episode00:魔法使いとお姫様
―遥か昔、この世界に「魔法使い」と呼ばれる存在が生まれました
―彼らは体内に「魔力」と言われる力を持ち、その魔力を使って不思議な現象を起こすことが出来ました
―魔法使いはそれぞれ火・水・風・地・木・光・闇の7つの属性を司り、いつの時代も魔法使いは7人しかいませんでした
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庶民では到底みることがないであろうきらびやかな調度品、王座まで続く道には上質な深紅のカーペットがひかれている。
「国王陛下、依頼を出した魔法使いのうち火の魔法使い、水の魔法使い、木の魔法使いの3名がお見えになりました。」
玉座に座る男の隣に立つ若い騎士は、その場のただならぬ緊張感に冷や汗をかいているようだ。
男は騎士からの知らせを受け、少しだけ苦い顔をした。
「光の魔法使いはどうした?」
男の質問に騎士は肩を震わせ口を開く。
「それが…、申し訳ありません。国王の勅命でないのであれば受ける気はないと…」
男はそれも解っていたように少し間をおき、返事をした。
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「火の魔法使い、アルビレオ=ベアトリクス殿。水の魔法使い、ベイド殿。そして、木の魔法使い、ファイ=タウリー殿。」
「此度は私の、一個人としての頼みを聞き入れてくれたこと、感謝する。」
部屋に通された3人の男は少し驚いたような反応と困惑の表情をみせた。
最初に沈黙を破ったのは、火の魔法使いと呼ばれる赤髪の青年、アルビレオだった。
「滅相もございません。国王陛下。貴方様がいるからこそ、この国は平和でいられるのです。それに困っている人の頼みは誰であろうと断ることなどありません。」
「…そうだな、そなたはそういう男だ。」
男は破顔一笑し、姿勢を正した。
「改めて、ここにいる皆に依頼の確認をしたい。良いな。」
その場にいる3人は静かに頷く。
「貴殿らに頼みたいことは一つ。体内に宿る魔力のコントロールを、娘であるミラに教えてやってほしい。」
国王陛下と呼ばれる男が娘と口にしたのは、子を想う父親としての願いだからだろう。
「僭越ながら、陛下。魔法使いでないミラ王女が魔力を持っているというのは本当なのですか?」
今度は水の魔法使いと呼ばれたベイドがにわかには信じきれないといった様子で王に尋ねた。
「ああ。かつて神殿で神託を受けた通りだ。王立図書館の司書である貴殿なら、一度はその噂についても耳にしたことがあるだろう。」
神託というのは、この世界で受ける預言のようなものである。幼い時に高熱を出したミラは、教会で神託を受けていた。
「今までは創成期の魔法使いが残した魔力量を調整できるペンダントをつけさせることで事なきを得ていたが、先日それが魔力の量に耐えきれず壊れてしまった。」
王の隣にいた騎士は持っていた盆の上にある粉々になったペンダントを3人に見せる。
「もし同じ物を作れたとしても、それも一生もつものではないだろう。それゆえ、根本の解決を貴殿らに任せたい。」
その王の顔は娘を思う一人の父親としての表情だった。
「ミラに魔法を教えてくれ」