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宇宙開拓史(1)

本作は、シリーズとなる『ゼムナ戦記』の序章となります。

物語が展開される世界観が綴ってあります。ずっと説明文が続くので退屈かもしれませんが、お読みいただけると本編ストーリーをよりお楽しみいただけるはずです。

 惑星ゴートを発祥の地として生まれた人類は、その生活圏を宇宙にまで広げていた。ゴートの衛星ツーラの植民基地への移住が開始された年を「進宙歴1年」として歴史を刻み始めていたのだ。


 恒星(ウォノ)を主星とする星系に属する惑星ゴートは、増え続ける人口を養うのは不可能だと学者は口を揃えて唱える。現実に食糧問題は深刻で、各国の資源の奪い合いは大きな戦争の元にしかならないと誰もが感じている。


 その中で、ツーラへの移住は希望の光に見えるが現実はそう甘くない。大気を持たないツーラでの生活は過酷であり、事故は目に余る数字をはじき出し続ける。皆がツーラ移民を拒むには十分な条件だった。


 次に人が希望の光を求めたのはより広い宇宙空間である。人工的な可住施設ではない。それでは衛星移民と大差ないからだ。


 多くの天文学者が人類でも移住可能な惑星の存在を示唆する。大気を持つであろう条件を満たし、地表温度などの観測できる範囲で大気の存在が予想できる惑星は数多く発見されている。冒険心豊かな者を募れば、星間移民も可能ではないかという気運が高まっていき、計画は進行していった。

 そして、閉鎖型循環生活圏(ヴィオトープ)を備える移民船の建造が開始される。要は可住施設建造技術の転用なのだが、その先に新たな楽園を示唆されることで人は希望へと意識が向いてしまうのだった。


 ただし、人類は光速を超える技術を有していない。その旅路は何世代もの時間を必要とすると考えられていた。それでも宇宙移民の成功者という栄誉は、人々の心を占領する。それを子孫へと託すように旅立っていったのだった。


 進宙歴108年のことである。


   ◇      ◇      ◇


 その後も多数のヴィオトープ船団が旅立っていったものの、結果が得られるのは何十年、何百年先の話なのは誰の目にも明らかである。惑星上の各国はその報せを待てなかった。


 進宙歴138年、小国同士の食糧問題を端に発する戦争が激化。数年のうちにその背後に付いていた大国が参戦。戦争は拡大していく。

 情報社会はその戦争の裏で暗躍する大国が、そこを新兵器実験場のように扱っているのをつまびらかにしてしまう。対抗する大国の市民が声高に批判を重ねるのを相手国は良しとせず、外交は悪化の一途を辿る。交戦気運のみが高まっていき、政府もそれに抗し切れなくなってしまったのだ。

 個々の発言力が肥大化してしまった情報社会の弊害といえる戦争だとされる。


 大国同士が開戦すれば、その同盟国も多分に漏れず巻き込まれていく。世界大戦へと発展していってしまった戦争は多くの命を奪っていったが、続けば続いたで今度は厭戦気運が高まってくるものだ。

 平和を望む声が世界を満たし、惑星ゴートの人類は互いに手を取り合い、統一国家への道を歩む。無論、反対する者は少なくなかったが、大きな時代の潮流に飲まれるように消えていった。


 ただ、のちに統一戦争と呼ばれた戦役は極めて大きな傷跡を残してしまう。

 進宙歴183年に樹立されたゴート統一政府の手元には、各国が編成して送り出した移民船団の記録がほとんど無かった。戦中に散逸してしまったのだ。

 政府は、移民先からの報せを待つしかない状況に陥るのだが、黙然と待つのでは時間の浪費である。再び増え始める人口への備えとして、新たな移民計画へと舵取りを始めた。


 より確実性の高い移民計画策定のために実験が繰り返される。その施策の中には本格的なゴート宇宙軍の編成も含まれている。移住先での先住動物とのトラブル。或いは可能性を捨て切れない、他星系を祖とする人類との戦闘も想定に入れていた。


 宇宙空間で組織的な活動をするとなれば、現行技術では障害が多かった。

 しかし、統一戦争が残したのは傷痕だけでなく、生み出された技術もある。戦中に開発された戦闘用装備の中でも防刃耐熱スーツは転用可能技術の一つ。衝撃や刺突に強く、外気を遮断して炎熱から人体を守り、動作を妨げない特殊なシリコンラバースーツはそのままでも宇宙服として利用できるほどものだったのだ。

 それらに呼吸用循環システムと体温を維持するためのコンディショニングシステム、宇宙線から人体を保護する防護金属粉を混入された宇宙服は、身体にピッタリとした構造から「スキンスーツ」と呼ばれる宇宙活動用装備として一般化されていった。


 このスキンスーツが状況を一変させる。政府肝入りの大量生産で安価に普及し、大気圏外の事故を激減させた装備品は、衛星ツーラの開発を後押しする。

 多くの移民がツーラ上の基地で生活するようになる。それ以上に、熱心だったのが企業活動であった。

 低重力下の生産性が格段に上がるのは周知の事実であったうえ、事故によるリスクを小さくできるのであれば、生産に伴うエネルギーコストはかなりカットできる。相当数の企業がツーラへと進出していった。


 その中で台頭してきたのがガルドワインダストリー。戦中は兵器開発で業績を上げたガルドワは、戦後もスキンスーツ開発や宇宙船製造、航宙艦艇製造と更に続伸し、ツーラに居を構える大企業へと成長していった。


 それらの発展は宇宙開拓に大きな貢献をしていたが、人類の前にとある大きな改革の時が訪れようとしていた。


 超光速移動技術の発見であった。

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