アルバイト
イベントスタッフのアルバイトで給仕の係りになった。
何度もやっているので慣れたものだ。
えんじ色の着物のような制服で、少し動きにくいけど、おしとやかに見える。
テーブルが8卓程度の小ホールは、基本的に二人組で担当する。
食事の進行が落ちつき、一人がホール内で見回し、一人がホールの外で片付けをする。
私は少し席をはずし、すぐ戻ってきた。
ホールを覗くと、ホール内に立っている人がいた。
それならと、外の片付けをしていた。
しばらくすると、ペアである先輩が来た。
「あら、誰が中を見てるの?」
「あれ?さっき居た人は誰だろう?」
二人でホールに入ってみると、係りは誰も居なかった。
「え、さっき確認した時、立っていた人が居たのに???」
「でも誰もいないじゃない?」
「すみません。お客さんに謝ってきます」
一番奥の常連さんのところへ行って謝った。
「担当が部屋を空けてしまい申し訳ありません。ご不便はございませんでしたか?」
「え?誰か居たよ?」
「え?」
「しっかり顔は見てないけど、あまり見たことがない人だった気がするなぁ」
「そうでしたか。ご不便がなかったのなら良かったです。お騒がせ致しました」
ペアの先輩に、お客さんから聞いた通り話した。
「やだ怖い。どういうこと?」
「私もわかりませんよー」
良くわからないけどありがとうございます。と心で思った。