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三者会談

        三者会談



「は~っはっは! 私は帰ってきたぞ! ロ…、いや、シン君、色々あったようだが、元気そうで何よりだ。そして、喜びたまえ! これは、アメリカの、ほんの気持ちだ。流石に冷暖房完備とまでいかなかったが、雨風を凌ぐには充分だろう。では、どこに設置すればいいかね?」


 ヘリから降り立った、マッカーサーもどき、もとい、カーナード少将は、俺の足元に来るなり、俺を見上げながら、上機嫌で手を振る。

 ちなみに、出迎えは、ドラゴン形態の俺一人だ。アマンダとモーリスは、既に食堂で岡田と待機している。


 ふむ、何処に俺の寝床を作るかは考えていなかったな。

 ま、土地はまだまだあるし、適当でよかろう。


「ガーナード少将、お久しぶりです。ええ、ありがとうございます。そうですね~、あの、仮設住宅の北側に、隣接する感じでお願いします。あ、手伝いましょうか?」


 うん、俺の寝床のせいで、皆の日当たりが悪くなってはいけない。


 俺は、仮設住宅の裏手を指さす。

 そして、仮設住宅からは、当然近いほうがいい。まあ、あれは何れ、ちゃんとしたものに建て替えないとだな。

 そういや、新藤の言っていた、バイトの話、どうなったんだろう?


「うん、私もそこがいいと思う。そして、君の手を煩わせるまでもない。そういったのが専門の工兵も連れてきたからね。では、早速始めよう。Hey! Get started!」


 ふむ、手伝わなくていいというのは、モーリスの読みが正しかった可能性が高いな。


 少将が後ろを振り返りながら指示を飛ばすと、ヘリからわらわらと兵隊が降りてきて、一斉に作業に取り掛かったようだ。


 そこで、少将の背後に居た、スーツ姿の黒人女性が進み出て来た。


「初めまして、シンさん。私は、アメリカ合衆国国務次官、国際安全保障担当のバーバラ・デイヴィスと申します。では、エルバイン女王陛下に取り次いで頂けますか?」


 彼女は、見た感じ40歳台。

 グレーのタイトスーツを完全に着こなし、かなり垢抜けた印象の人だ。

 また、流暢な日本語を話す事からは、彼女も、日本での勤務経験があると見た。


「初めまして、デイヴィスさん。では、あちらへお願いします」


 仮設住宅の前では、モーリスと岡田が立って待っていた。



 俺は前回同様、扉の前に貼り付く。


 席は、これも前回同様、正方形に配置された机の奥に、アマンダとモーリス。但し、今回は、その右手前に、デイヴィス国務次官と、ガーナード少将。岡田はその向かい、左手前に座る。メリューを中心とした、三者会談の形式だ。

 また、サヤが居ないので、撮影係はいないが、アマンダの後ろでは、ビデオカメラが既に回っている。


 デイヴィスは、正面に座った岡田を見て、一瞬躊躇う素振りを見せたが、すぐにこちらの意図を理解したのだろう、何事も無かったように自己紹介を始めた。


 アマンダは、まずアメリカに対し、今回の俺の家に対する謝辞を述べ、その後、一気に本題に入ったようだ。


「先日、我が国に対し、残念ながら、北朝鮮より核ミサイルが発射された事実はご存知でしょうか?」

「いえ、日本の把握している事実としては、メリュー王国に着弾する軌道のロケットが発射された、という事のみですね。もっとも、メリュー上空にて、シンさんと一緒にロストしましたが」

「アメリカも全く同じ見解だ。あれがどういった種類のものかまでは、断定できない」


 先ずは岡田が答え、それに少将が同調する。


 まあ、そらそうだろうな。

 俺と一緒に消えてしまったのだから、他所からは、あれの弾頭が何だったか、確認できる訳もなく。


「では、シンさん、そこからでいいですわ。あの時の経緯を説明して下さい」


 ぬお?

