寄り道
男達は冷たい雪の大地から飛び出た岩に座り込んで、旅路の前に受け取っていた握り飯を頬張っていたところだった。
「これは…!旨い…っ!」
あのシモンが感動していた。
「…普通の握り飯じゃないか?」
「煩い。飯ぐらい好きにさせてくれ」
そう言うとまた一頬張りして、彼は心の底から味わう。
「御馳走様」
少女とその保護者とは倍の時間をかけて、シモンは3種の握り飯を味わい終えた。
「いつかのカレーの時とは違って長かったな」
「マルという彼に言われてしまったからな。旅の道中の楽しみの1つにしようと思う」
「そうだ、折角のテレパシィでお礼でもすればいいんじゃねえか?もう何時間も前にいた町だがよ。流石に厳しいか」
「厳しい。今現在の俺では精々2kmってところだろうか。そもそも誰が作ってくれたかわからない」
「児童課所属のポーラだな……って言ってもわからねえか」
「覚えている。俺のような“伝達”の能力者は記憶力が良いらしくてな」
「ふーん」
適当な相槌を打ったところで、組んでいた足の上に座っていた舞がやけに大人しいことに気付いた。彼女はどこか、自身の目的地を一点に見つめているようにも見えた。
「そうだシモン。お前ウィントについて知らないのか?」
かなり今更とも言える質問を投げる。
「町の名前か?」
「まちじゃないよ!らくえんだよ!」
「だとさ。舞の目的地なんだ。確か世界地図は頭に入ってるんだよな?」
「渡したノートに書き記したのが全てであり、そこにウィントなんて地名は無い。言伝には……ウィントという場所宛の依頼は無い。マイ、どこから仕入れた情報だ?」
「しいれた?ずーーっとしってるもん!」
「だとさ」
目の前の少女の無茶苦茶にも思えるその発言にシモンも言葉を詰まらせた。一呼吸置くと、彼は出発の支度を始めた。
「理由はどうであれ、仕事はこなす。もしも世界を一周しその楽園に辿り着けなかったとしても……言伝を届けたいという人がいれば俺の旅は終わらない。この命が尽きぬ限りは探してみよう、楽園とやらを」
シモンは2人の方を見て、真剣さを混ぜた笑みを浮かべた。
「…ちょっと意外だったな。でも、いいじゃねえか。実は俺にもやらなくちゃいけないことがあるんだ。きっと俺が死んでも叶えられない望みだがな。俺もーー命なんて賭けてやるさ」
マグナムは舞を立たせては自身の荷物を背負った。
「マイもがんばる!」
舞は小さなその体で仁王立ちをする。
そして、3人は再び旅路を歩み始めた。
ーーー寄り道終了




