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貶められた元聖女は真聖女になる  作者: 魔茶来
哀聖女編
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聖戦騎 エイル 喪失

「エイル様、遠征の準備が出来ました。」とメイドのサミーが声を掛けてくる。

私はエイル・イスカ・マカリナ、今日は聖戦に向かう日。


サミーが不思議そうに「珍しいですね、今回はエルミア様も出陣なのですね。」と質問してくる。


「そうね、今回は大規模遠征ということで、貴族部隊から聖騎士団の守護として聖女部隊が後方で支援するように要望があったらしい。」

「だから、エルミアだけじゃなくてエリサ、コルティアとかも参加するみたいよ。」


エルミアというのは私の親友であり、正教会一の美しい聖女であると言われている。

幼い時から一緒に『聖戦騎』を目指し聖女の訓練を受けてきた。


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『聖戦騎』

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 実は聖女は聖戦での戦闘に向かない。

 なぜなら聖女は癒しの力『聖気光』を使えるが魔法が全く使えない。

 そう、攻撃魔法が使えないため、武器を使うしかない。

 しかし魔法が使えない聖女の力では身体強化魔法や防御魔法で強化できる

 普通の相手にすら勝てはしなかった。


 しかし、正教会には過去の大聖女が残した神剣『グラウザー』が存在する。

 これこそ聖女が聖戦において優位に立てる唯一の武器である。

 なお、この武器を操る聖女を正教会では『聖戦騎』と呼ぶ。


 エイルこそ、現在の『聖戦騎』である。

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「なるほど、今回の聖戦は大変そうですね、相当強力な能力チカラを持つ邪教徒たちとの戦闘が予想されていると聞きます、気を付けてくださいね。」とサミーが心配そうする。


「大丈夫よ、そのための私『聖戦騎』が参戦するのよ。」

「この前聖戦騎レミー様から引き継いだ神剣『グラウザー』があれば心配はないわ」


「そうですね、神剣があれば聖女は神のご加護で無敵になりますね」


出発準備をして正教会前の広場に数名の司教、4つの聖騎士団、聖女隊、後方支援の貴族隊が揃っていた。


エルミアが私を見かけると、「エイル、神のご加護がありますように!!」と声を掛けてきた。

「聖戦と言っても戦闘ばかりではない、邪教徒の抵抗があれば戦うのだけなので、住民たちには正しい心があるはずだから簡単に終わるさ」と安心させるように言った。


出発前になり、大司教から説明が始まる。

「今回は『エグドリアの聖戦』と名付ける、もちろん神の名のもとに邪教集団との厳しい聖戦となるだろう。」

「『エグドリア』の地において邪教徒が集まり、元からいた住民を苦しめ、その上改宗させようとしているらしい。そして改宗に応じない住民を惨殺しているとのことだ」


「神の名のもとに住民を解放し『エグドリア』の地に平静を取り戻すのだ!!」


敵地エグドリアに近付くに連れ、廃墟が見えてくる戦闘意識が段々と高揚してくる。


首都アーベスの南端にて邪教徒の抵抗が始まる。

神剣『グラウザー』を鞘から抜いて臨戦態勢をとる。


この神剣は正教会に伝わる大聖女が残したとされる。

そして『聖戦騎』の聖気光に呼応し身体能力を向上させ、守護するための力を与えてくれる。


神剣『グラウザー』はレミー様が使っていた時は現在よりも1割ほど大きかったが、

レミー様が亡くなったあと、本来姿となり現在の2倍程度の大きさと重さでありとても扱えるものでは無かった。


しかし私が『聖戦騎』に選定され、神剣『グラウザー』を持った瞬間時、神剣は私の扱いやすいサイズ、重さになり、剣のバランスも私が舞うように戦うのに都合の良いバランスとなる。

