何故?何故?
城は…張りぼてだった。
「エントランス無駄に広っ!」
「衛兵の1人もいねえ!」
「部屋少なっ!」
「3階何もねえ!」
外映えするだけで中身は空白ばかり。無駄な空間が目立ち、逆に必要なものが無かったりなどしたせいで、マグナムのツッコミが騒がしいほどに冴えていた。ただその分、上の階層に進むのに苦労させられた。
「この奥に最後の住人の反応があるのだが…倉庫みたいだな」
4階の倉庫と思われる部屋の手前で4人は止まった。ただ、舞はマグナムの背中で静かに眠る。
「…まあ、ただの倉庫じゃないってのはわかるが……」
「とにかく…行くか」
「先に言っておくが、舞おぶってるから戦闘は出来ないぞ」
「頼りない奴だな」
「……これ俺が悪いのか…?」
シモンがその手で扉を押した。
「これは…」
彼らの目の前に姿を現したのは、広々とした金色の謁見部屋であった。その奥で1人、王座に座り込んで手をこまねいている者がいる。
「ふふ、待っていたよ。我らが敵達よ」
「敵…か。私達は貴方と話をしに来ただけです」
「1人を除いて、だろう。まあここは謁見の間だ。もう少し近くに寄っておくれよ」
そうして今度は手招く。
「わかった」
3人の男は警戒しながらも強気に前へと踏み出す。
サザンカという先ほどの女性の反応は遠い。そして…随分落ち着いているな。
シモンはただまっすぐに歩みを進める。
他に人の気配は無えか。ただ万が一だ。瞬間移動で急に出てくるってこともありそうだしな。
マグナムは、舞に気をつかって前のめりのまま進む。
…ちょっと眠いな。
ェムートは余裕を残した欠伸を溢す。
王座に座る男の4m程手前。罠の1つも無い。
案外、話の通じる人間か?
「さて、伝達屋のそなたの話から聞こう」
「…伝達屋だと知っているのですか?」
「我は箱庭の王にして管理者である。箱庭でのそなた達の会話は全て聞こえているのだよ」
「それでは遠慮なく。まずは本人確認を行います。貴方の名前と年齢を聞かせてください」
「リナリアだ。…はて、生きている時間など忘れてしまったようだ」
「構いません。ではレイスの町を出たのは何歳の頃でしょうか」
「それも忘れてしまったな。随分昔のことのように思えるが」
リナリアという人物への言伝は寝たきりのレナから受け取り、彼の顔は勿論頭に入っている。この時点で言伝を渡しても良いのだが、ついでに一つ聞いておきたいことがある。
「では……レナさんについて教えてください」
「む?何だ。この国に来る前に会ったのではないか?」
「私はレイスの町の、病気で寝込むレナさんについて聞いています」
「はたまたおかしなことを言う。レナは病気になどなってはおらぬ。それに彼女は2人もいない。さてはそなた、レナ・インクムではないレナの話をしておるのだな?残念なことにレナは看板娘の元気な彼女しか知らぬのだ」
そんな馬鹿な。
管理者に聞けば謎は消えると思っていたが逆に深まってしまった。
「…本人確認を終了させます。今から言伝の譲渡に入ります、数秒ほど握手してもよろしいでしょうか」
「構わん。ほれ」
最低限の確認は出来ている訳だ。ここは譲渡しておくことにした。
リナリアの目の前まで進み、彼が差し出した手を握った。
甘くもほろ苦い言伝。依頼人、レナ・インクム。受取人、リナリア。
レナがベッドに横たわり、こちらをじっと見つめて語りかけてくる。話の内容はリナリアに対しての愛の言葉と、帰ってきてほしいという切実な願い。
「…?なんだこれは?何故レナが病で倒れている?何故?何故?」
リナリアは首を傾げる。何度も。何度も。
「…あはははははは!!もしやからかっておるな?最近確かに帰っておらぬからな!!あははははははははは!!!!」
狂ったように笑い出す。自分を無理矢理納得させるかのように言葉を吐きながら。
「久々に帰ろうか!!あはははははは!!!あはははははは!!!」
シモンの手をはねのけて、王座を立ち上がっては出口に向かって不格好に歩き出す。
「おいシモン!何した!」
「言伝を渡しただけだ!内容も混乱させるようなものじゃない!!」
「待ってくれ、僕の話がーー」
ェムートが横を通ろうとする彼を引き止めようとした。だがーー
「渡すかバァーカ」
リナリアは体のバランスを崩したかと思えば、一瞬で姿を消した。
「逃げられちゃったかー」
「城の外に移動した!追うぞ!」
急いで男達は謁見の間を出ようとする。しかし突如天井が爆発し、吊るしてあった幾多ものシャンデリア共々崩れ落ちる。
「ェムート!」
「シモンくんは本当に扱いが荒いねー。消せばいいのかな?」
「頼めるか」
「勿論」
ェムートは本を開けて、落ちてくる瓦礫に向かって手を伸ばす。
すると、空に巨大な赤の魔方陣が現れた。
「ばいばい」
魔方陣から空へ、炎の柱が吹き出る。瓦礫は1つも残らず柱に飲まれて焼き消えた。
「そうか…!あんた“呪術”使いか…!」
「マグナムくんご名答。さて、リナリアくんを追おうかね」




