去年もタピオカ飲んだ気がする
「じゃあ今日は程々に楽しみましょうー!」
文化祭1日目が始まった。
「今年は楽だね」
「ね!連れていかれるまでは自由時間だもんね」
準備も景品のお菓子と、人探しのターゲットについての情報が書いてある用紙の作成、教室を少し飾りつけるくらいだった。
私は馨くんと1年C組のクレープの屋台に並んでいる。
ゆうはミヤコに連れていかれて新太くんのクラスへ行っている。お化け屋敷だ。
「馨くんはお化け屋敷行かなくてよかったの?」
「行ってもいいけど、僕はハルカちゃんといたいもん」
2人でクレープなんでデートみたいだよね、なんて相変わらず馨くんはふとした時にドキッとするようなことを言うのだ。
「お待たせしました」
馨くんはいちご生クリーム、私はバナナチョコのクレープを受け取り、列から離れた。
クレープをひと齧り。バナチョコって最高だよね。馨くんのいちご生クリームも美味しそうだ。
「結構経つけど戻ってこないね。怖くて進まないのかな」
「でも、ミヤコはお化けとかすごい強いよ。全然怖くないって言ってた」
「じゃあ案外ゆうが怖がって進まないのかもね」
お化けに驚いて声を上げているゆうを想像したらなんだか笑えてきて、馨くんも同じだったようで2人で笑ってしまった。
「怖いわけないだろ、ばーか」
「混んでただけよ」
ゆうとミヤコが戻ってくるなり、ゆうは私の持っていたクレープにそのまま齧り付いた。
「あー!何すんの!私のクレープが!!」
勢いよく齧りついたせいで私のクレープのバナナは全ていなくなっていた。許すまじ・・・!
「ゆうのバカー!」
「間接キッスとバナナゲット」
「本当中西って子供なんだから・・・」
もうチョコレートが少しついているクレープ生地しかない・・・。悲しい・・・。
「ハルカちゃん、僕のクレープ食べる?いちごまだあるよ」
馨くんが私の口元にクレープを差し出す。いちごのいい匂い。
「川上までどさくさに紛れて間接キス狙ってるのバレバレなんですけど・・・。ハルカ、男どもは置いていこう」
「俺と間接キスしたことについてはなんとも思わないの?」
「思わないよ・・・」
ゆう・・・食べ物の恨みは怖いんだよ。私はじとりとゆうを睨みつけた。
***
「ほんっとにゆうってずるいよね」
「悔しかったら馨もやってみろ。失敗したくせに」
「千堂さんがいなかったら成功してたし。それで、新太はどうだった?」
「子泣き爺似合ってた。ほら、写真。絶対ハルカに見せないでって言ってた」
「何、これ・・・!あはは、本物みたいだ。だから来い来い言ってこなかったのか」
***
「ミヤコのクラスは今年何やるんだっけ?」
「今年は縁日だよ。やりたい?」
ヨーヨー釣りと射的とスーパーボールすくいらしい。
「ミヤコが店番の時に行くね」
「待ってるね」
ミヤコとフランクフルトとたこ焼きを食べて、ミヤコは店番の時間になったため一緒にミヤコのクラスへ移動した。
ハッピを着たミヤコに応援されながら射的をしていると、後ろから声をかけられた。
「ハルカせんぱーい!」
染谷くんだった。
「やっと見つけました!はい、俺と来てください」
「えっ何この展開!?」
ミヤコはニヤニヤしながら私と染谷くんを交互に見ている。
「人探しのターゲットだっただけだよ!」
「俺はハルカ先輩のこと好きですけどね!さぁ、戻りながらこの間の返事を聞かせてください!」
染谷くんは、がしっと私の腕を掴むと廊下に出るように引っ張っていった。
「えーー!ちょっとハルカ後で絶対詳細教えてよね!」
遠くからミヤコの面白がっている声が聞こえる。これは今日ファミレス集合になるな・・・。
「実は、もう俺5回も人探ししてるんですよ」
染谷くんはポッケから景品の一つである飴を出して私に手渡した。流されるままに私は静かに受け取ってしまった。
「え、なんでそんなに?」
「なかなかハルカ先輩に当たらないからですよ!」
もー本当に大変だったんだから、と染谷くんはほっぺたを膨らまして私を見る。
「どうして私なの・・・?」
この間は驚きもあってうやむやになってしまったが、私はこれが聞きたかったのだ。なんで、私なんでしょうか。
「じゃあ先輩、一緒にタピオカ飲んでくれます?」
「た、タピオカ?」
「はい!俺のクラス、タピオカなんです!お願いします」
染谷くんは一度離していた私の腕をまた掴んで歩き出した。




