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「どういうことですか? そしたら誰が炎帝竜ジークフリートを倒すのですか? 今回の討伐には何百人の魔導士が戦うんですよ」
「つまり、竜には竜にしか勝てないって事なのか? だったら俺は必要ないんじゃないのか?」
自分のいる意味が納得できない竜二は考えて言った。
だが、ニヤニヤ笑いながらサーシャが口を挟んだ。
「いや、紫苑と同じ血が流れている竜二君は魔導士の力も少しはもっているよね? たぶん、彼がわざとあなたを送り込んだということは何かしらの可能性があるってことだよ」
「————そ、それって竜殺しの魔導士の彼らと同じ力を持っているという事なの?」
「……これはただの仮設なんだが、もし、仮に竜二君を炎帝竜が選んだとすれば、彼は炎の竜殺しの魔導士になるという事なのよ」
ソファーの上でサーシャが淡く微笑んだ。
ジークフリート。ファンタジー小説では登場してくる名に、竜二は言葉にできなかった。
「この魔導士の世界には竜殺しの魔導士が現在確認されているのはたったの三人だけ。そして、魔導師の中にも神殺し、天使殺し、悪魔殺し、他にも貴重な魔導師たちが世界各地に散らばっているの」
サーシャが語り始めた。
「そして、紫苑もまた、そこに近い存在だった魔導士の一人だったの。まあ、ある事件がきっかけでね。彼は魔導士から引退したの。本当にあの時、私は何も手出しすることができなかった。たぶん、竜二君は知っているわよね?」
「はい。俺達のせいで兄ちゃんは……」
そう、紫苑の過去には闇深すぎる事ばかりであった。その鍵となったのが涼音だったのだ。
竜二もまた、日本で闇の魔導士とたたかったことがある。だが、力になれなかった。