トランプ占い
人のいない教室でアカリから声を掛けられた。
「ねえ、私も占ってよ」
「え?良いけど?」
これから部活に行くらしいアカリは制服のままテニスラケットでバドミントンのシャトルを器用にポンポンとドリブルのように打っていた。
「あれ?アカリって何部だっけ?」
「じょばれ(女子バレー部)」
「そのラケットとか、シャトルは誰のなの?」
「あー、そこにあった」
勝手に使って怒られないのかな?
それにしても変な組み合わせ。
私は忘れ物を取りに教室に来た。
部活で使う小物を机に入れたまま来てしまったからだ。
「えっと何占うの?」
「時計占い」
「わかった。じゃそこに座って」
私の前の席の椅子をこちらに向けてアカリは座った。
私は鞄からトランプを取り出した。
数回きってからアカリに渡した。
「じゃあ、このカード、気が済むようにきって」
「うん」
しゃしゃとアカリがカードを切る。
「きった。はい」
アカリからきったカードを渡された。
私はカードを時計のように並べる。
真ん中に並べたカートを1枚ひっくり返し、時計の要領で数字の場所に重ねる。
重ねた場所の下からカードを取り、数字を見て同じように繰り返す。
真ん中のカードが全て無くなるまで繰り返す。
明けられた場所の枚数で、運の良い時間や悪い時間を占うのだ。
「これによると、明日の4時と7時が運が良くて、6時と8時が良くないみたい」
「へぇ、ありがとう。お礼に私が知ってる占いも教えるよ」
「え、何か知ってるの?」
「相性占い」
「おしえてー」
「うん。まずは、トランプを良くきって、エースが出てくるまで捨てて、エースと絵札だけ並べて、こんな感じ」
「うん」
「ハートが女子の気持ち、ダイヤが行動、スペードが男子の気持ち、クラブが行動」
「うんうん、それで?」
「これだと、気持ちが離れてる。って感じ」
アカリはささっとカードを組み換える。
「こんな風だと両思い」
またまた組み換え
「こういう場合は相手に好きな人がいる、もしくは障害が大きいとか」
「へぇ!すごいねー。ありがとう。明日からやってみるよ」
「じゃ」
そう言うとアカリは片手をあげ部活に行くのか教室を出ていった。
いつもあんまり興味無さそうに見えたのに、人前が恥ずかしかったのかな?
私はそのあと部活に行き、翌日から教わったばかりの占いを始めた。
休み時間になると、集まって話したり、トランプでゲームをしたり、女子の和が沢山できる。
集まって話していたグループも、占いを始めると興味津々で覗きに来る。
「今日は何やってんのー?」
「あれ、いつもと違くね?」
あまり話さない二人から声を掛けられた。
占いには興味ないと思ってたんだけど違うのかな?
見た目に派手な二人は、普段は私達にあまり関わってこない。
今占いの最中のミカは少し気まずそうにこっちをみた。
「あ、終わるまでちょっと待ってって言ってたよ」
気をきかしたヨウコが断ってくれた。
占いを終わらせ、先程の二人に声をかけに行った。
「さっきはごめんね。何か用だった?」
「いや、面白そうだから私も占って欲しいなって思ってさ」
「いいよー、でも、あくまで占いだから結果に責任は持てないからね」
「大丈夫、そのくらいわかってるって」
「じゃあ、どこか座って」
三人で座ると、私の正面に座ったアサミは少しすまなそうに言った。
「さっきは悪かったね。ミカちゃんに謝っておいて」
「あ、うん、わかった」
「何が占えるの?」
「時計占いと、相性占い」
「相性占いで!」
「うん。じゃあ、これ思いを込めてきってくれる?」
トランプを渡すと念を込めるようにきりだした。
そんなに真剣にしなくても良いのに。
はい、と渡されて昨日教わった通りに並べ、結果を伝えた。
「す、すげーあってる」
「そうなの?」
「これ、私もやって良い?」
「どうぞ。私も昨日教えてもらったばかりなんだ」
「じゃあ、じゃあ、私も!」
アサミと一緒に来たメグミも占って欲しいと言い出した。
同じようにきってもらいカードを並べ結果を伝えた。
「まさに、今こうだよ!凄いね」
「メグミのもか、占いってあたるんだ」
アサミもメグミも納得したらしく、とても感謝された。
その後、「自分でやっても当たらない!」とアサミとメグミが言っていた。
しばらくは仲の良い友人の頼みだけだったが、あるとき、別のクラスの面識の無い人から呼び出された。
「アサミから聞いたんだけと、もし良かったら占ってもらえないかな?」
「う、うん?いいけど?」
名前をコノハと名乗ったその人はアサミと部活が同じらしい。
同じ学校だから見かけたことくらいはあるけど全く話したことが無い人から頼まれるとは思わなかった。
「あくまで占いなので結果に責任は持てません。それで良いですか?」
「うん。それで良いよ」
カードを渡し、思いを込めてきってもらい、占った。
結果を伝えると少しひきつったように笑ってから
「ありがとう。もう少し頑張ることにするよ」
そう言ってコノハは帰っていった。
なんだか、ごっそり気力を奪われた気がして、すぐに立ち上がれなかった。
そのあとも、たまに知り合い以外からも頼まれ占ったりしていたけど、占うとぐったり疲れるようになった。
しばらくして、友達の占いをしたあとにアカリから声を掛けられた。
「ねぇ、たまには私も占って」
「いいよ」
教えた本人を占うのはちょっと面白いかも何て考えながら占った。
結果を伝えると、
「凄いねー。良く当たるねー。こういうのどこで習うの?」
「え?」
「いや、誰かに習ったりするんじゃないの?」
「いや、これ教えてくれたのアカリじゃん!」
「違うよ。私占いなんて全く知らないもん」
「え?じゃあ私は誰から習ったの?」
「とりあえず、私じゃないよ」
「まじ?」
「うん!」
血の気が引いた。