少女の涙は雨となる
魔女。
嫌な響きだ。
私の目を奪ったあの二人組の呼び名。
「なん…で…魔女の…名前を…」
マグナムは問う。
「あっはっはー!冗談だよ、冗談。本気にしないでよ?」
男はマグナムの手を放して、寄せていた顔を引いた。
「マグナムさーーーん!!!」
すると颯爽と舞が走ってきてはマグナムに飛びつき、自身の涙と鼻水を防衛屋のコートに擦りつける。
「マグナムさん…!マグナムさん…!」
「舞…。ごめんね、心配したよね」
マグナムは優しく少女の頭を撫でる。
「へ…あれ……マグナム…さん?」
一方、舞は涙目のまま不思議そうにこちらを覗きこむ。
「大丈夫…戦いは終わったよ。舞“ちゃん”」
そう言葉を出した瞬間、舞は思わず両手でマグナムを突き飛ばしては、ェムートの足に隠れる。そして怯えながら口を開く。
「いまのマグナムさん……マグナムさんじゃないみたい……こわい…」
冷や汗が首筋に触れた。
私は、どっちだ?
銃弾が心臓を貫き、再び悲しみが沸きだす。
俺はどっちだ?
記憶以外の手がかりを探る。周囲を見回し、倒れた彼女の元へ。
「そう…だよな」
事実を受け入れた。受け入れたくない形で。
「アジサイ…さん?」
舞は走りよって、倒れた女性を一心に覗く。
「アジサイさん、どうしてねてるの?ねえ……アジサイさん………」
少女は死に触れたことがないようで、訳もわからず彼女の体を揺らした。赤黒い液体は、幼い少女にベタベタ貼り付く。
「おようふくよごれちゃう…」
彼女は起きない。起きるはずがない。
「マグナムさん…なんでアジサイさんねてるの…?」
「それは……」
俺が殺した、なんて言えない。ただーー
「マグナムさんが…やったの…?」
少女の方から口に出た。
「…マグナムさんが…へんなことしたの…?アジサイさんおきないよ……。……おしえてよマグナムさん…!!なんで…!なんで!!」
血塗られた少女の拳がマグナムの足を何度も叩く。少女なりに力を込めているのだろうが、彼にとってはか弱く小さな存在であった。
それでも、今まで感じたことのないような痛みをマグナムは受けていた。
「俺がーー」
気付いたら口が開いていた。
「やったんだ。」
「なんで……なおしてよ!マグナムさん!!」
「治せない。もう彼女は目を覚まさないんだ」
「ひどい…。……きらい!マグナムさんなんてだいっきらい!!」
少女は泣きながら町の方へと走り去っていった。ェムートも黙ったまま、彼女についていくようにして消えた。
マグナムは近くを転げる傘で、横たわる女性の顔を覆った。
雨が降ってきたのだ。どしゃ降りの雨が。




