいるのかも、なんて無理矢理納得しようとするけど流石に無理だ。
馨くんは、少しは私のことが好き、だと思ってしまって良いの?自惚れすぎ?
頭を抱える私に、今日のラーメンのスープが美味しいと明るく教えてくれる新太くんの声に反応できなかった。
新太くん本当ごめん。




