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異世界からの脱出

      この世界は、ドラゴンには厳しいようです



        異世界からの脱出



 俺の名前はシン。

訳あって、今は、この世界最後のドラゴンに魂を宿されてしまった、元日本人だ。

 本名は八咫新やた・あらたと言うのだが、3年前、俺が19歳の時に、魂を転生させられた。心機一転し、この世界では、音読みのシンを名乗っている。まあ、一度死んでいるし、名前くらい好きにさせてくれてもいいだろう。

 金色の身体に巨大な翼。まさに西洋ドラゴンだ。測った事はないが、頭から尻尾の先まで、20mくらいだろうか?



 そして、俺は現在、城の中庭で、相棒のサヤを背に載せ、一人の女性を説得している。


 彼女の名前はアマンダ・メリュー・エルバイン。この国、いや、おそらくは、この星で生まれ育った、最後の人間。長い耳に、透き通った山葵色わさびいろの髪。エルフ族でもかなりの美人だ。更に、若葉色のドレスの線からは、彼女が完璧なスタイルであることが伺える。


 うん、もう、完全に炎に囲まれてしまったな。

 辺りには、蛋白質の焦げる匂いが充満している。

 俺は平気だが、ここの温度は、既に100度近いはずだ。

 サヤとアマンダは、魔法で障壁を張っているが、それもそろそろ限界だろう。


「アマンダ! あんたも俺達と一緒に逃げよう! この星はもう終わりだ!」


 俺は、片翼を地面につけ、俺に載るように促す。

 しかし、アマンダは首を振る。


「いいえ、私は腐ってもこの国、メリューの女王ですわ。私だけ生き残ったとあらば、死んでいった方達に申し開きできませんわ! そして、シンさん、サヤさん、本当に済みません。勝手に召喚しておいて、このような結末をお見せする羽目になるとは……」

「それはもういいっす! 悪いのはあいつらっす! 女王が悪い訳じゃないっす! とにかく早く乗るっす!」


 俺の背中でサヤも怒鳴るが、アマンダは首を振るだけだ。


 彼女、サヤは少し幼い丸顔で、長い黒髪をポニーテールにしている。

 160cmくらいで、漆黒の衣装。元の世界だと、忍者とか言われそうだな。

 だが、あの服はこの世界の最高級品で、聖銀ミスリルが編みこまれていて、俺が噛みついても破れないし、魔法防御もかなり高い。


 ちなみに、サヤの元の名前は、貴船小夜。俺と同様、この世界に来てから、名字は捨てた。2年前、彼女が15歳の時に、この世界に召喚された日本人である。ただ、魂だけの俺とは違って、肉体ごとだが。



 そして、炎に包まれた城壁の外から、声が飛んでくる!


「「「ファイアーキャノン!」」」

「「「ファイアショットガン!」」」


 アマンダの足元に、バレーボール大の火球が落ち、続いて、無数の細かな炎弾が降り注ぐ!


 チッ! まだ撃ってきやがる!

 まあ、あいつらに情けを期待する方がアホなのだが。


「サヤ、時間が無い! アマンダの障壁はもう限界のはずだ! やれ!」

「了解っす! 縮地!」


 サヤは、アマンダの前に瞬間移動し、彼女を抱きかかえる!


「それはできません! 私は……」

「暴れちゃダメっす! 縮地!」


 背中に、軽い振動を感じる。


「よし! 乗ったな! じゃあ、飛ぶぞ! ここじゃ魔力が不安定だからな! しっかり掴まってろよ!」

「了解っす!」

「……」


 俺は翼を広げ、飛び上がる!


 下を見ると、辺り一面火の海だ。

 本当にあいつらは容赦が無い。乗っ取った身体が焼けているというのに、お構いなしだ。


 攻撃してきた連中は、真っ黒な影みたいな奴で、俗に魔族と呼ばれている。

 5年前、突如この世界に、大量に出現したそうだ。地上すれすれを、正に幽霊のように漂っている。


 特徴は、高度な魔法が使える事と、人間の精神を乗っ取り、自分の分身として操れる。

 更にその分身が、また他の人間を乗っ取り、鼠算式に増えて行く。

 魔力の高い人間は乗っ取られずに済んだが、連中、乗っ取りに失敗したと見ると、今度は問答無用に殺しにきやがる。


 一度身体を乗っ取られると、もう終わりだ。如何なる解除魔法も効かないし、操っている本体を殺せたとしても、一緒に死んでしまうので、一度操られたら最後、既に死んでいると考えていい。また、放っておくと、一月程で黒い影になってしまう。また、魔族になると、魔法の威力が倍増するので、そうなる前に殺すしか無い。


 その危機的な状況に対し、この世界の高位の魔術師達は一致協力し、禁断の術、異世界召喚を施した。

 召喚された人間は、この世界で桁外れの魔力を有し、身体的な成長も著しい。まさに切り札。サヤだと、100mを3秒くらいか? 

そして、俺は、この世界最後のドラゴンの死体に、魂だけ召喚されたという訳だ。


 連中の考えは良く分る。只でさえ召喚者はチートなので、それをこの世界最強種である、アークドラゴンに宿せばってところだろう。

 俺も、自分で言うのもなんだが、この世界で俺に勝てる奴は居ないと思う。


 もっとも、そんなチートな召喚者二人がかりでも、あいつらの増殖速度には敵わなかったのだが。



「アマンダ、見納めたか?」

「ええ、本当に…、本当にこの世界は…、メリューは終わってしまったのですね…。もう、炎しか見えませんわ…。そして、本当に申し訳ありませんわ」

「だから、俺達に謝る必要は無いって。俺達も、これを阻止できなかったんだから。それで、これから行くのは、俺達にとっては故郷だが、貴女は全く知らない世界だ。覚悟はいいか? って、俺もだな。この身体を見られたら、どうなることやら。でも、元の世界以外、もう行き場がないからな~」

「そうっすね。でも、あたいはシンさんについて行くだけっす!」

「サヤも悪いな。じゃあ、唱えるぞ! テレポート!」


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