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暇ですね…

「暇です…暇過ぎて溶けそうです…」

「同じ景色が永遠と続いてるからな…」


 あの盗賊襲撃から早数日、魔物の襲撃が数回あった事以外は何事もなく、景色も何一つ変わりのない平原を進んでいます。

 平和なのは良いことなのですが、せめて景色は変わってほしい、それか街か村があってほしいです。

 ですがセルドによるとしばらく街は無いらしい。

 鳥の鳴き声や風で揺れる草木、馬車の車輪の音が耳に入り、暖かな日差しと揺れでなんだか少し眠くなってきました。


「ふぁあ…」


 徐々にまぶたが重くなって、意識がだんだん遠のいていきます…「おーい!」ん?

 意識が落ちる寸前で遠くから聞こえる呼び声に引き戻されました。

 せっかく気持ちよく昼寝でもしようと思っていたのに…タイミングが悪いですね。


「おーい!」


 再び聞こえた呼び声がどこから聞こえてくるのか、私は馬車からひょこっと顔を出して周囲を見渡します。

 すると遠くの方にある木の下に小さな影が三つほど見えました。


「セルド、誰かいるようです」 

「ん?どれどれ…」


 セルドは馬車を止め、私が指を刺した方角に目を凝らします。


「ほら、あれですよあれ」

「本当だな、女性が2人と馬が一頭居るな」

「よくそこまで見えますね…」


 私は性別どころか人間かすらどうかも分からないくらいですのに、随分と目がいいようです。

 それにしてもこんな何もない平原に女性2人で何をしているのでしょうか?

 先日の盗賊襲撃もありましたし、女性2人で油断させて…なんて事もありそうです。


「行きますか?罠の可能性も捨てきれませんが」

「大丈夫じゃないか?あの馬が怪我してるから動けないんだろ」

「…貴方の目、どうなってるんですか?」


 セルドの視力については後で調べるとして、私達は彼女達の元へ向かいました。

 少し進んだ頃に、小さな影の輪郭がはっきりと見えるようになり、たしかに女性2人と怪我をした尼崎見えてきました。

 2人は近づいて来る私たちを見て、少しほっとしたように喜んでいるようでした。


「こんにちは」


 私は挨拶をしながら馬車から降り、セルドは彼女達のいた木に馬の手綱を括りました。


「こんにちは!いや〜来てくれて助かったよ!」

「…こんにちは」


 1人は茶髪のおそらく同い年ぐらいの女性でした、身長は私より頭ひとつ高く、とても元気そうな人で、何がとは言いませんが随分ご立派なものをお持ちでした、別に羨ましいとか思ってませんよ?

 もう1人は青色の髪で身長は私と同じぐらいで年下でしょうか、眠たそうな目をしていました。


「所で何かご用ですか?」

「馬が怪我しちゃってさ、回復の精霊術使いを探してるんだ」


 話を聞くと2人で旅をしているらしいがつい先日盗賊に襲撃され、命からがら逃げ延びたが馬が怪我をしてしまったと、その盗賊についてはとても心当たりがありますね。

 馬は腹部に傷を負っており少しかわいそうですが、私は回復魔法は少しだけ、そう、ほんの少し苦手なのです。


「ほんと参るよね、通りかかった人たち全員に無視されてさ、もうどうしたものかと思ったよ!」

「それは大変でしたね」

「大変なんてもんじゃないよ、何日もここで足止め食らっちゃった」

「…疲れた」


 こんな何もない所で何日も足止めを食らえば疲れるに決まっていますね。


「セルドは回復系の精霊術使えますか?」

「得意ではないが、このくらいの怪我なら数分で治せるぞ」

「お、じゃあお兄さん、この子のことお願いしてもいい?」

「…お願い」

「了解」


 セルドは馬の腹部に軽く手を当て精霊術を使用します、緑色の優しい光に包まれた傷は少しづつ治り始めました。

 それから2.3分ほどで傷が治り、馬はお礼のつもりなのかセルドの顔をベロベロと舐め始め、私はセルドにそっとタオルを渡します。


「お〜!綺麗に治ってる、助かったよありがとう!」

「…ありがとう」


 元気な彼女は馬の頭を撫でて「よかったな〜!」と嬉しそうに微笑み、もう1人の眠そうな彼女は「…よかった」と小さく微笑むのを見てよほど大切にされているんだろうと思いました。

 2人は私達の方を真剣な眼差しで見つめ、頭を下げました。


「君達には本当に助けられた、この恩は必ず返す、名前を教えてもらえないだろうか?」

「お礼なら彼に言ってください、私は今回何もしていませんから」

「お礼なんていいよ、困っている人を助けるのは当たり前のことなんだから」

「…そう言うわけにもいかない、…私達の家族を助けてくれた、…恩は必ず返す」


 2人は頭を下げたまま動かない、きっと名前を言うまでこのまま動かない気なのでしょう。

 私とセルドは顔を見合わせて、仕方ないか…と苦笑いをしてしまう。


「ハルス王国騎士団所属、セルド・マグダリアだ」

「ただの旅人、アルミット・テラスティアです」


 こちらが自己紹介をすると、彼女達は顔を上げ手を差し出します。


「私はアイン!こっちはユリナ!セルド、アルミットよろしく!」

「…よろしく」


 お互いの名前を知り、私達は握手を交わしました。


ーーーーー


「では、私達はこれで失礼します、またどこかで」

「うん!また会おうね!」

「…またね」


 アイン達と別れ、馬車を走らせます。

 しばらくするとセルドはなぜか「うーん」と頭を捻らせていました。


「どうしました、何か気になることでも?」

「アインとユリナってどこかで聞いたことある名前なんだよな」

「世界中、似た名前の人はごまんといますし、気のせいでは?」


 「そうかなぁ」とセルドはまだ思い出そうと考えているがおそらく気のせいでしょうし、気にしないでいきましょうか。


「ほら、悩んでないで前向いてください、前、行きますよ」

「はいはい、分かったよ」


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