つまり『聖戦騎』の体の一部となる。


戦闘当初は魔導士による魔法攻撃であり、聖騎士軍が対応できるレベルであり、私への攻撃もこの程度は『グラウザー』が守ってくれる。


首都アーベスの南端より中心へ攻撃魔法を防御しながら移動する。


途中から、魔導士は魔法により多数の魔獣を召喚し襲ってた。

小型の魔物は聖騎士軍の魔導士と聖騎士たちが片づけていくが、大型の熊や虎型の魔獣は、私が舞うように『グラウザー』で一刀両断にしていく。


驚くほど、敵魔導士の数と召喚される魔獣の数が多い、聖騎士団も応戦はしているが、対応にほぼ1日掛ってしまった。


敵は2日目になると、攻防戦は相手方も必死なのか幹部クラスが出てくる。

数名の特殊な恰好をした異教徒の上級魔導士が呪文を唱え、死霊体ゴーストを召喚した。

この攻撃に聖騎士軍の一部が死霊体ゴーストに乗っ取られ、同士討ちを始め聖騎士軍は数を減らしてゆく。


死霊体ゴーストには通常攻撃が効かない。

つまり剣や弓では全く役に立たないのだ、唯一聖女の力(聖気光)のみが有効である。


神剣『グラウザー』に聖気光を集中することで神剣は聖気光を纏い、通常では触ることすらできない死霊体ゴーストを切り裂く。


乗っ取られた聖騎士団の団員に対してはこの纏った剣の腹で蠅うようにすると死霊体ゴーストが抜け出す、その瞬間に死霊体ゴーストを切るのである。


召喚者の数に比べ多くの死霊体ゴーストが召喚されている、実際に対応できるのが私『聖戦騎』のみであり、最終的に召喚者をすべて倒すまで2日掛ってしまった。


4日目、首都アーベスの中心地まで、もう少しの地点である。

本日の早朝会議では、敵は「教祖」とその取り巻き数名であろうと意見が一致していた。

一気に攻め入ることで終結させようと決まった。


攻め込んでいくと魔導士らしい恰好をした数名の人影が現れる。

か細い腕や体つきから「たぶん女ね」と私は推測する。


女たちが手をかざし「彫り物ような何かに」光のようなものを当てている?

「異教徒の聖女たちか……」

異教徒といえど聖女は存在する、当たり前だ。


そして彫り物と思ったものは「巨大なサソリの木彫り」であり、聖女たちにより精霊召喚が行われたのだろう。


「精霊力」それは精霊王と友達になった印に「使えるようにしてもらえる聖なる力」だが最近この力を持つものが少なくなっている。

彼女たちはその能力ちからを持っているのか........


「サソリの木彫り」を依り代に精霊獣が召喚される。


大きなサソリの精霊獣が、毒のある尻尾の針を向けて、こちらに向かってくる。

まずい、精霊力は、神剣『グラウザー』の属性『聖』と似通っており死霊体ゴーストとは違い簡単には倒せない。


毒針を避けながら、軽やかに舞い、弱点であろう部分を神剣で攻撃するが、やはりうまく貫けない。


『聖』対『聖』それは『神』対『神』、それぞれの信じる神の従者たちの戦いだった。


その日の夕方、巨大サソリを倒したが、操っていた聖女や教祖を逃がしてしまった。

しかし逃げた場所は首都アーベス中心地の教会あたりであろうから、明日にはアーベス中心地で決着が着くと考える。


今日は、ここまでと命令が来て野営のテントに向かった。


少しして、テントに伝令が息も絶え絶えに走ってきて報告を持ってきた。


「エイル様、『聖女部隊』が全滅しました」


声が出ない「そんな……、まさか……、エルミア……、エルミア」と後方へ向けて走り出そうとした。


そこへ現れたのは貴族部隊のオジュレーン卿だった。

「突然の攻撃に、守り切れませんでした、遺品を正教会へお持ちください」と箱を渡された。


箱の中身は「焼きただれた聖女のアクセサリや服の切れ端」だった。

箱の中に見つけたものを見て力が抜けていく「うそ……、エルミアのブレスレット……」


しかし、なぜかオジュレーン卿に対して気持ち悪いものが沸き上がる。

こんな時に、薄笑いをしながら報告をしていたような気がした。


結局報告を聞いてからその場に力なくヘタリこんでいた。

涙がとならない、「エルミア少しの差で、私が『聖戦騎』になったが、どちらが『聖戦騎』になっていても不思議はなかったじゃないの、あなたがどうして……」


立ち合いの司教たちがテントにやってきた。

「聖女部隊のことを聞いた、しかし後一息というところだ『聖戦騎』の踏ん張り所なのだ」

「食事をして、早く寝て英気を養ってくれ」と言い帰って行った。


眠らなければならない。

神剣『グラウザー』を操るために夜は眠るように言われている

そして、聖戦の時は、激しい戦いの時でも全く戦いがない時でも、なぜか夜は必ず眠れるのだ。

神剣『グラウザー』を持っているだけで聖気光を消耗しているということなのだろうか?


しかし、その後もあまりのショックに食事はのどを通らない、飲み物も同じだった。

だめだ、どちらも手を付けずに片づけてしまった。


昔のことを思い出し眠れない。

「もしエルミアが『聖戦騎』になっていれば、今日私が死んでいたのね」


眠ることも出きず朦朧としていると、夜更けに、突然「いやぁ~っ」という女の叫び声が聞こえてきた。

「なにごと……」とテントの外を出て叫び声のする方向に向かった。


一人の女を複数の男が押さえつけ、一人の男が女に乗りかかっていた。

「何をしている……」と声を掛けると、私に気づいたのか「エイルだ」という声と共に男たちは走って逃げて行った。


女の方を見るとまだ少女の様であり、服はほぼ破かれ裸であった、私は女に「大丈夫か」と聞いたが女は「邪教徒の悪魔!!」と言い放つと裸にも関わらず逃げて行った。


「邪教徒の悪魔」と言われた、そうか彼女は異教徒の子なのか?

しかし、男たちは私を知っていたし、あの戦闘服は貴族部隊の様だった……

「何が何だか分からない、これは悪い夢なのだろう……」


しかし現実は、悪夢などという生易しいものではなかった....


後方の町辺りで火が上がっている、叫び声も多数聞こえてきた。


「あれが正教会がいう邪教徒による惨殺?」

「でもそれは、貴族部隊と聖騎士部隊が防ぐために動いているはずなのに、どうして?」


取るものもとりあえず、現場に向かった。


私は知らなかった、そこに展開されていたのは「地獄絵図」だった........


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