 俺が発言させられるとは予想外だ。しかし、やはり本人から直接のがいいか。


 俺は、あの時の状況を、順を追って説明する。

 もっとも、どうやって俺がそのミサイルの情報を得たかは伏せておいた。

 モーリスも、満足そうに頷いてくれる。


「……結果、間に合わないと思い、俺の元居た世界に、そのミサイルごとテレポートさせました。その後、すぐにその星の裏側に隠れましたが、上空のあちこちで、オーロラがかかりました」


 これには、岡田が改めて俺に頭を下げる。

 彼も、あれが核だとは予想していたが、今の俺の証言で、再確認できたということだろう。


 しかし、デイヴィスはこれに対し、冷静に突っ込む。


「しかし、それを確認できるものが何一つありません。こう言っては何ですが、あれは、本当に人工衛星だったのかもしれません」


 ま、それもそうだ。


 すると、アマンダが毅然と反論する。


「ええ、そうですわね。ですが、メリュー王国は、国民であるシンさんの証言を信じます。そして、アメリカは、確たる証拠が無ければ、何も判断できない、国民の証言も信用しない、そのような国なのですか?」

「いえ、そのような事はありません。先程の発言を取り消します」


 ふむ、アマンダに軍配と。もっとも、デイヴィスにすれば、軽く牽制しただけのつもりかもしれないが。彼女は特に悪びれている様子も無いし。

 そして、自国民のことが信用できないのならば、国家なんてくくり、無用だろう。勿論、客観的な事実があれば別だが。


 アマンダも、表情を崩さずに続ける。


「そして、今のシンさんの証言からは、あれは核ミサイルであり、我が国を攻撃する意図があったことが明白です。よって、メリュー王国は、朝鮮民主主義人民共和国に対し、報復する意思があります」


 これに対し、岡田は完全に固まってしまった!

 しかし、アメリカの二人は、腕を組んではいるものの、うんうんと頷いている。


 そこで俺は思い出した。

 そう、モーリスの言った通りだ!

 アメリカは、メリューが反撃するのを予測していたのだ!

 そうならば、あの護衛の戦闘機にも納得だ!


 そして、デイヴィスが腕を解く。


「はい、自国への攻撃に対し、報復するのは当然です。ですが、その、こういう事を我が国が言う資格は無いのですが、加減をわきまえて頂ければ、幸いです」


 ん? 口出しする資格が無いのは分かるが、これはどういう意味だ?


 すると、モーリスが大きく頷き、軽く右手を挙げた。


「勿論、メリューも、余計な犠牲は出したくないでござるよ。アメリカの立場は理解できるでござる。あの独裁政権をいきなり潰してしまうと、あの地域でまた紛争が起こるのは必然でござる。しかも、核を持っているでござるから、最悪の事態が起こりえるでござるな」


 あ~、そういう事か!

 アメリカが言いたかったのは、やるのはいいけど、あの政権を倒すなってことだ!


 そして、アマンダもそれは最初から承知していたようだ。


「はい。なので、我が国としては、少しお灸を据えたいだけなのです。両国とも、そこは誤解無きよう、お願いしますわ。もっとも、不測の事態が起これば、その限りではありませんが」


 岡田は相変わらずびびっている感じだが、アメリカの二人は、ほっとした表情だ。

 俺も、それでいいと思う。

 但し、俺はあの指導者を許すつもりは毛頭ない。そこらへんは、アマンダとモーリスはどう考えているのだろうか?

 まあ、殺したところで、あの地域の混乱を招くだけで、後は自己満足以外の何物でも無いとは理解しているが。


「ならば、アメリカとしては、特に無いです。はい、エルバイン女王陛下の仰る通り、あの指導者には、もう少し自制が必要だとアメリカも考えています。日本としても、そうではないのですか?」


 ん? このデイヴィスの発言の意図するところは?

 岡田は指を顎にあて、少し虚空を見上げてから返事をした。


「そうですね~。日本としても、あの国とは解決しなければならない問題がまだあります。今回の件で、かの国の姿勢が良い方向に変化するのであれば、願ってもないことですね」


 あ~、何となくだが、分かってきたぞ!

 そして、更に、モーリスがにやりとしながら続く。


「では、両国とも、引き続き、メリュー王国との良好な関係をお願いしたいでござるよ。宜しいでござるか?」

「はい、日本の方針に変わりはないでしょう」

「それは合衆国もだ。第七艦隊は、引き続きこの海域を哨戒予定だ。火事場泥棒が出ないとも限らないだろう」


 うん、この最後の、ガーナード少将の発言で、全て理解できた!

 メリューが、節度を持ってやってくれるなら大歓迎。なので、大っぴらではないが、バックアップしてやると!



 アマンダはにっこりと笑い、立ち上がって、右手を前に差し出した。


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